シーズン折り返しに相応しく昨季4強が秩父宮集結
サントリー - パナソニックを制するのは???
日和佐-ピシのハーフ団が先発するのは第2節の九電戦以来。サントリーは新布陣でより攻撃的に |
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NEC戦で2人がかりでタックルにいくFL西原とNO8ホラニ(左)。DFからリズムをつくりたいパナソニック |
シーズンの折り返しとなる第7節。
前半戦の総決算に相応しく、10月20日、秋の気配が色濃くなっている東京・秩父宮ラグビー場には昨季のトップ4が集結する。
組まれているカードはNECグリーンロケッツ-東芝ブレイブルーパス、サントリーサンゴリアス-パナソニック ワイルドナイツ。
第1試合は8ヵ月前のプレーオフセミファイナルで惜しくも涙を飲んだ同士の対戦、第2試合はファイナルの再現ということになる。
「我々のアグレッシブ・アタッキングラグビーを貫き、勝利に向け貪欲にチャレンジしたい」
パナソニックとの大一番を前に、そんなコメントを寄せたのはサントリー大久保直弥監督。
今季ここまで6戦6勝(勝ち点29=1位)。唯一の全勝チームとして首位をひた走るサントリーだが、前節のトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦では、接点でプレッシャーを受け、後半8分までトライを奪えず、同23分までリードを許す苦しい展開となった。
前半はSHフーリー・デュプレアの卓越したゲームメイクを前面に出して安定した試合運びをしながら、終盤にSH日和佐篤、SOトゥシ・ピシを投入して一段とテンポを上げて、相手を引き離す──。そんな今シーズンのサントリースタンダードとも言える選手起用に変化が出たのも、トヨタ自動車戦だった。
後半7分に6-10とリードされた時点で、早くもデュプレア-野村直也に替えて日和佐-ピシのハーフ団を投入。
あるいは、「アグレッシブ・アタッキングラグビー」という観点では、先発の2人よりもポテンシャルを持つコンビと、可能性に賭けたということなのかもしれない。
期待どおりに自分たちでテンポを上げて行ったハーフ団の動きにチーム全体が反応。8分、23分、31分と後半3本のトライを重ねて、逆転勝ちを収めた。
日和佐がマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたことに象徴されているように、途中出場としては今季一番早い時間帯からのプレーとなったハーフ団が試合の流れを変えたのは明らかだった。
その勢いを買われるかたちで、パナソニック戦の先発には、日和佐-ピシが揃って顔を揃えた。
「パナソニックはDFのいいチーム。サントリーのオリジナルアタックを前面に出して勝ちたい」(LO真壁伸弥主将)
もちろん、試合開始からサントリーの「アグレッシブ・アタッキングラグビー」を遺憾なく発揮するための布陣であることに異論はないだろう。
一方、昨季準優勝のパナソニックは、第2節でNTTコミュニケーションズシャイニングアークス(22-25)、そして第4節には東芝(22-32)に敗れて、序盤戦で早くも2敗(勝ち点21=4位)。
ただし、ショートブレイクを経て、10月に入ってからは、第5節でNEC(38-21)、第6節でヤマハ発動機ジュビロ(35-18)という共に強力FWを誇るチームに快勝。
調子を上げた状態で王者に臨むことになる。
「こちらがどれだけサントリーの強みを消せるかが勝負」(中嶋則文監督)
「相手のいいところを出させない試合をしたい」(CTB霜村誠一主将)
まずは粘り強く守りながら、ここ2試合で見せたような、ブレイクダウンでの優位性を生かすかたちでターンオーバーから切り替えしてトライを重ねる──。そんな展開に持ち込みたいところだ。
CTBソニー ビル・ウィリアムズのプレーが起点となってトライにつながる場面も試合を重ねるごとに多くなってきているのは間違いなく、「ソニーが走ったら、横についていく意識があってもいい」(霜村主将)という圧倒的な存在感を誇るオールブラックを、王者サントリー相手にどう生かすかもポイントになる。
パナソニックは日本選手権も含めて公式戦でサントリーに4連敗中であるだけに、シーズン終盤に向けて苦手意識を払拭するためにも、リベンジを果たしたい。
花園には3週連続で神戸製鋼、近鉄が登場
サントリー-パナソニック戦に先立って行われるNEC(勝ち点10=11位)-東芝戦(勝ち点23=3位)は、チームはもちろん企業自体の特性もライバル同士と言っていいだけに、どちらにとっても負けられない試合となる。
「非常にタイトな試合になる。チームスローガンの『NO LIMIT !』に恥じない試合をしたい」(NEC・グレッグ・クーパーヘッドコーチ)
「共に接点の攻防にこだわっている同士。私たちのラグビーの誇りとこだわりを前面に出す」(東芝・和田賢一監督)
両指揮官の言葉どおりに、FWを中心としたフィジカルバトルをどちらが制するかに注目したい。
東芝は第4節でパナソニックを圧倒(32-22)しながら、第5節にはトヨタ自動車に力負け(21-29)。第6節でも福岡サニックスブルースに苦戦している(29-20)。
一方のNECも第3節の近鉄ライナーズ戦(21-17)、第4節のNTTドコモレッドハリケーンズ戦(42-13)という遠征試合で快勝して勢いに乗ると思われたが、ここ2節は秩父宮で連敗(対パナソニック21-38、対リコーブラックラムズ19-36)。
共に、今季はいいパフォーマンスが続かない傾向があるが、後半戦に向けて上昇気流に乗るためにも、タフバトルをものにしたいところ。
第6節までフル出場を果たしてきた東芝NO8豊田真人主将が欠場し、前節の福岡サニックス戦の後半、今季初出場を果たしたCTB仙波智裕副将がいきなり初先発でゲームキャプテンを務める。スキッパーの交代がどう影響するのかも興味深い。
20日の大阪・近鉄花園ラグビー場には、3週連続で関西の雄、神戸製鋼コベルコスティーラーズ(勝ち点25=2位)、近鉄ライナーズ(勝ち点16=7位)が登場。
神戸製鋼がNTTドコモレッドハリケーンズ、近鉄がトヨタ自動車ヴェルブリッツを迎え撃つ。
ここまで無敗の神戸製鋼だが、NTTドコモには昨シーズン痛い敗戦を喫している(29-32)だけに、チーム力が上がっているかどうかを確認するための絶好の機会となる。
一方、7位(近鉄=勝ち点16)対8位(トヨタ自動車=勝ち点15)の対戦となるライナーズ-ヴェルブリッツ戦も、プレーオフ進出を目指す両チームにとっては負けられない一戦。
直線的なアタックが機能し始めたトヨタ自動車と、硬軟入り混じった攻めでスタンドを盛り上げるもののミスから自滅するケースも目立つ近鉄の、どちらが上位戦線に勝ち残るのか注目だ。
同じく20日には、福岡サニックスブルース(勝ち点5=12位)と九州電力キューデンヴォルテクス(勝ち点4=13位)の九州勢が、それぞれNTTコミュニーケーションズシャイニングアークス(勝ち点18=6位)、ヤマハ発動機ジュビロ(勝ち点18=5位)とのアウェー戦を戦う。
下位に甘んじる九州勢としては、そろそろ浮上のきっかけをつかみたいころだし、ホームゲーム扱いのNTTコム(=新潟・東北電力ビッグスワンスタジアム)、ヤマハ発動機(静岡・ヤマハスタジアム)にとってもプレーオフ進出に望みをつなぐためには負けられない。
翌21日には、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場で、初昇格のキヤノンイーグルス(勝ち点11=9位)が現在2連勝と調子を上げているリコーブラックラムズ(勝ち点11=10位)にチャレンジする。
(text by Kenji Demura)
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