堀江、畠山、ヒーナンは文句なし
NO8として新境地を切り開いた望月
──前半戦で活躍した選手の話をしていきたいのですが、それぞれ前半戦でのベストフィフティーンを選ぶとするとどんな感じになりますか?
稲垣:今年は1番(左PR)が難しい。平島(久照=神戸製鋼27)が出てれば一番安定しているかなと思うんですけど、ケガで出ていなかったりしたんで、東芝で全試合出ている久保(知大=29)にしました。
──僕は復帰した時のインパクトが大きかったので、平島を選びました。
永田:三洋で出続けている点を買って木川(隼吾=27)。
村上:僕はまだ迷ってるんですが……平島にします。
──2番、3番はたぶん、満場一致かと思うんですが。
稲垣:堀江(翔太=三洋電機24)と畠山(健介=サントリー25)。文句なしですね。
──ロックの2人のうちのひとりはヒーナン(ダニエル=三洋電機29)で固いかなと思うのですが、どうでしょう。
村上:ヒーナンは間違いないですね。で、僕はもうひとりはトンプソン(ルーク=近鉄29)。
稲垣:僕はトヨタの北川(俊澄=29)にしました。大野(均=東芝32)と迷ったんですけど、大野がケガであんまり出てなかったのと、今年、北川がフルに出ていてトヨタのFWを引っ張っている感じがあったので。
──僕はトンプソンも大野も凄いし、北川の仕事ぶりも捨てがたいんですけど、あえて今季のインパクトというか将来性も買って神戸の谷口(到=26)に。
永田:順当に考えると、大野とヒーナンなんですけど、サントリーの真壁(伸弥=23)も凄くがんばっている。あと、いま東芝でNO8で出ている望月(雄太=29)も入れたいなあと考えたり……。
稲垣:望月はNO8で入れました。
永田:あえて望月をLOで選ぶことにしたのは、サントリーのクレバー(トッド=27)のNO8がハマっていて凄く面白いから。バックローに入る外国人選手というとアイランダー系が多い中で、最初見た時に、『あっ、懐かしい白人の走りをする』と思ったインパクトが凄くて、実際、プレーぶりにも、今まで見たことのないようなアグレッシブさがある。
──すでに望月やクレバーの名前が挙がっている3列はどうでしょう。僕はFLは土佐(誠=24)とラトゥ(ニリ=28)のNECコンビ、エイトは望月でいこうかと。
村上:NO8が望月で、FLはベイツ(スティーブン=東芝30)にラトゥ。
永田:確かにふたりとも凄い。でも、何だかそれじゃあ、身も蓋もないなあ(笑)。
稲垣:FLが劉永男(三洋電機27)と中山(義孝=トヨタ自動車28)で、NO8はやはり望月。中山のジャッカルのようなプレーは目立たないけどもっと評価されていい。
永田:僕は全く意表を突いて(笑)、FLは土佐と西原(忠佑=三洋電機22)というフレッシュな2人にします。この2人がルーキー・オブ・ザ・イヤーを争っても面白い。
「日本人SOは面白い」ことを再確認
大畑に次ぐスター候補選手の成長も
──ルーキーという意味では、僕はSHは日和佐(篤=サントリー23)にしました。
永田:僕も日和佐。やはり、あの速さには魅力を感じます。
稲垣:僕は無難に田中(史朗=三洋電機25)。
村上:僕も田中です。
稲垣:矢富(勇毅=ヤマハ発動機25)も凄いですけどね。ファンタスティックなトライを取ったりしている。
──SOに関しては、僕自身は正面(建司=神戸製鋼27)がSOに入ってから、神戸のBKラインが見違えるようになったのを目の当たりにしたので、正面。
稲垣:同じく正面です。
村上:僕は君島(良夫=NTTコム26)にしました。
永田:僕も君島。相手が寄ってくるところにフラットなパスを放って、その隙間にWTBを走らせる。ああいうフラットなパスをスペースに放る感じが新鮮な感じがします。
──SOは全員が日本人選手を選んだということになりますね。
村上:外国人選手って、ゲームをコントロールしようとするじゃないですか。ゆっくり、ゆっくりと。あれが、あんまり日本人には合わない。アイイ(オレニ=トヨタ自動車31)はちょっと違うかもしれないけど。
稲垣:そういう意味では、あとはサントリーのピシ(トゥシ=28)。ゲームコントロールなんて全然考えないで、どんどん行っちゃう。ホントはピシでもいいかなと思ったんですけどね。
──CTBはどうですか。
稲垣:今季の小野(晃征=サニックス23)は絶対外せないでしょう。
村上:僕は小野と霜村(誠一=三洋電機29)にしました。
永田:同じです。三洋電機がこれだけ長い期間、無敗できていて、それを支えている霜村と三宅(敬=三洋電機WTB30)が桜のジャージを着ていないのはどうだろうと、常に考えちゃいます。
稲垣:そのふたりは、確かに三洋のラグビーを体現していると思います。でも、迷ったんですけど、もうひとりはギア(リコ=近鉄32)にしました。霜村は試合に出ていなかったりしたので。
村上:霜村は巧いし、確かにギアも凄い。
──僕は、小野と大畑(大介=神戸製鋼35)。大畑に関してはボールを持って走るだけで歓声が上がる存在感と、その一方でしっかり仕事もしているので、その点も評価しました。
村上:大畑が走るだけでウォーって観客席沸いて、拍手が起こる。あのスター性は素晴らしい。
稲垣:やはり大畑はスターですよ。早く、大畑に代わる存在が出てきてほしいわけですけど。そういう意味では、山田(章仁=三洋電機WTB25)が成長してきたんでね。期待してるんですけど。山田がタックルするようになったことには感動しました(笑)。近鉄戦で、1対1のマッチアップになって、「ダメだ抜かれる」と思ったら、バチッと下に入って止めた。「成長したな〜」と。
永田:やっぱり、三洋なんかだと、タックルできないと出られないですからね。まあ、どこのチームもそうなんですけど。
村上:ホント、どこのチームもそうなってきましたね。あんまり、タックルできない情けない選手というのはいなくなってきた。五郎丸(歩=ヤマハ発動機FB)なんかも低く激しくタックルしてますものね。
永田:確かに、五郎丸の成長というのは目を見張るものがありますね。
──そんな若手スター候補選手の活躍などもあった、バックスリーを選んでもらうとすると、どんな顔ぶれになりますか。
稲垣:WTBは小野澤(宏時=サントリー32)とヘスケス(カーン=サニックス25)。小野澤は今シーズンは絶好調とはいえないけど、トライは取っているので。FBは成長も期待して、今話題に上がった五郎丸にしました。
永田:WTBが小野澤と廣瀬(俊朗=東芝29)で、FBはやはり五郎丸。宇薄(岳央=東芝25)と田邉(淳=三洋電機32)も選びたかったんですけどね。
──僕は、永田さんが落としたそのふたりを選びました。WTBが宇薄、ヘスケスで、FBは高(忠伸=近鉄30)と迷った末に、田邉。
村上:WTBは思い切って友井川(拓=NTTコム=26)、そして廣瀬。FBは高。確かに、田邉も安定感は抜群。
稲垣:友井川か。なるほどねぇ。
村上:何と言うか、ピューンというスピードがいいなと思って。
永田:確かに友井川はSOの君島と凄く呼吸が合っていて、君島が放るパスにピンポイントで入ってきた時には止まらない感じがある。
TOPスペシャリストが選ぶ前半戦ベストフィフティーン
|
稲垣 |
永田 |
村上 |
出村 |
PR(1)
|
久保 |
木川 |
平島 |
平島 |
HO
|
堀江 |
堀江 |
堀江 |
堀江 |
PR(3)
|
畠山 |
畠山 |
畠山 |
畠山 |
LO
|
北川俊 |
望月 |
トンプソン |
谷口到 |
ヒーナン |
ヒーナン |
ヒーナン |
ヒーナン |
FL
|
劉 |
土佐 |
ベイツ |
土佐 |
中山 |
西原 |
ラトゥ |
ラトゥ |
NO8
|
望月 |
クレバー |
望月 |
望月 |
SH
|
田中史 |
日和佐 |
田中史 |
日和佐 |
SO
|
正面 |
君島 |
君島 |
正面 |
WTB(11)
|
小野澤 |
小野澤 |
友井川 |
宇薄 |
CTB
|
小野 |
小野 |
小野 |
小野 |
ギア |
霜村 |
霜村 |
大畑 |
WTB(14)
|
ヘスケス |
廣瀬 |
廣瀬 |
ヘスケス |
FB
|
五郎丸 |
五郎丸 |
高 |
田邉 |
正面、小野、中山、君島……
代表組に匹敵する活躍を見せる逸材も
──ある程度、予想されていたことですけど、こうしてトップリーグのベストフィフティーンを選んでみると、カーワンジャパンとはだいぶ違う顔ぶれになりました。
稲垣:正面、小野、中山はジャパンに選んでほしい。
永田:君島も『日本人の10番にこだわりたい』と言っていて、日本人のSOってどうなんだろうって、このところ考えることが多かったんですけど、やっぱり面白いですよね。
村上:結構、人材もいると思います。アレジとウェブを並べておくなら、日本人SOにも面白い人材がいっぱいいると思う。
──正面、君島の方が断然面白いと個人的には思います。
稲垣:たとえば、外国人に対してDFがどうなんだろうという疑問は確かにあるかもしれませんけど、それこそロシア戦なんかは試すのにはちょうどいい試合だった。もう少しトップリーグのメッセージをジャパンに伝えたいなという気持ちはどうしてもありますね。
永田:この前、コカ・コーラウエストの向井監督とじっくり話す機会があって、向井さんも「10番は日本人がやらないとダメでしょう」と力説していました。
──向井さんは「日本がNZとやってフェイズを重ねてトライが取れるのか」というように、常にジャパンが世界と戦うことをイメージしてプレースタイルを考えていくべきだという考え方ですよね。
稲垣:いま、トップリーグの中でそういう言葉を発信しているのが向井監督とエディ・ジョーンズなんですよね。エディがサントリーでやろうとしているラグビーも、日本人はこういうラグビーじゃないと世界で勝てないと彼が考えるスタイル。パワーゲームじゃ勝てないから、日本人の特徴を生かすには、ボールをどんどん動かして攻め続けるべきだというのが彼の持論なんですね。
村上:速いテンポで動かしてくれないと、可能性を感じないですもんね。
──ジャパン組でもいいんですが、ベストフィフティーン以外で前半戦で印象に残った選手がいれば、挙げてください。
村上:ベストフィフティーンでも名前は出ていましたけど、ベストリザーブ賞というか、ベスト・インパクトプレーヤーという感じでは、やっぱりヘスケスですかね。
──リザーブでインパクトを残したという意味では、逆転勝ちのお膳立てをし続けた近鉄の重光(泰昌=30)も凄く印象に残る活躍ぶりを見せました。
村上:インパクトありますよね。彼なんかも、ジャパンに選ばれておかしくないと思う。
稲垣:あと、ジェラードも凄いですよね。ケガで試合数はそんなに出ていないけど、本物が来てるな、と。
永田:動きが柔らかい。キックも飛距離が出ますしね。凄いところからドロップゴールを決めたりもする。
稲垣:あと、先ほども名前が挙がってましたが、次期スター候補としては山田がだいぶ成長してきた。
永田:三洋では劉も凄いんですけど、個人的にはここ数年、若松(FL大志=31)がいい味出してるなと思って見てます。
稲垣:3列では、僕はジャパンに選んでもいいと思うけど、サニックスの菅藤(友=31)キャプテンの仕事人ぶりもなかなか。それから、エディに鍛えられている成果が出ているのか、佐々木隆道(サントリー27)が凄く良くなっている。
永田:フランカーっぽくなりましたよね。
──運動量がもの凄いし、個人的にはベストフィフティーンに入れるかどうか迷ったくらいです。
永田:HOでは堀江が図抜けてるんですけど、湯原(祐希=東芝26)の成長も目につきました。インパクトという意味では、コカ・コーラウエストの築城(WTB昌拓=27)もスピードがあるし、面白かった。
悪天候にもかかわらず観客数増
前半戦同様、後半戦も好ゲーム頻発の予感
──前半戦のベストゲームを挙げるとするとどの試合になりますか。
村上:僕は悩み抜いた末に、結局、開幕戦(三洋電機12-7東芝/9月3日)にしました。
永田:確かに、去年のファイナルと合わせて、160分間通してほとんどトライがなかったのに、見ている人を全く飽きさせない内容の濃さは、他の顔合わせだとちょっと想像しにくい。で、僕自身は一番の大番狂わせとなったNTTコム-トヨタ(13-10/10月9日)をベストゲームにしました。素直に番狂わせって面白いなと思えたし、試合の最後の方はニュートラルなファンのほとんどがNTTを応援していたんじゃないでしょうか。トヨタがガンガン攻めてくるのをNTTの選手たちが頭打ってフラフラしながらも守ってみせたところにも素直に感動できたし、ファンの琴線に触れる試合になったんじゃないでしょうか。
稲垣:僕は悩んだ末に、加古川の『近鉄特急・大逆転号』に(近鉄25-22神戸製鋼/10月3日)。今シーズンを象徴するような試合だと思っています。
村上:あの最後の7分間で近鉄が奪った3つのトライは素晴らしかったし、誰もあんな逆転劇が起こるとは思っていなかった。
──僕自身はサニックス-神戸(27-19/9月12日)。サニックスとしてはシナリオ通りとも言える逆転劇だったし、初めて生で見たヘスケスのインパクトも強烈だったので。
稲垣:4人が選んだベストゲームのうち、神戸が負けた試合が2試合ですか。
村上:実は、前半戦で一番盛り上げたのは神戸製鋼ということなのかも。もちろん、神戸ファンは怒っているでしょうが(苦笑)。普通に見ている人にとっては、とても面白い存在。別の意味でのベストファンサービス賞をあげてもいいくらい。
稲垣:ファンの話が出たので観客数に触れておくと、第7節終了時点での総入場者数は前年を少しだけ上回ってはいます。開幕戦から順調に増え続けていたんですけど、4、5、6節と雨が続いたことが響いて、大幅増とまではいかなかった。4節の加古川の神戸-近鉄戦なんかは、約4、500人入ったんですけど、晴れていれば7、000人は入っていたずで、5節の花園での神戸-コカ・コーラ/近鉄-三洋も1万人くらいいっていてもおかしくなかったのが、雨で半減してしまった。
そういう天候に恵まれなかった面があったとはいえ、観客数が増えているのは、選手たちが頑張って、面白い試合を続けてくれているからだとも思います。
──確かに、今シーズンは番狂わせや、大逆転劇など、面白い試合が多い印象を受けます。
稲垣:それに内容も濃い。例えば、大学の試合も今季は接戦が多いけど、緊迫感が違うとトップリーグの責任者としては自負しています。
永田:この前のジャパンの試合を見ていても、内容的には今ひとつな面があったとはいえ、例えば、堀江、畠山に代表されるフロントロー陣のDFの意識と運動能力が凄く高くなってきているのは、明らかにトップリーグ効果と言っていいんじゃないでしょうか。
──最後に後半戦の見どころを。
稲垣:三洋をどこが止めるかということに尽きるかなと思うんですが、一番可能性があるのはサントリーとトヨタでしょうね。あと、プレーオフに進出できるベスト4にサニックスと近鉄、神戸がどこまで絡んでくるかにも注目したいです。
永田:確かに、4位争いはもの凄く熾烈になりそうですね。
稲垣:あとワイルドカード争いも。
村上:10位と11位じゃ天国と地獄ですからね。けっこう、今年は熾烈ですよね。
稲垣:どのチームにとっても、一節、一節、ひとつも落とせない試合が続いて、目の離せない後半戦になることは間違いないでしょう。