NEC-パナソニック、神戸製鋼-ヤマハ発動機、東芝-トヨタ自動車など
各地でガチンコ勝負の好カードが目白押し
パナソニックの東芝戦完敗からの立ち直りは? WTB山田はNECナドロとのトライランキング1位対決を制して勝利に貢献したいところ |
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NECはSOに田村が入ることによって、いいかたちで怪物WTBナドロにボールが渡るケースが増えてきた |
1週間のショートブレイクを経て迎える第5節は、共に昨季の4強ながら今季は序盤戦でやや躓いたパナソニック ワイルドナイツ(勝ち点11=5位)とNECグリーンロケッツ(勝ち点10=7位)の対戦で幕が上がる(5日、東京・秩父宮ラグビー場)。
昨季の準優勝チームであるパナソニックは、CTBソニー ビル・ウィリアムズという大物外国人を獲得しながら、そのSBWのデビュー戦となった第2節のNTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦では22-25で逆転負けを喫し、前節の東芝ブレイブルーパスとの大一番ではボーナスポイントも獲得できない完敗ぶり(22-32)。
ことに、東芝に対してはFW戦で後手に回ったことが一番の敗因となったことは否めない。
「FWが前に出てくれないと、BKだけではごまかしがきかないので、やはり苦しい」と、語るのは長らくワイルドナイツの最後列を締めてきているFB田邉淳。
注目のSBWに関しては、東芝戦では自らのランとオフロードパスをうまく使いわけてトライにつなげるなど、1試合ごとにチームに馴染んできているのは間違いないところ。
中嶋則文監督も「まわりがソニーのランにしっかりついていけば、もっと生きる」と言い、その一方でWTB山田章仁も4試合で7トライを記録するなど好調なだけに、いかに前8人が激しく巧みなブレイクダウンを取り戻して、生きたボールをBKに供給できるかが、立ち直りの鍵になりそうだ。
対する昨季のセミファイナリストのNECも開幕戦のサントリーサンゴリアス、第2節のトヨタ自動車ヴェルブリッツと連敗を喫する最悪のスタートとなったが、第3節に近鉄ライナーズに21-17と競り勝った後、NTTドコモレッドハリケーンズ戦では6トライを奪い、42-13で快勝。
近鉄戦で見せた粘りのディフェンス、NTTドコモ戦ではSOに入った田村優がBKラインをよく動かすなど、チームの輪郭がはっきりしてきたのはいい傾向だろう。
そのNTTドコモ戦では1人で4トライを記録して、一気にパナソニックWTB山田と並んでトライランキング1位に躍り出たWTBネマニ・ナドロの"怪走"ぶりも相変わらずだ。
トップリーグ10年の歴史をひも解いても、過去にレギュラーシーズンで3敗しながら、最終的にトップリーグタイトルをものにしたのは09-10年シーズンの東芝のみ。
今季最後のフライデーナイターでもあるNEC-パナソニック戦は、敗れた方が優勝争い戦線から脱落すると言い切ってもいいようなサバイバルマッチとなりそうだ。
ナイター観戦は、昼間のゲームよりもスピード感が増すとも言われ、当然ながらナドロVS山田のトライランキング1位対決にも注目したい。
"無敗対決"に、近鉄が王者に臨む大阪・花園
みちのくシリーズ第2弾は盛岡で開催
翌日の6日土曜日にも、各地で注目のカードが組まれている。
第5節にして今季初めてトップリーグの試合が行われる大阪・近鉄花園ラグビー場では、ヤマハ発動機ジュビロ(勝ち点18=3位)対神戸製鋼コベルコスティーラーズ(勝ち点15=4位)の"無敗対決"が行われる。
共に、強力FWを前面に出した安定した戦いぶりが際立つ一方、BKには一人で試合を決められる能力を持つ大物外国人選手がいるなど、似た特徴を持つチーム同士の対戦と言えるかもしれない。
「(神戸製鋼は)BKに素晴らしい外国人を2人置いて、申し分のないタレントが揃っている。まずはディフェンスから入っていくことになる」というのは、ヤマハ発動機の清宮克幸監督。
確かに、SOピーター・グラント、そして今季パナソニックから移籍したCTBジャック・フーリーの2人を並べた神戸製鋼の布陣は、助っ人BK陣の使い方としては、リーグ随一の贅沢さかもしれない。
前節のトヨタ自動車戦でも、チャンスにはフーリーを大外に置いて、一気にトライを取り切ってしまう場面もあり、「世界最高峰のBKプレーヤー」(苑田右二ヘッドコーチ)をどう使うかも明確になってきている。
フーリーに関しては、アタックだけではなく、たびたびビッグタックルやカバーディフェンスでピンチを救うなど、チームへの貢献度は絶大だ。
一方、ヤマハ発動機にも、抜群のラインブレイク能力を誇るCTBマレ・サウがいる。強力FW陣が生きたボールをBKに供給できた場合、多くの場合はサウのところで相手ディフェンスを突き破って、最終的には徐吉嶺、中園真司という決定力のあるWTB陣が外でトライを取るのがヤマハのアタックにおけるひとつのパターンと言っていい。
そんな、大物外国人たちも控えるBKを生かすためにも、まずはFW戦でどちらが優位に立てるかが、ポイントになりそうだ。
ヤマハ発動機-神戸製鋼戦に続く第2試合では、地元・近鉄ライナーズ(勝ち点11=6位)が王者サントリーサンゴリアス(勝ち点20 =1位)にチャレンジする。
序盤戦では、いいアタックを続けながらも、「パスの精度やボールキャリアーがしっかりボールを保持できなかったあたりに問題があった」(前田隆介監督)という自分たちのミスが響いて、神戸製鋼とNECに敗れた近鉄だが、ショートブレイク前の九州電力キューデンヴォルテクス戦では、7トライを奪う快勝ぶり(48-11)で間違いなく調子は上向きだ。
相手ディフェンスの穴をうまく突くかたちでフェイズを重ねながら、トライまで結びつけていくアタック力は、あるいはサントリー以上とも言えるポテンシャルを持つ近鉄だけに、同じくアタッキングラグビーを続けながら首位をひた走る王者にどんな戦いを挑むのか楽しみな一戦となる。
「『辛抱』という言葉が一番的確なのかなという気がしています。分厚いアタックをどれだけしっかり止め切れるか。そして、自分たちがボールを持った時には、相手よりも動いてトライを取りたい」(近鉄・前田監督)
日本が世界に誇るアタッキングラグビーを堪能できる可能性大だ。
同じく6日に岩手・盛岡南公園球技場で行われるみちのくシリーズ第2弾の2試合もライバル意識の強いチーム同士の好カードが揃った。
第1試合のキヤノンイーグルス(勝ち点6=10位)-九州電力キューデンヴォルテクス(勝ち点3=12位)戦は、共に序盤戦を盛り上げた昇格組同士の対戦。
そして、2試合目に控えるのは、前節パナソニックに快勝した東芝ブレイブルーパス(勝ち点18=2位)と、同じく神戸製鋼を猛追するかたちで引き分けに持ち込んだトヨタ自動車ヴェルブリッツ(勝ち点10=8位)のガチンコ対決。共に自慢のFW陣が調子を上げていることは間違いなく、熱いバトルが繰り広げられそうだ。
前日の金曜ナイターに続いて6日の土曜日に秩父宮で行われる2試合は今季初"東の聖地"でのデーゲームとなる。
第1試合のリコーブラックラムズ(勝ち点1=13位)と福岡サニックスブルース(勝ち点5=11位)は今季なかなか結果が出ていないチーム同士の対戦。共に自分たちのスタイルによる攻撃ラグビーで結果を出して、上昇気流に乗るきっかけをつかみたいところ。
第2試合の"NTTダービー"は、当然ながらNTTコミュニケーションズシャイニングアークス(勝ち点9=9位)、NTTドコモレッドハリケーンズ(勝ち点0=14位)双方にとって、絶対に負けられない一戦であることは言うまでもないだろう。
(text by Kenji Demura)
全勝を続けるヤマハ発動機の快進撃は現在得点王のFB五郎丸の安定したプレーぶりによるところも大きい |
強力FWの神戸製鋼は同じくFWに自信を持つヤマハ発動機との"無敗対決"を制することができるか(写真はPR安江) |
近鉄は地元で王者サントリーを上回るアタッキングラグビ—を披露できるか(写真は攻撃のキーマンとなるSO重光) |
LO真壁主将率いる王者サントリーは近鉄の挑戦を退けて、単独首位の座を守ることができるか |
前節で神戸製鋼と引き分けたトヨタ自動車は、みちのく盛岡で東芝とのガチンコ勝負に挑む(写真はFL吉田光) |