W杯決勝戦の死闘の余韻も消えやらぬ29日、ジャパンラグビートップリーグ2011-12シーズンが開幕する。
W杯で活躍したビッグネームも数多く新たに参加するなど、魅力倍増の今季のトップリーグの動向を占う開幕節の見どころは──。
W杯スターたちが続々加わり、彩り増す各チーム
昨季はプレーオフトーナメントMVPに選ばれたWTB山田の活躍もあって、ワイルドナイツが悲願のトップリーグ制覇を果たした |
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パナソニック対サントリーという昨季のチャンピオンチーム同士の戦いを制するのは? |
まずは、新たにトップリーグに加わる有力外国人選手たちから紹介していこう。
24年ぶりとなる悲願のW杯優勝を成し遂げたニュージーランド代表オールブラックスからCTBマア・ノヌー(リコーブラックラムズ)、ブラッド・ソーン(福岡サニックスブルース)、FBミルズ・ムリアイナ(NTTドコモレッドハリケーンズ)の3名が来日。開幕節からいきなりデビューとはいかないものの、シーズンを盛り上げてくれそうだ。
他にも、ベスト8のイングランドからジェームズ・ハスケル(FL/NO8=リコー)、南アフリカからダニー・ロッソウ(LO)、フーリー・デュプレア(SH=以上サントリーサンゴリアス)、ジャック・フーリー(CTB=パナソニック ワイルドナイツ)と、W杯現役組が続々と登場予定。
また、サントリーには元オーストラリア代表FLのジョージ・スミスも加入。こちらは15日に行われた東芝ブレイブルーパスとのプレシーズンマッチにも出場し、開幕戦に向けて準備は万全だ。
一方、東芝には日本代表としてW杯4戦全てでフル出場を果たし、トンガ戦ではマン・オブ・ザ・マッチに選ばれるなど、インターナショナルレベルのプレーヤーであることを証明したFLマイケル・リーチが加わった。こちらも、開幕戦からブレイブルーパスのジャージをまとって大暴れしそうだ。
■29日に秩父宮でファイナリスト対決、30日の瑞穂は骨軋むベスト4同士の対戦
さて、その開幕戦。東京・秩父宮ラグビー場では、リコーブラックラムズ対福岡サニックスブルースという対照的なカラーのチーム同士の第1試合(12:00KO)の後、第2試合(14:00KO)ではパナソニック ワイルドナイツ対サントリーサンゴリアスという昨季のトップリーグチャンピオンと日本選手権王者の激突する。
ともにW杯日本代表に6名ずつ選手を送り込んだが、パナソニックは、ジャスティン・アイブス、ホラニ龍コリニアシのFWの核2名が負傷して戦線離脱を余儀なくされた。
しかし、霜村誠一キャプテンは、「昨年チャンピオンになったことで、例年よりもリラックスして開幕戦に臨める。その分、力が入り過ぎてパニックになったりすることもないでしょう」と、余裕のコメント。中嶋則文監督も、「自分たちの強みは長年培ってきたディフェンス」と、サントリーのアタッキングラグビーを受けて立つ考えだ。
対するサントリーは、2年目のエディー・ジョーンズ監督のもとで「今季は迷いなく力を発揮できる」(竹本準太郎キャプテン)と、自信満々で開幕戦に臨む。
カギを握るのはブレイクダウンの攻防だ。
テンポ良くアタックしたいサントリーに対して、パナソニックがいかにボールに絡んでテンポを遅らせることができるか。リズムが悪くなればサントリーの攻撃力は威力をそがれる。それだけに、タックル後のボールを巡る攻防が重要なのだ。
竹本主将は注目のスミスについて、「プレーの先を読む力が凄い。ブレイクダウンにも余裕を持って臨んでいる」と話したが、そんなスミスに仕事をさせないことが、パナソニックにとっては勝利への近道となる。タックル周辺でのスミスVSパナソニックFWの攻防に注目して欲しい。
翌30日には瑞穂公園ラグビー場で、トヨタ自動車ヴェルブリッツ戦(昨季3位)が東芝ブレイブルーパス(同4位)を迎え撃つ(13:00KO)。
こちらはトヨタ朽木泰博監督が「今までにないスマートさも含めて見て楽しいラグビーをしたい」と語れば、東芝和田賢一監督も、「やることを明確にしてシンプルにした分、自分から要求してボールをもらったり、ずいぶん動きがナチュラルになってきた」と話す。
共にFW戦に自信を持つチーム同士の対戦。注目して欲しいのは、相手がボールを持ち込んだラックに対しての仕掛け。
「カウンターラック」と呼ばれるこのプレーに、今回のW杯では世界の強豪たちがこだわった。もともとどちらも積極的にカウンターラックを仕掛けるチームだが、W杯効果もあって、今季はさらに激しさが増しそうだ。
名古屋・瑞穂ではトヨタ自動車対東芝という共にFWにこだわりを持つチーム同士のガチンコバトルが見られそうだ |
リコーに加入したイングランド代表ハスケルは福岡サニックスとの開幕戦からリザーブメンバー入り |
マイケル・リーチ
(東芝ブレイブルーパス FL)
◇目標は東芝で3回優勝すること
マイケル・リーチ◎1988年10月7日ニュージーランド生まれ。身長190cm、体重105kg。札幌山の手→東海大学→東芝ブレイブルーパス。日本代表キャップ22 |
そんな大器が、この30日のトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦でトップリーグデビューを果たす。
「やっと東芝のラグビーがわかって、楽しくなってきた。最初は、サポートにつく深さや、ボールをもらうタイミングがジャパンと違っていて、なかなか難しかったけど、ようやく慣れてきました」
東芝のラグビーに適応するのが「難しかった」のは、アジア五カ国対抗、IRBパシフィック・ネーションズカップ、イタリア合宿、W杯と続いたジャパンの活動のために、府中に腰を据える時間がなかったから。だからこそ、NZから帰国してすぐに10月1日からの鹿児島合宿に合流し、そこで第1クールからチームメイトと同じメニューをこなした。「早く試合に出たい」という思いが、疲れた身体にムチを打ち、しんどい思いを自ら買って出たモチベーションだった。
プレーに対する意識も、W杯の場に立って変わってきた。世界レベルのFLを目の当たりにして、オープンサイドFLに対する意欲が一段と高まったのだ。
「スカルク・バーガー(南ア)、リッチー・マコウ(NZ)、デイビッド・ポーコック(豪州)、みんな凄い。それに、ウェールズのキャプテンのサム・ウォーバートンは僕と同じ歳。やっぱり刺激を受けたし、自分がまだ3列の仕事をできていないこともよくわかった。将来的にはNO8をできるような選手になりたいと強く思った」
東芝では、和田賢一監督から「アタックでボールを持ってガンガン行け」と指示されている。FLとしての役割を考えるあまり、あらゆる局面に絡もうとして本来の持ち味を出せずにいたリーチから迷いを取り去り、「リーチらしさ」を引き出すためだ。
「和田さんは、厳しくいろいろと教えてくれる。それが僕にはありがたい。中居(智昭)さんも経験に基づいて、いろいろ教えてくれる。鹿児島合宿に入ったときには、まだ顔と名前が一致しない人もいて、溶け込むのが難しいかなと思っていたけど、東芝の人はみんな優しくて、もうすっかりチームに溶け込みました」
W杯前には海外の強豪クラブでプレーする夢も語っていたが、それも変わった。
「まず東芝で3回優勝したい。それが、今の目標です」
その最初のシーズンが、これから始まるのだ。