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TOPマッチレポート「特別編座談会」トップリーグ前半戦を斬る!【中編】

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ウィンドウマンス特別企画
TOPマッチレポート特別編"TOPスペシャリスト座談会"
永田が、村上が、稲垣が、トップリーグ前半戦を斬る!【中編】


■出席者(五十音順) 稲垣 純一 (トップリーグ部門長)
永田 洋光 (ラグビーライター)
村上 晃一 (ラグビージャーナリスト)
■進行/構成 出村 謙知 (フォトレポーター)

10月23、24日に行われた第7節終了後、代表チームの活動を優先するウィンドウマンスの中断期間に入ったトップリーグ。前半戦を終えた今季のトップリーグに関して、専門家たちはどんなふうにとらえているのか。目立ったチーム、活躍した選手、ベストフィフティーンは? 全体的な特徴はあるのか? 後半戦の見どころは?
忌憚ない意見が飛び交ったTOPスペシャリスト座談会の様子を、前編、中編、後編の計3回に渡って紹介。中編では、"4強"以外の戦いぶりに話は及んだ。


SOに正面起用で調子上向きの神戸。
前半戦の殊勲賞はサニックス?


─―序盤戦で3連敗するなど、神戸製鋼(4勝3敗/勝ち点19=7位)がつまずいたことに関してはどう見ていますか。

村上:神戸に関しては序盤戦、ちょっと不運な面があったかなという気がしています。
まず、2戦目のサニックス戦(9月12日/●19-27)では、ヘスケス(サニックスWTBカーン=25)の爆発があって、前半リードして折り返したのにもの凄くかき回されてしまった。あんなこと普通は起こらない。その後、トヨタにも負けたけど(9月18日/●7-16)、あの試合ではトヨタが14人になってしまって、逆にいろんなことを考えてペースを崩してしまった感じがあったし、次の近鉄戦では、近鉄が最後の7分間で凄い集中力を発揮して3トライを奪われて、逆転負け。一番大事な時に正面(SO/FB健司=27歳)がシンビンとられて。あれも反則の繰り返しで、たまたまシンビンになってしまったのが正面という、ちょっとアクシデントが続いての3連敗だったかなと。

――正面をSOにしてから、ラインがよく動くようになって、結果も出ているように思うのですが。

村上:ちょっと、グラント(SO/FBピーター=26)を引っ張り過ぎましたね。グラントは日本人の特性とかをまだ理解しきれていない面があるんじゃないでしょうか。

稲垣:グラントがSOに入ると、神戸のラインはちょっと窮屈な感じになる気がします。蹴らなくていいところで蹴る場面も多かった。
あと、神戸は全体的にちょっとフィットネスが弱い気はしました。でも、後半は面白い存在だと思います。

――前半戦のトップリーグを一番盛り上げたと言っていいのがサニックス(3勝3敗1分/勝ち点19=7位)だと思うのですが。

稲垣:明らかに前半戦の殊勲賞でしょう。確かに、ヘスケスも凄いんだけど、僕が今季一番素晴らしいなと思うのは小野晃征(23=SO/CTB)。落ち着いてプレーしていて、昔だったらただ闇雲にいくだけだったのが、今年はうまく全体をコントロールしながらチームの良さを引き出している。

永田:去年までは、みんなでボールを動かしているという感じだったのが、今年は小野がタクトを振って、まわりをどう動かそうか考えているように見えて、そこが凄く面白い。

村上:あのチームだから、ヘスケスも生きてくるんだと思うんですよね。横に広がるチームだから。

稲垣:でも、ヘスケスも先発だと余り力を発揮できなかったりする。むしろ、後半、少し相手のDFが疲れたあたりで出てくると、凄くインパクトがある。サニックスとしては、後半まで1トライ差くらいまででこらえていって、ヘスケスを投入するという展開に持ち込みたい。それに対して、相手チームはいかにそれまでに点差を開いておくか、というせめぎ合いもあって、サニックスの試合は面白い。

"逆転勝ち"の近鉄と"大物食い"の
NTTコムが前半戦を盛り上げた


――終盤にもの凄い集中力を見せて、逆転勝ちを続けた近鉄(4勝3敗/勝ち点20=5位)も、面白い存在でした。

村上:チームスタッフも説明できないと言ってました。なぜ、突然ああいうふうになるのか(笑)。火事場の馬鹿力みたいなのが出る。

稲垣:神戸戦もNTTコム戦も最後の最後で逆転勝ち。まあ、コーチにしてみれば試合の最初からやってくれって話ですよね(笑)。

村上:最後に重光(SO泰昌=30)を出すと、利くんだよなあ。あと、ギア(CTBリコ=32)ですね。やっぱり。神戸の時は3本ともギアのラストパスで、NTTコム戦も最後はギアが持っていってですもんね。

稲垣:スクラムがちょっと弱い気がしますけどね。それ以外はよくまとまっている。トンプソン(ルーク=29)、ロコツイ(ルア=30)のLO陣、FLの統悦(タウファ=30)……、でも、外国人選手ばっかりだなあ。ギアとイエロメ(ジェフリー=28)がCTBで組んだら、そりゃあ相手にとっては脅威ですよね。

村上:三洋が近鉄に苦戦したのも、外国人勢がボール持つとなかなか取り返せないから。

稲垣:あと、将太郎(SO/CTB大西=32)とか高(FB忠伸=30)とか、安定した選手がいますからね。それから、FLの佐藤幹夫(30)が凄くいい仕事している。

――昇格組のNTTコムの予想以上の健闘も光りました。

永田:普通、昇格したチームってなかなか勝てないじゃないですか。それが、シーズンの早い段階で2勝したというのは、リーグ全体にとっても大きい。他のチームが昇格組に対しても手を抜けなくなるというか、危機感を持って臨むことになって、トップリーグの面白さにつながっている。

村上:NTTコムは監督が代わったり、新しい選手が入ってきたりしている中で、ハーフ団とか軸になる選手は変えていないところが大きいと思う。アダム・ウォレスハリソン(LO=31)とか木曽(FL/NO8一=32)とかを入れて、高さを確保したり、山下大悟(CTB=30)を入れてセンターのところでポイントを作れるようになったりしてるんですが、全体を動かしているのは中山(SH浩司=34)と君島(SO良夫=26)で、そこを変えていないのが大きいのでは。

稲垣:ヤマハから来た3人の存在が大きいと思います。木曽、LO石神(勝=29)、小林((FL訓也=26)。この仕事人の3人が率先してトップリーグのプレーはこうなんだというのを示している感じがします。

下位も戦力が上向きのチームばかり。
トップリーグ後半戦も混戦模様に?


――サントリーを破るなど、前半戦だけで4勝して、昨季のレギュラーシーズン全体での勝利数を早くもクリアしたNEC(4勝3敗/勝ち点18=8位)はどうでしょう。

永田:せっかくツイタヴァキ(CTBアンソニー=28)みたいな武器を持っているのに、彼のうまさを使うのか、突破力を使うのか、絞り切れてない。あと、FWはいいんですけど、BKの攻め手が少し足りないかな。

稲垣:多くのチームがアタッキングラグビーを掲げる中、岡村ヘッドコーチ(=要)が「ウチはDFでいく」と宣言した特徴は出ているような気がします。まさにサントリー戦(9月19日/○25-20)はその姿勢が勝ちにつながった。NECの前に出るDFが機能したことで、サントリーがミスを連発していた。

永田:土佐(FL/NO8誠=24)、権丈(FL太郎=24)、ニリ(FL/NO8ラトゥ=28)の3列は面白いですね。LOに浅野(良太=31)と熊谷(皇紀=32)が入った、この後ろの5人はかなりいいユニットなんじゃないかという気がしています。

――リコー(3勝4敗/勝ち点17=9位)の頑張りも目立ちました。

永田:DFで早く前に出て、プレッシャーかけてしっかり止めようという意識がチームに浸透して、それが機能している。サニックスもそのDF力で出足を止められていた。

稲垣:今季のリコーが昨季と一番違うのは、反則が少なくなったこと。去年は、反則が多く自滅していたが、今季はフェアプレーランキングでも上位に入っているくらいチームにディシプリンがあることが、いい成績にもつながっているんじゃないのかなと思います。元々、力はあるチームですから。

――いったんは活動縮小が発表されたり、主力の移籍などもあって、厳しい状況での戦いを余儀なくされたヤマハ発動機(2勝5敗/勝ち点9=12位)はどうでしょう。

永田:例えば東芝戦(10月10日/●20-54)が典型で、立ち上がりの10分は両チームが攻め合って、凄く面白い試合をしたりする。それが、時間の経過とともに、少しずつ、少しずつ東芝に食い込まれるようになっていって、最後にはガツーンと穴を開けられてしまう。そういう試合の繰り返しのような気がします。

――結果は出せてないけど、一体感のある応援したくなるようなラグビーをしているようにも思うのですが……。

永田:五郎丸(FB歩=24)や矢富(SH勇毅=25)が成長して、いいプレーヤーになった分、彼らが個じゃなく全体を意識しながら動こうとするので、逆に個で相手に挑みかかっていく選手が少ないのがチーム的には厳しいかもしれないですね。確かに一体感のある、いいラグビーをしているんだけど、絶対的なインパクトを持った選手が不足している。

稲垣:ヤマハは今年、選手層が薄く苦しいシーズンになっていますね。今は我慢の時かな。このウィンドウマンスのインターバルで、ケガ人も戻ってくるだろうし、いい方向にチームを立て直すことを期待したいですね。

――前半戦では、それぞれ1勝ずつしかできなかった、コカ・コーラウエスト(1勝6敗/勝ち点9=11位)、クボタ(1勝5敗1分/勝ち点5=13位)、豊田自動織機(1勝6敗/勝ち点6=14位)に関してはどう見ていますか。

永田:クボタ-豊田自動織機戦を見たんですが、まさにトップリーグでの戦いを経験しているチームとそうじゃないチームの違いが如実に出た。後半25分の時点で豊田自動織機が23点差でリードしていて、普通なら織機が負けるなんてことは考えられなかったんですが、クボタは最後まで諦めずに残り15分で4トライとって逆転した。クボタの選手たちは自分たちがここで負けたら終わってしまうというのをわかっていただろうし、逆に織機の選手たちはどうやったら勝ったまま試合を終わらせることができるのか、その方法まではわかっていなかった。

村上:3トライ3ゴール差ぐらいの点差って危ないんですよね。リードしている方は何となく安心感があって緩めちゃうようなところがあるけど、追いかける方は必死になるから、リズムが急に変わったりする。

稲垣:トップリーグに参加しているチームはどこもそれくらいの爆発力を持っていますからね。

永田:豊田自動織機にとっては、最後攻められている時間帯にフィットネスがどんどん落ちていったのが、致命傷になった。

稲垣:シンビンの数も多いし、織機に関してはまだトップリーグでの戦いに慣れていない感じもします。

――その豊田自動織機戦では劇的な逆転勝ちを収めたクボタですが、トップリーグ残留のためには、まだまだ厳しい戦いが続きます。

村上:シェーン・ドゥラーム(SO=33)がケガでゲームコントローラーがいなかったり、マクメニマン(FLヒュー=27)という強烈なインパクトを持つ選手を取ったのに最初から戦列を離れたり、シーズン前に考えていた構想がかなり崩れてしまった。

永田:昨シーズンまではケフがいて、要所で突破してくれて、その後をどうするのかを考えていたチームという感じがしていたんですが、今シーズンは突破役がいない中、みんながどうしようって迷っている、そんな空気が感じられます。

村上:マクメニマンが終盤復帰するような話も聞いているし、FWに核ができるとだいぶ違ってくるんじゃないでしょうか。

稲垣:去年6位だったチームが、ちょっと構想が狂ったり、戦い方を迷ったりしていると、アッという間に降格圏内に沈んでしまう。いまのトップリーグの怖さというか、レベルの高さを象徴しているかもしれません。

――個人的には、コカ・コーラウエストの、チャンスとみるや、フェイズを重ねないでトライを取り切ってしまうようなラグビースタイルには魅力を感じているのですが。

村上:スパーンとね。一気に取ってしまう。

稲垣:前半戦は、ウェブ(SO/FBショーン=28)と豊田(FL/NO8将万=24)がいなかったり、戦力的に厳しい面もあったような気がしますが、決して弱くないですよ。

村上:ボーナスポイントをとっているので、最後は何とかなるというか、ウェブが戻ってくればもっともっと良くなるだろうし、後半戦、怖いんじゃないでしょうか。コーラとやるチームは。

(以下、後編に続く)








正面がSOに入りBKラインがよく動くようになった神戸製鋼。後半の巻き返しは?
正面がSOに入りBKラインがよく動くようになった神戸製鋼。後半の巻き返しは?
photo by Kenji Demura (RJP)
















WTBヘスケスの爆発もあって、前半戦の殊勲チームと言ってもいい健闘を見せたサニックス
WTBヘスケスの爆発もあって、前半戦の殊勲チームと言ってもいい健闘を見せたサニックス
photo by Kenji Demura (RJP)
















試合終盤に投入され、"逆転の近鉄"のお膳立てをする活躍を見せたSO/CTB重光
試合終盤に投入され、"逆転の近鉄"のお膳立てをする活躍を見せたSO/CTB重光
photo by Kenji Demura (RJP)
















SO君島とともにNTTコムの安定したゲームコントロールの中心になっているSH中山主将
SO君島とともにNTTコムの安定したゲームコントロールの中心になっているSH中山主将
photo by Kenji Demura (RJP)
















攻守に安定したプレーを見せて成長ぶりを披露しているヤマハ発動機FB五郎丸
攻守に安定したプレーを見せて成長ぶりを披露しているヤマハ発動機FB五郎丸
photo by Kenji Demura (RJP)
















前半戦だけで5ボーナスポイントを稼いだコカ・コーラウエスト(写真はWTB築城)。後半戦を盛り上げる存在になるか?
前半戦だけで5ボーナスポイントを稼いだコカ・コーラウエスト(写真はWTB築城)。後半戦を盛り上げる存在になるか?
photo by Kenji Demura (RJP)




2010年11月24日

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