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TOPマッチレポート「シーズン中盤戦までを振り返る」【前編】

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TOPマッチレポート特別企画
TOPスペシャリスト座談会「レギュラーシーズン中盤戦までの熱い戦いを振り返る」【前編】


■出席者(五十音順) 稲垣 純一 ((財)日本ラグビーフットボール協会事業委員長)
永田 洋光 (ラグビーライター)
村上 晃一 (ラグビージャーナリスト)
南 隆雄 ((財)日本ラグビーフットボール協会トップリーグ部門長)
■進行/構成 出村 謙知 (フォトレポーター)

12月25日までに第8節が終了したトップリーグは年末年始の小休止を経て、9日に再開。今季、中盤戦までの各チームの戦いぶりはどうだったのか、目立った選手は──。TOPプレビュー/マッチレポートでもお馴染みのTOPスペシャリストたちに熱くかつ冷静に語り尽くしてもらった。
前編では、それぞれ特徴的な戦いぶりを続けるトップ3に関するスペシャリストたちの見方を掲載する。

開幕から白星を重ねるサントリーの連勝はどこまで続くのか?
開幕から白星を重ねるサントリーの連勝はどこまで続くのか?
photo by Kenji Demura (RJP)

──まずは、中盤戦までの各チームの戦いぶりを振り返っていただきたいと思います。昨季の優勝チームであるパナソニック ワイルドナイツですが、開幕戦でサントリーサンゴリアスに敗れた後は7連勝。SOトニー・ブラウンが引退し、NO8ホラニ龍コリニアシ、LOジャスティン・アイブスはW杯で負傷。代わりにシーズン途中で超大物CTBジャック・フーリーが加入と、昨シーズンとは随分異なる陣容での戦いとなっている気もしますが、どう受け止めていますか?

永田:パナソニックは、飯島均前監督時代に本人が「ウチは相手チームのいいところを引き出す」みたいなことを言っていたんですが、今シーズンに関しても全く同じようなことが当てはまる気がしています。パナソニックと対戦したチームはどこもいいところが引き出されて、下位チームでも途中までは善戦をするんだけど、最後はパナソニックが地力の違いを見せつけて、結構、身も蓋もないスコアで終わるパターンが続いている。

 例えば、今季調子の出ないコカ・コーラウエストレッドスパークスも、パナソニック戦では後半20分までは22-12で善戦していたり……。

村上:ただ、ちょっと危うさを感じる部分もあるような気がするんですよね。少し個人に頼り過ぎているような。経験のある選手たちが力を出して勝っているけど、それがなくなったら負けるのかなと。その点、サントリーが見せている強さとはちょっと違っている。

──少しラグビースタイルが変わりつつあるのかなという気がします。昨季までの守りからのカウンター中心のラグビーから、より自分たちでボールキープを続けて主体的に攻めていくスタイルに変わっていこうとしているんじゃないか、と。攻撃側が有利になるようにルールが変わっていることも影響しているとは思いますが。

永田:やはり、トニー・ブラウンがいない影響は大きいですよ。確かに、今までも個々でやる傾向は強かったんだけど、そこに戒め役のようなブラウンがいた。それが、今季はデラーニみたいな割とイケイケなタイプが入って、みんな自由にこういうこともできる、ああいうこともできるという方向に行っている。ケガ人がいることもあって、メンバーが変わって試行錯誤もあるだろうし、それが危うさになるのか、逆に強さになるのか、楽しみですね。

稲垣:パナソニックに関して気になっているのは、反則の多さ(8節現在、反則数、イエローカード数、出場停止処分などで算出する反則ポイントでは、リーグ2番目の多さ)。昨季のレギュラーシーズンでは、2位を大きく引き離して最も反則数が少なかったり、ディスプリンが凄くあるチームだったのが、今年、残念ながら出場停止が出てしまったり、反則を繰り返したり、その辺が少し今までとは違うのかな、と。

 ただ、相変わらず、相手に攻めさせておいて、ターンオーバーからトライを取るという自分たちの特徴は十分出ている。円熟の境地というか、その面では安定していると思います。ミスが少ないし、一番危なげないラグビーをしているのかなという気もします。

後半戦のパナソニックはCTBフーリーなど新メンバーが鍵を握る?
後半戦のパナソニックはCTBフーリーなど新メンバーが鍵を握る?
photo by Kenji Demura (RJP)

永田:リコーブラックラムズ戦(12月25日、32-10で勝利)も、ラインブレイクされて、しょっちゅうゴールを背負っているんだけど、トライは取らせない。リコーに取り切る力がなかったのか、パナソニックの守りが凄いのか、まだ判断できないんですけどね。

──NTTドコモレッドハリケーンズ戦では、割と簡単にトライを取られて、結局ボーナスポイントも与えたり、今までだったら危機を察知していち早くカバーディフェンスに走っていた、そういうタイプの選手が少なくなっている印象を受けました。

永田:トニー・ブラウンもそうですけど、アイブス(ジャスティン=LO)やコリー(NO8ホラニ)がいないのも大きい。でも、それだけの選手たちを欠きながらこれだけの成績を残しているんだから、やっぱり強いんじゃないかな(笑)。

──そのパナソニックを開幕戦で破った後も、唯一全勝を続けるサントリーですが、試合を重ねるごとにチームが逞しさを増している気がします。

稲垣:シーズンが開幕した当初は、ワールドカップ組とそれ以外の選手とのコミュニケーションがうまくいっていない部分もあったのか、ちょっと不安定な感じがしたんですが、昨シーズンも中盤戦まではずっと不安定だったし、その不安定な中身も1年前と比べるなら、全然違うレベルかなとは思います。

 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦もリコー戦もスコア的には苦戦しているんですが、内容的には危なげなかった。横綱が土俵際まで押し込まれているように見えても、相手の力をしっかり受け止めながら、最後には余裕で勝ってしまうというような。

 年末最後のトヨタ自動車戦では、内容的にもいいラグビーができていましたし、不安定さはなくなりつつあるのかな、と。

 ただ、サントリーのやっているラグビーというのはリスクの高い、薄氷を踏むようなスタイルでもあると思うので、一度、歯車が狂い出したらどうにも修正できなくなる可能性もある。その点、パナソニックとは違うかな。面白いんだけど、ミスが命取りにもなるし、怖いラグビーでもある。

村上:サントリーはシステムとして強い感じがします。いろんな選手がいるので、どういう組み合わせがベストなのか試したりしているんだけど、統一感はある。チームとして方向性がしっかり固まっているので、最後メンバーが固定された時には凄く強いチームになるのかな、と。圧倒的な強さを見せて優勝してしまう可能性もあると思う。

永田:確かに、サントリーに関しては、「圧倒的」という言葉がピッタリくる。パナソニックみたいに、やさしく相手の力を引き出すところは全くなくて、容赦なくトライの山を築き続ける(笑)。反面、競ったゲームになったらどうなんだろう?

 もちろん、これだけのメンバーが揃っているから、競り合いにも強くて、全ての面で圧倒するというオチのない話になる可能性も十分にありますが。

南 :確かにサントリーの選手たちはみんな自信持ってますよ。コンタクトをしっかりやって、ボールの球出しを早くするというのも浸透しているし、入れ替わって入ってくる選手もそこはブレない。

村上:デュプレア(フーリー=SH)とか、ロッソー(ダニー=LO)が終盤リザーブで出てくると、相手が諦めちゃう雰囲気が漂いますもんね。

稲垣:個々の選手で言うなら、今季サントリーで効いているのは、尾崎(章=PR)であったり、ヒューワット(ピーター=ユーティリティBK)であったり、伏兵じゃないですけど、ベテラン勢が主力のケガをカバーしているのも目立っている。ニコラス(ライアン=CTB)のゴールキックの確率が上がってきているのも大きい。

村上:成田(秀悦)のWTB起用もうまくいっている。

稲垣:FWではトッド・クレバーがLOもカバーできり、尾崎だけじゃなく、池谷(陽輔=PR)とか元(申騎=FL)とかベテランががんばっていますし、選手層はだいぶ厚くなってきている感じはします。

永田:メンバー的には凄いですよ。圧倒的(笑)。

稲垣:外国人まで厚くなっちゃって、どうするのかな(笑)。

村上:やっぱり、シーズン後半、圧倒的に行っちゃうんじゃないですか。

──選手たちに話を聞いても、昨シーズン試行錯誤を重ねながら、自分たちのスタイルを貫いて最終的には日本選手権のタイトルを取った自信があるし、蓄積もあるので、同じ苦戦でも1年前までとは全然受け止め方が違う。

 NTTコミュニケーションズ戦やリコー戦で競った試合をしてますけど、「去年までなら負けていた」みたいな声もあリました。

稲垣:あとは監督の問題だけだな(笑)。将来ばかりを見据えて、足元を見ないんじゃないかというのが心配なんだよなぁ(一同、爆笑)。

 
東芝は中盤戦での2敗が終盤戦への糧になるか(写真はNO8豊田主将)
東芝は中盤戦での2敗が終盤戦への糧になるか(写真はNO8豊田主将)
photo by Kenji Demura (RJP)

── 一方、圧倒的な強さも見せた試合もあるんですが、中盤戦までに予想外とも言える2敗を喫している東芝ですが、どうでしょう。

永田:開幕戦(対トヨタ自動車、36-15で勝利)を見た時には一番強いなと思ったんですけどね。小細工しないで、FWも立ってきれいにオーバーしていくし、圧倒的な力強さを見せていた。でも2敗したということは、小細工しなさすぎなのかな(笑)。

 潜在能力としては凄いものがあると思います。プレーオフになって、「こうしよう」と固めた時には、またギューンと一段階上がるような気がしますね。

──確かに、神戸に圧倒されて負けた後も、選手たちの中には「最後に勝てばいいんでしょ」みたいな受け止め方もありました。

永田:豊田(真人主将)がNO8にいて、ベイツ(スティーブン)、リーチ(マイケル)のFL。このFW第3列は文句なしにいい。

村上:しかも、大野(均)、望月(雄太)のLOも3列みたいに動く。

稲垣:望月は効いてますよね。東芝に関しては、2敗したからって、全然弱くないですよ。実力的には、サントリー、パナソニックと優勝を争う実力は十分ある。NEC戦もSHがいなくなるというアクシデントが大きかったし、毎年、東芝というのは、エアーポケットみたいになる時期があるんですよね。全勝でいくシーズンはなくて。やはり、プレーオフになったら強いと思います。

村上:気持ちのチームなので、時々、スイッチが入らない時もあるのかな。

永田:選手がキツい練習したくなったら、どこかで負けて、コーチがムチ入れるみたいな、チーム全体がそういう体質だったりするんじゃないですか(笑)。

稲垣:やはり、サントリー、パナソニック、東芝の上位3チームが抜けているというのは間違いないですよね。総得失点差を見ても、サントリーが171、パナソニックが175、そして東芝が174と、上位3チームが圧倒的。次がヤマハ発動機ジュビロの120で、その下は50以下になる。

(以下、中編に続く)




2012年1月14日

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