またもアップセットは起きるのか?
上位陣の立て直しぶりも要注目
9月7-9日に行われた第2節。
初昇格のキヤノンイーグルスが東芝ブレイブルーパスを追い詰め、3年ぶりにトップリーグ復帰の九州電力キューデンヴォルテクスは王者サントリーを上回る5トライを記録して、勝ち点2を獲得。そして、昨季9位のNTTコミュニケーションズシャイニングアークスが同・準優勝のパナソニックワイルドナイツから大金星を挙げた。
上位陣の戦いぶりが安定せず、下位チームのイキイキした健闘ぶりが目立ち、"下克上"の雰囲気が漂う今季のトップリーグ序盤戦だが、第3節も何かが起こりそうな興味深い対戦カードが数多く組まれている。
九州電力のしつこいプレーにタジタジとなった王者サントリーはリコー相手に戦う姿勢を取り戻せるか(写真はFLスミス) |
|
開幕2節目までで勝ち点0のリコー。サントリー相手に何とか浮上のきっかけをつかみたい |
3週連続で東京・秩父宮ラグビー場での金曜ナイター開催となる14日には、王者・サントリーサンゴリアスとリコーブラックラムズが対戦する。
前述どおり、第2節では今季3年ぶりの再昇格を果たした九州電力に5トライを奪われる大苦戦ながら、34-29で辛くも勝利をものにしたサントリー。
LO真壁伸弥主将は「勝って反省できることだけが収穫」と語っていたが、1週間でどの程度課題を修正できているか、もっと言えば「今年のサントリーは強いのかどうか」が占えるのが第3節のリコー戦ということになりそうだ。
「リアクションの早さもボールに対する執着心も九電が上だった。もう一度、サントリーのアタックシェイプの質を上げなければいけないし、練習の中でもゲームシチュエーションをもっと取り入れていく必要があるのかもしれない」(大久保直弥監督)
前節は欠場したSHフーリー・デュプレアが先発に復帰。「普段なら考えられないような判断ミスが多かった」(同監督)というゲームコントロールの部分では、当然大きなプラス材料となる。
対するリコーブラックラムズは、パナソニック、神戸製鋼相手に開幕2連敗。
「ミスタックル、ドロップボールが多く、これではゲームに勝てない」と山品博嗣監督が嘆くとおり、自らのミスを突かれて失点するケースが多く、本来のポテンシャルを生かせない戦いが続いている。
お互いBKでトライを取り切る能力は十分なだけに、ブレイクダウンの優劣、そしてミスなく自分たちのプレーを続けられるかがポイントになりそうだ。
好調・神戸製鋼が秩父宮に初登場
ヤマハ対NTTコムは上位進出を懸けた戦いに?
翌15日の秩父宮ラグビー場には、開幕2連勝と波に乗る神戸製鋼コベルコスティーラーズが今季初の関東圏お目見えを果たす。
初戦の近鉄ライナーズとの"阪神ダービー"、そして前節のリコー戦と、共にボーナスポイントなしのタイトなゲームを制した。
「泥臭く、1点差でもいいから勝つゲームをやっていきたい」という苑田右二ヘッドコーチの思惑どおりに、2試合で勝ち点8を挙げる堅実な戦いぶり。
セットプレーも含めて、大型FWの破壊力はリーグ随一。BK陣も真ん中にCTBジャック・フーリー(パナソニックから移籍)が加わったことで、攻守に安定感が増しているのは間違いないだろう。
そんなソリッドな神戸製鋼を迎え撃つのは、初昇格キヤノンイーグルス。
前節では、やはり強力FWを誇る東芝ブレイブルーパスにブレイクダウンで互角以上の戦いぶりを見せ、あと一歩のところまで追い詰めているだけに(15-21でボーナスポイント1を獲得)、まずはFW戦での攻防が注目される。キヤノンFWがボールを獲得できるようだと、SO/FB橋野皓介、WTB大居広樹などBKには決定力のある選手が揃うこともあり、一気にアップセットの可能性が高まることになる。
神戸製鋼-キヤノン戦に続いて、15日のダブルヘッダーの2試合目は、やはり今季関東地方で初の試合となるNTTドコモレッドハリケーンズが東芝にチャレンジ。
開幕2勝の東芝、同2敗のNTTドコモと、ここまでの成績自体は対照的だが、NTTドコモのみならず東芝も本来のブレイクダウンで圧倒できない苦しい戦いぶり。
共にチームが勢いに乗るきっかけをつかみたいところだ。
もちろん、東京開催以外にも、興味深い対戦カードばかり並ぶ。
15日、静岡・ヤマハスタジアム(磐田)では、2戦2勝と勢いに乗るヤマハ発動機ジュビロがNTTコミュニケーションズを迎えての地元開幕ゲームを戦う。
好調ヤマハは安定したセットプレーを起点に、走力のあるBK陣がトライを取り切るスタイルで2試合で8トライを量産。
これまでは、WTB徐吉嶺やCTBマレ・サウなどの影に隠れることも多かったWTB中薗真司が3トライを挙げて、パナソニックWTB山田章仁と並んで現在トライ王。開幕戦で9ヵ月ぶりに復帰したSH矢富勇毅副将もNTTドコモ戦でマン・オブ・ザ・マッチに輝くなど、好調ぶりをキープしている。
NTTコムも粘りのDFと、最後まで走力が落ちないフィットネス、そして大注目のソニービル・ウィリアムズを完全に脇役に追いやったCTB/WTBアレサナ・ツイランギの活躍などで、前節パナソニックに逆転勝ちを収めて勢いに乗っているだけに、見逃せない一戦となる。
札幌でSBWの初戦を飾れなかったパナソニックは、本拠地・太田に近い栃木県足利市総合運動公園陸上競技場で16日に福岡サニックスブルースと対戦。
前節の敗戦で、早くも「もう1試合も負けられない」(CTB霜村誠一主将)という危機感さえ漂うパナソニックが、SBウィリアムズの使い方も含め、どう立て直してくるのか。
福岡サニックスにはウィリアムズ同様、1年前のW杯優勝メンバーであるLOブラッド・ソーンが在籍。そんなオールブラックス対決、そして今季はCTBでプレーすることもあるカーン・ヘスケス(サニックスWTB)との直接対峙も楽しみだ。
同日、愛知・名古屋市瑞穂公園ラグビー場では、前節で福岡サニックスを破って今季初白星を挙げた近鉄が開幕2連敗のNECグリーンロケッツと対戦(第1試合)。第2試合では、地元トヨタ自動車ヴェルブリッツが王者サントリーを苦しめた九州電力の挑戦を受ける。
(text by Kenji Demura)
NTTコムはSO君島(右下)の安定したキックが計算できるのも大きい。パナソニック戦ではトライも記録 |
前節、東芝と互角に渡り合ったキヤノンは好調・神戸製鋼と秩父宮で対戦する |
前節まさかの黒星デビューとなったパナソニックのSBW。さらに1週間経ってチームへの融合具合は? |
第2節で27-26という好ゲームを繰り広げたトヨタ自動車とNECは共に今節は名古屋での試合となる |