ジャパン4人先発の東芝に対してサントリーはゼロ
代表組の復帰具合も気になる好試合が全国各地で
1日、5週間ぶりにトップリーグが再開される。
周知のとおり、この間、日本代表は計24日間に及ぶ欧州遠征を敢行。欧州でテストマッチ連勝という歴史的偉業を成し遂げた。
エディー・ジョーンズ ヘッドコーチに率いられた日本代表選手一行は27日夜に帰国したばかり。現地時間の25日(日本時間・同深夜)にはフレンチバーバリアンズと死闘を繰り広げるなど、今回は16日間で4試合を戦う厳しいスケジュールだったこともあり、帰国したばかりの代表選手たちのコンディションが万全とは言いにくいのは事実。
「日本人選手たちのタフさを証明することができた」(ジョーンズHC)とは言うものの、各チームで主力を務める代表選手たちが、再開するトップリーグでどんなパフォーマンスを見せるのか気になるところではある。
奇しくも、他の5試合よりも1日早い開催となる1日には、サントリーサンゴリアス、そして東芝ブレイブルーパスという日本代表に多くの選手を輩出するチームが試合を行うが、ジャパン組へのチームとしての対応は実に対照的なものとなった。
東芝では"鉄人"LO大野をはじめジャパン組4人がいきなり先発(右下はその1人のPR浅原) |
東芝とは対照的にジャパン組先発ゼロのサントリー。ゲームキャプテンはCTB平が務める |
埼玉・熊谷スポーツ文化公園 熊谷ラグビー場でヤマハ発動機ジュビロと対戦する東芝ブレイブルーパスは、日本代表として欧州遠征に参加した5人全員を登録メンバーに入れた。
しかも、PR浅原拓真、LO大野均、CTB仙波智裕、WTB廣瀬俊朗の4人は先発。欧州遠征4試合全てにフル出場したFLマイケル・リーチこそリサーブスタートとなるが、リーグ中断前の2試合でもリーチはリザーブメンバーだったこともあり、この選択自体も今季の東芝のスタンダードと言えなくもない。
8時間の時差があるフランスから12時間の長時間フライトを経て帰国して中3日。しかも、いずれも30代のベテランである大野、仙波、廣瀬は25日のフレンチバーバリアンズ戦でも先発出場している。
日本代表主将を務める廣瀬は「東芝の選手はジャパンでのパフォーマンスの方がいい傾向がある気がする」と語るが、厳しい条件の中、日本代表として欧州の列強と戦ってきた経験をチームにどう還元するのか。
「(リーグ中断前の第8節でリコーブラックラムズに敗れたことにより)リコーに奪われた自信を取り戻せると思います」と、高らかに宣言するのはFWとしての日本最多キャップホルダーとなった大野だ。
東芝は第8節までにすでに2敗。トップリーグ中断中に主力中心で臨んだサテライトリーグのコカ・コーラウエストレッドスパークス戦にも敗れるなど(11月23日、26-42)、勢いに乗れていない感じもあり、チームの主力でもある日本代表組のベテランがどういう相乗効果をもたらすのかが注目される。
もちろん、強力FWを誇るヤマハとの対戦だけに、セットプレー、そしてブレイクダウンでの優劣が勝敗を左右することになりそうだ。
ヤマハ発動機サイドでも日本代表副将であるFB五郎丸歩は先発メンバー入りしている。
九州ではワイルドカードをめぐる熱い戦いが
一方、東芝、あるいはヤマハとは対照的なメンバー起用をするのが、王者サントリー。
日本代表として欧州遠征に参加した6人の主力は誰一人として対NTTドコモレッドハリケーンズ戦(12月1日、山梨中銀スタジアム)の先発メンバーには名を連ねていない(PR畠山健介、LO真壁伸弥、SH日和佐篤の3人はリザーブ入り)。
選手層の厚さに加えて、「ケガ人はほとんどいない」(LO真壁)というチーム全体のコンディションの良さゆえのメンバー構成であることは間違いないだろう。
あるいは、東芝-ヤマハ発動機戦がお互い2敗同士で4強入りのためには絶対落とせない一戦であるのに比べて、唯一の全勝チームとして首位を行くサントリーゆえの余裕のなせる業と見ることもできるかもしれない。
もちろん、今季まだ勝ち星に恵まれないNTTドコモとしては、仮にそんなメンバー構成が王者の隙の表れであるならば、アップセットのチャンスは増えることになる。
結果は出ていないとはいえ、第7節では今季好調の神戸製鋼コベルコスティーラーズから4トライを奪って後半36分までリード。第8節の九州電力戦でも15-17とわずか2点差での惜敗と、リーグ中断前の2節では2週連続でボーナスポイントを獲得。
「チーム状況は上向き」(高野一成ヘッドコーチ)であることは間違いないだけに、王者サントリーからの大金星を狙いたいところだ。
翌2日には全国各地で5試合が行われる。
大阪・近鉄花園ラグビー場では、現在7勝1分で2位につける神戸製鋼が6位のNTTコミュニケーションズシャイニングアークスと、そして8位のリコーブラックラムズが9位の近鉄ライナーズとそれぞれ対戦。
群馬・太田市運動公園陸上競技場では現在5位のパナソニック ワイルドナイツが同7位のトヨタ自動車ヴェルブリッツとの一戦を迎える。
ちなみに、現在の勝ち点は5位が25で、6、7位が23、8位20、9位17となっている。
どのチームにとっても、4強争いに勝ち残っていくためには負けられない一戦となる。
一方、4強争いという意味では、すでに厳しくなっているものの、同日に九州で行われる2試合(福岡サニックスブルーズ対キヤノンイーグルス=福岡グローバルスタジアム、九州電力キューデンヴォルテクス対NECグリーンロケッツ=熊本県民総合運動公園陸上競技場)も入替戦回避、ワイルドカード出場という観点から言って、ガチンコ勝負が期待できる組み合わせばかりとなっている。
(text by Kenji Demura)
ヤマハ発動機の大黒柱FB五郎丸もいきなり帰国後4日での先発出場となる |
FLカイノがチームに馴染んできたトヨタ自動車に対してSBWなしのパナソニックがどう戦うのかも注目だ |
SH田中と共にスーパー15入りを果たし日本代表でも活躍したHO堀江はパナソニックの救世主になれるか |
神戸製鋼もPR山下、LO伊藤、WTB今村(写真)のジャパン組がいきなり先発する |