順位が下のチームが上のチームを倒すアップセットが相次いだ第6節。前節で敗れたチームがどんな軌道修正を果たすのか─ライバルチーム同士の対戦も多く、熱い戦いが繰り広げられそうだ。
「もう負けられない」危機感がライバル対決を盛り上げる神戸対トヨタに注目!
前節NTTドコモに敗れて3敗となった神戸製鋼は同じく3敗のトヨタ自動車とのサバイバルマッチに臨む(写真はFB正面) |
注目は、17日の神戸製鋼コベルコスティーラーズ対トヨタ自動車ヴェルブリッツ戦(滋賀県・皇子山総合運動公園陸上競技場 13時キックオフ)だ。
両チームは、関西社会人リーグ時代からのライバル同士。お互いに絶対に負けたくない相手だが、ともに前節手痛い黒星を喫して3勝3敗となってしまった。
「トップ4に入ることは諦めません」とトヨタ朽木泰博監督は話すが、4強入りには連敗は何としても避けたいところ。ライバル対決に「もう1敗もできない」という危機感が重なって、火の出るような激しいゲームが展開されそうだ。
トヨタは前節の福岡サニックスブルース戦で先発SOに文字隆也を起用し、オレニ・アイイをリザーブにおいたが、後半開始からアイイを投入。今節は、信頼度の高いアイイにSOを任せる展開になりそうだ。新キャプテンのHO上野隆太が現在4トライでランキング4位タイにつけているように、FW力には定評がある。力で神戸製鋼のムービング・ラグビーを封じ込めたい。
対する神戸製鋼は規律が課題。
NTTドコモレッドハリケーンズ戦では後半13分にFLジョシュ・ブラッキー、23分にはWTB中濱寛造と立て続けにイエローカードを受けて、およそ20分間を14人で戦う状況に追い込まれた。トヨタ戦はPGによる失点を防いで、ボールを大きく動かす展開に持って行きたい。
尚、神戸を破ったNTTドコモは"先輩格"NTTコミュニケーションズシャイニングアークスとの"NTTダービー"に臨む(17日、東京・秩父宮ラグビー場 12時キックオフ)。こちらもライバル意識丸出しの熱い戦いが繰り広げられること必至だ。
気持ちを引き締めた東芝に絶好調のヤマハが挑む
もう1試合は18日のヤマハ発動機ジュビロ対東芝ブレイブルーパス戦(静岡・ヤマハスタジアム 13時キックオフ)だ。
ヤマハ発動機は前節でコカ・コーラウエストレッドスパークスに快勝して4位に浮上。今季はWTB徐吉嶺が絶好調で、コカ・コーラ戦でも2トライを挙げて通算トライ数を6に伸ばし、ランキング1位に躍り出た。第5節から元NZ代表のジェリー・コリンズがFLとして先発し、いいチーム状態で東芝に挑む。
一方の東芝は、前節で前半25分にSH藤井淳が足首を傷めて三井大祐と交代したが、その三井も目の上を切って退場し、SHを欠いた状態でNECグリーンロケッツに19-24と敗れた。それまで5戦全勝、全試合で4トライ以上を記録するなど絶好調だっただけに、3トライしか奪えずに敗れたのは思わぬ誤算。
和田賢一監督は、「SHがいなくなったことを敗戦の理由にしたくない。前半の早い時間帯に3トライを取って慢心して、動きがバラバラになった」と振り返り、チームを引き締める。
この試合ではLO大野均がトップリーグ100試合出場を達成する予定で、記念試合を白星で飾るべくモチベーションは高い。
春から清宮克幸監督、長谷川慎コーチが打ち出すFW強化の方針の下、鍛え上げられてきたヤマハ発動機が、大物FWコリンズも加えた布陣で強力な東芝FWにどう立ち向かうのか注目だ。
今季は控えに回ることも多いSOアイイ(左から3人目)とCTBイェーツ(右から2人目)。フロントスリーをどう固めるかもトヨタ復活のポイントか |
東京・秩父宮での"NTTダービー"も熱い戦いになりそうだ(写真はトップリーグ100試合出場を達成したNTTドコモPR久富) |
NECをゴール前に釘付けにしながら4トライ目が取れなかった東芝は強力FWのヤマハ発動機相手にどんなラグビーを見せるか |
元オールブラックスのFL/NO8コリンズ(写真)も加わり破壊力アップのヤマハ発動機がFW戦で東芝と対等に戦えるかも見どころだ |
箕内拓郎
(NTTドコモレッドハリケーンズ NO8)
◇「少しでも順位を上げるために、戦いに悔いを残したくない」
箕内拓郎(みうちたくろう)◎1975年12月11日生まれ。身長188cm、体重105kg。八幡高校→関東学院大学→オックスフォード大学→NECグリーンロケッツ→NTTドコモレッドハリケーンズ。日本代表キャップ48 |
数 シーズンが深まるにつれて、箕内拓郎のシルエットがシャープになっていく。
今季からトップリーグに昇格したNTTドコモレッドハリケーンズのNO8としてFWを引っ張り、先頭に立って動き続けることで、身体がどんどん絞られるのだろう。
ボールが停滞した状況では自ら果敢に相手防御に挑みかかり、ピンチには骨惜しみすることなくタックルに入る。ブレイクダウンでの厳しい絡みも健在だ。
「トップリーグ残留という現実的な目標のなかで、少しでも高いポジションで目標を達成したい。戦いに悔いを残したくないんです。気がついたら13試合が終わっていた……では、若手には何も残らないですから」
それが、箕内を支えるモチベーションなのだ。
NTTドコモは、そんな箕内の思いにシンクロするように、4日には前年度王者のパナソニック ワイルドナイツから4トライを奪ってボーナスポイントを獲得。11日には、2月の第48回日本選手権で0-38と完敗した神戸製鋼コベルコスティーラーズから4トライを奪い、32-29と破って嬉しい初白星を挙げた。箕内自身、後半に連続トライを奪って勝利に貢献している。
前年度の上位5強との対戦を終えて勝ち点8(開幕戦でホンダヒートと引き分けて2ポイント獲得)は、上出来とは言えないまでも悪くはない。これからが、順位の近いチームとの試合が続く正念場となる。
「最初に上位チームとの対戦が続いたのは確かに厳しかったですね。でも、パナソニックから1ポイント取れたことで、何かしらの形にはできた。これからはミスが許されない正念場が続きますが、若いチームだから積極的なラグビーをしたい。ボールをどんどん動かしていきたいですね」
昇格初年度のチームには、強豪チームとの連戦が続くなかでコンディションをどう整えるかなど難しい問題がいくつも待ち受けるが、それは箕内にとっては慣れ親しんだもの。NECグリーンロケッツから移籍1年目の昨年度はトップウェストでのプレーを強いられたが、今季はなじみのトップリーグに戻ってのびのびとプレーしている。
箕内にとっても、大きな楽しみがあるのだ。
「トップリーグでプレーしていれば、ジャパンでいっしょだった選手と試合もできるし、コミュニケーションも取れる。それが、本当にいい刺激になっています」
チームがトップリーグ残留を果たし、やがて定着すれば、そんな楽しみを毎年経験できる。個人的にも、箕内にはチームのトップリーグ残留に強い思い入れがあるのだ。
次節は秩父宮でトップリーグ歴で1年先輩のNTTコミュニケーションズシャイニングアークスとの“NTTダービー”。
木曽一、栗原徹といった03年W杯オーストラリア大会での“ジャパン同窓生”との再会を楽しみにしながら、ピッチの上では「チームを前に進める」ために身体を張る。
今季初めて“古巣”でプレーする箕内に注目だ。
(text by Kenji Demura)