一週間のインターバルを置いて再開したトップリーグは、依然として東芝ブレイブルーパスとサントリーサンゴリアスが全勝を守り、これをパナソニックワイルドナイツが4勝1敗で追う展開となっている。第6節、首位の東芝は、上り調子のNECグリーンロケッツと対戦。サントリーは、8位のリコーブラックラムズの挑戦を受ける。
真っ向勝負の肉弾戦必至。注目の東芝-NEC
好調NECは東芝に挑戦。FLラトゥ主将、NO8土佐(写真)など実力派が揃うFW陣が互角に戦うことがアップセットのための第一条件となる |
すべてに4トライ以上のボーナス点を獲得しながら5戦全勝で勝ち点「25」。まさに満点の快進撃を続けるのが東芝ブレイブルーパスだ。全員がしっかり立って前進する「スタンディング・ラグビー」で、前節はNTTコミュニケーションズシャイニングアークスを45-6と一蹴。厳しいコメントが多い和田賢一監督をして、「(足もとがぬかるむ)悪い条件の中で、一つ一つのプレーをやり切ってくれた」と笑顔で語らせる内容だった。トップリーグ100試合を達成した中居智昭、41歳のFB松田努らも元気いっぱいに走り回り、王座奪還に向けて順調に走っている。
しかし、今節の相手は手強い。開幕連敗も、その後3連勝と調子を上げるNECグリーンロケッツである。FLニリ・ラトゥ、NO8土佐誠という激しく前に出るFW第三列に加え、慶應義塾大卒のルーキー村田毅がLOとして期待以上の働き。前節もリコーブラックラムズを突き放すトライを挙げており、攻撃に厚みを加えている。BKは、SOキャメロン・マッキンタイアーと、インサイドCTB田村優のコンビが機能し、しっかりとゲームをコントロールできるようになった。後半は、異次元サイズのWTBネマニ・ナドロ(195cm、129kg)が登場し、相手を弾き飛ばしてチームを勢いづけるパターンも確立されてきた。トライを獲れる選手を得たことは快進撃の大きな理由だろう。
東芝は、5節までの得点が「214」と、14チーム中唯一の200点台。そして、失点は「45」と極端に少ない。ボールを保持して攻め続けている証だ。このボールをNECが奪えるかどうか。スクラム、ラインアウトのマイボールを確保し、マッキンタイアー、田村のロングキックで敵陣に入る。地域を獲得しながら東芝の勢いを押しとどめたい。接点の当たりあいでは一歩も引かない両チームの戦いは観客席を大いに沸かせそうだ。
久富雄一、3人目の100試合出場へ
2位のサントリーは、山梨の中銀スタジアムでリコーとの対戦。前節は、南アフリカ代表LOダニー・ロッソウ、SHフーリー・デュプレアも先発、SOにはパスワークのいい曽我部佳憲を起用し、Honda HEATを圧倒した。さまざまなメンバー編成を試しながらの戦いは、シーズン終盤に向けてのリスクマネージメントにも思える。リコーに対してもそのメンバー編成が注目されるところ。
王者パナソニック ワイルドナイツは、NTTコムと戦う。前節はNTTドコモレッドハリケーンズを下したものの、簡単に失点してしまう場面が多く、本調子ではない印象。NTTコムは、東芝に完敗したが、元オールブラックスのLOアイザック・ロスや、NO8フォトゥー・アウエルアらタイトなFW戦に強い選手に加えて、突破力あるSH鶴田諒、俊足WTB友井川拓ら、一気にトライまでボールを運べる選手もおり、パナソニックを苦しめるに十分な戦力を擁している。パナソニックにとっては侮れない相手だ。
個人記録では、前節、東芝の中居智昭、サントリーの小野澤宏時が100試合出場を達成した。2003年に発足したトップリーグで毎年着実に出場を続ける数名の選手が、今季、100試合を迎えるのだが、第6節では、NTTドコモレッドハリケーンズの久富雄一が100試合を達成する見込み。昨季までNECで94試合を達成しており、体力的に消耗の激しいFW第一列の選手として初の快挙となる。新天地でチャレンジする33歳。記録はまだまだ伸びそうだが、まずは、大きな拍手で久富選手を迎えたい。
トップリーグ100試合出場を達成したLO/FL中居、LO大野などベテラン勢も相変わらずの仕事人ぶりを見せる東芝は開幕6連勝なるか? |
東芝同様、5戦全勝のサントリーは甲府でリコーと対戦。南ア代表デュプレア(写真)と日和佐をSHで使い分けるなど、ベストの布陣を模索中 |
前節のNTTドコモ戦では8トライを奪いながらも4トライを献上するなど戦い方が安定しないパナソニック(写真はWTB山田)は戦力充実のNTTコムと対戦 |
NECからNTTドコモに移籍した元日本代表PR久富は11日の岡山での神戸戦でトップリーグ100試合出場を達成する |
マア・ノヌー
(リコーブラックラムズ)
◇“世界一”のアタック能力を誇るスターCTB
マア・ノヌー◎1982年5月21日、NZ生まれ。182cm、110kg。スーパーラグビーのハリケーンズで2003年から2011年まで活躍。今秋、リコーブラックラムズ入り。NZ代表キャップ数62。 |
数多くの海外代表選手が加入したトップリーグにあって、ひときわ輝くのがリコーブラックラムズのマア・ノヌーである。10月23日に行われた第7回ラグビーワールドカップ決勝でも、ドレッドロックの髪型と蛍光オレンジのスパイクは異彩を放っていた。
「日本ではたくさんの友人がプレーしていたし、興味を持って10年くらい見ていた。友人からも日本ラグビーは選手を大切にしてくれると聞いていた。オファーを受けた時、すぐに日本行きを決めました」
オールブラックスで62キャップを誇るCTBは、第2節(11月5日)のヤマハ発動機戦ジュビロ戦でトップリーグデビューを果たし、続くホンダヒート戦で初先発。コカ・コーラウエストレッドスパークス戦でフル出場を果たした。このとき足を痛めて、第5戦は欠場したが、大事には至らず、残り試合でのベストパフォーマンスを誓って調整中だ。
ノヌーの特徴は、なんといっても、ディフェンスラインをぶち破る突破力にある。分厚い胸板とはち切れんばかりの太ももの筋肉。体重110kgの肉体を、抜群の瞬発力であっという間にトップスピードに乗せて、タックラーを翻弄する。ただ強いだけでなく、タックラーの直前で巧みにコースを変える技能にも優れる。そして、もしタックルされても、倒れる寸前にボールを浮かし、サポートの選手を走らせる。
ただし、日本での3試合ではまだその爆発的加速力は披露していない。「日本では僕に走らせないように、すぐにタックラーが行く手をふさぐ。スペースは僕の前にはなく、外にある。だから、今のところパスをすることが多い。でも、パスをしているうちに、いずれ目の前にスペースができるだろうから、そうすれば走ります」
現在は、パートナーと3歳の息子とともに世田谷に住み、日本のレストランやお店を自転車で巡っては、新たな発見の連続に目を輝かせている。次戦は、サントリーサンゴリアスが相手だ。南アフリカ代表のフーリー・デュプレアや元オーストラリア代表のジョージ・スミスなど、かつて戦った選手たちが並ぶ。誰か対戦してみたい選手はいますか?と問いかけると「一人はあげられない」と首を振った。「サントリーはいま、トップリーグの中でもベストのチームだと思う。対戦を楽しみにしていますよ」。
ノヌーの爆発的加速がいつ飛び出すか。楽しみに待ちたい。
(text by Koichi Murakami)