2012トップリーグ オールスター「FOR ALLチャリティーマッチin 仙台」レビュー
みんなで前に進む「全員モール」で幕
継続の重要性を再認識した復興支援チャリティー
FOR ALL ORANGE ALLSTARS 50-73 FOR ALL GREEN ALLSTARS
(前半26-28)
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試合後、駆けつけてくれたファンの前でガッチリ握手を交わす、共に東北出身の大野、畠山両主将
photo by Kenji Demura (RJP)
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3月25日、ユアテックスタジアム仙台で「2012トップリーグ オールスター FOR ALLチャリティーマッチ in 仙台」が行われた。
28歳以上=シニア「FOR ALL ORANGE ALL STARS」、27歳未満=ジュニア「FOR ALL ORANGE ALL STARS」というチーム分けで行われたオールスター戦の模様を中心に、キャプテン会議が中心となって「復興支援のために何ができるか」を考えながらたどり着いたチャリティーイベントの一端を紹介する。
まさかの、そして、みんなの心がひとつになった、「15人モール」だった。
後半40分。試合終了を告げるホーンもすでに鳴っていた。
43-73と30点(!)リードされていたシニアチームが最後のワンプレーに選んだのは、秘かに練られていたスペシャルプレーの「全員モール」だった。
4000人を超えるファンの声援に後押しされるように、のっそりのっそり固まって進んでいくシニアチームがヤングチームのインゴールになだれ込んで、雄叫びを上げる。
最後は最年長WTB松田努(東芝ブレイブルーパス)がチームメイトであるSOデイビッド・ヒルの蹴り方を真似するパフォーマンスを見せてゴールキックを蹴り込み、大きな笑い声と拍手に包み込まれる中で「2012トップリーグ オールスター FOR ALLチャリティーマッチ in 仙台」は幕を閉じた。
毎年シーズン終了後に行われている恒例のトップリーグオールスターによるチャリティーマッチを震災の影響に苦しむ人々を勇気づける主旨と内容のものにできないか──。
そんなことが、廣瀬俊朗(東芝ブレイブルーパス)キャプテン会議代表を中心に考えられ始めたのは、昨年6月に東日本大震災復興支援チャリティーマッチとして行われた「日本代表-トップリーグXV」戦後くらいから。
約9ヵ月を経て実現したのが、今回の「2012トップリーグ オールスター FOR ALLチャリティーマッチ in 仙台」だった。
前述のとおり、当日集まっていただけたファンの数は4273人。
キックオフは13時からだったが、会場となったユアテックスタジアム仙台では、トップリーグ各チームがお宝グッズを持ち寄った「FOR ALLチャリティーガレージセール」や元日本代表WTB大畑大介氏なども参加したトークショーなど、ラグビーの魅力を伝えるための様々なイベントも行われた。
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試合終了直前に気持ちのこもった全員モールを押し込むシニアチーム。普段はチームメイトのNO8豊田を押さえつけるLO大野主将の顔も
photo by Kenji Demura (RJP)
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キックオフ後すぐに「これはガチだな」
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後半33分、シニアWTB北川のタックルをかわしてトライを決めるヤングPR畠山主将。「自分たちのプレーで盛り上がってくれたなら嬉しい」
photo by Kenji Demura (RJP)
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試合前日の24日には、仙台市以外にも、「FOR ALL復興支援キャラバン」が派遣された。
宮城県気仙沼市、福島県いわき市、岩手県宮古市で、ラグビースクールのこどもたちや高校生をトップリーグ選手たちが直接指導。
厳しい環境の中でラグビーを続ける子供たちにとっては、またとない機会となったはずだし、それは参加したトップリーガーにとっても同じだっただろう。
オールスター戦自体は、最後の最後の15人モールはあったものの、シーズンオフに行われたということもあって(?)、フィットネスに差が出て中盤以降「ヤング」が「シニア」を圧倒。
「ボールを動かして走る楽しさを東北の人たちに見せたい」(大沼照幸監督=NTTコミュニケーションズシャイニングアークス)という意図どおりに11トライを重ねた。
一方、「(「ヤング」チームに)人生の厳しさを教えてやろう」という大野均主将(東芝ブレイブルーパス)のかけ声でグラウンドに出て来た「シニア」のプレーは真剣モードそのもの。
いきなり、「試合が始まってすぐに『これはガチだな』と感じた」(「ヤング」チームPR畠山健介主将)という本気ぶりで、実際に8分にCTB大西将太郎(近鉄ライナーズ)のトライでシニアが先制。
そんな姿勢が、前日の公開練習を円陣を組んで「おじさんたちには負けないぞ」という声を出しただけで終わりにした「ヤング」チームの負けん気に火をつけた部分もあったのだろう。
前半20分に控えのメンバー9人を全員投入するという大胆な選手起用もあったが、最終的には体力面で「ヤング」の軍門に下った。
それでも、冒頭の15人モールしかり、3トライを記録してMVPに輝いたWTB友井川拓(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス)の独走トライにも、最後までLO大野主将自らが諦めずに追い続けるなど、「一歩でも前に出る、最後まで諦めない姿勢」(同主将)は、集まってくれたファンの方々に少なからず伝わったはずだ。
「楽しんでくれている感じがしたし、やって良かったと思います」
この日は、オールスター戦には出場せず、場内外のイベントでファンと触れ合った廣瀬キャプテン会議代表は、来てくれた人たちの笑顔の重みを心に刻むように、そう話してくれた。
「長期的な支援が何より重要」(同代表)なのは、集まってくれた東北の人たち、中でも子供たちのかけがえのない笑顔に触れることのできたトップリーグ選手、関係者全てが感じたことでもあるはずだ。(2012.3.27)
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ガレージセールやオークションにも多数のお宝グッズが持ち込まれ、売上金はチャリティーの一環として寄付されることになる
photo by Kenji Demura (RJP)
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試合後、両チームのメンバーが今季で一線を退くことが決まっている相田真治レフリーを胴上げするシーンも
photo by Kenji Demura (RJP)
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