トップリーグ2011-2012特集 TOPプレビュー&TOPマッチレポート「今シーズンのトップリーグはここを見よ!
昨シーズンに引き続き、トップリーグホームページでは、スポーツライターとして活躍中の永田洋光氏と村上晃一氏による毎節の見どころと、両氏およびその他第一線で活躍する豪華執筆陣によるマッチレポートをお届けいたします!

リーグ戦 第8節(12/24 - 12/25)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
12/24(土) 12:00 ヤマハ発動機ジュビロ 49-41 NTTドコモレッドハリケーンズ 瑞穂
12/24(土) 12:00 コカ・コーラウエストレッドスパークス 17-41 Honda HEAT レベスタ
12/24(土) 13:00 NECグリーンロケッツ 31-18 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス フクアリ
12/24(土) 12:00 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 15-45 サントリーサンゴリアス 瑞穂
12/24(土) 14:00 福岡サニックスブルース 5-12 近鉄ライナーズ レベスタ
12/25(日) 13:00 パナソニックワイルドナイツ 32-10 リコーブラックラムズ 太田
12/25(日) 13:00 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 22-19 東芝ブレイブルーパス ホームズ

マッチレポート

完全復活を印象づけて神戸製鋼が東芝に完勝

東芝の強い部分で圧倒した神戸製鋼が会心のホームゲーム─。25日、トップリーグ第8節2試合が行われ、前節でトヨタ自動車を力でねじ伏せた神戸製鋼コベルコスティーラーズが東芝ブレイブルーパスのお株を奪うような力強さを見せて22-19というスコア以上の快勝ぶり。中盤戦までに3敗を喫していた神戸製鋼にとっては前節に続いて4強へのサバイバルを強く印象づける一戦となった。
また、太田市運動公園陸上競技場で行われた一戦では王者パナソニック ワイルドナイツがリコーブラックラムズの挑戦を32-10で退けて2位を維持した。トップリーグ第9節は1週間のショートブレークを挟んだ後、新年1月9日に行われる。

■神戸製鋼コベルコスティーラーズ22-19東芝ブレイブルーパス(前半10-0)──12月25日

 
 

FW戦で東芝に圧勝。神戸製鋼が4強へのサバイバルを印象づけた(写真は力強い突破チャンスをつくったNO8マパカイトロ)
photo by Kenji Demura (RJP)

強い神戸製鋼が戻ってきた。
間違いなく、この日ホームズスタジアム神戸を埋めた7424人のファンはそう確信したはずだ。
「(スタジアムの)上から見ていて、もの凄く強いチームに思えた」
試合後、苑田右二ヘッドコーチは80分間を逞しく戦い終えた選手たちにそう声をかけたというが、それは幸いにして前週のトヨタ自動車戦に続いて神戸製鋼の快勝ぶりを目の当たりにすることができた取材者がピッチの近くで得た感覚と同じだった。

「コンタクトエリアを制圧する」(同ヘッドコーチ)
そう宣言しながら、1週間前にトヨタ自動車をブレイクダウンで圧倒してみせた神戸製鋼が、やはり接点での激しさに絶対的な自信を持つ東芝に対して、真っ向勝負で宣言どおりにコンタクトエリアの攻防を制してみせる─。正直言えば、それは2週間前にNTTドコモレッドハリケーンズ相手に今季3敗目を喫した時点の神戸製鋼の姿からは想像できないものだった。

キックオフから22本の矢になれ─。
そんな指示を受けていたという神戸製鋼フィフティーンは、激しさにはこだわりを持つはずの東芝を立ち上がりから圧倒し続けた。
開始2分でラインアウトからモールを組んで一気に押し込んで先制。その前にモールを組もうとした東芝にWTB大橋由和副将が猛タックルを浴びせて反撃の起点としたプレーも含めて、キックオフ直後の攻防で思惑どおりに主導権を握った神戸製鋼は、22分にも敵陣22m付近での相手ボールラインアウトを奪ってモールからFL橋本大輝がサイドを突破してトライラインに迫った後、最後はFLジョシュ・ブラッキーがラックサイドを潜り込むようにトライラインを越えた。
結局、前半はこの2トライを奪った神戸製鋼が10-0とリードして折り返し。ただし、点差以上に神戸製鋼が東芝の"強い部分"で勝ち続けた印象の40分間だった。

この日、テレビ解説を務めていた神戸製鋼OBの大畑大介氏も、ハーフタイムにグラウンドに降りてきて「前半は言うことなし」と神戸製鋼ファンに向かって語るほど完璧な内容。
私自身が前半40分間に取った取材メモも、以下のようなフレーズのオンパレードだった。
「K(神戸、以下同)がBD(ブレイクダウン)でTO(ターンオーバー、以下同)」
「K、LO(ラインアウト)でTO」
「K、モールでTO」
「K、T(東芝)ボールS(スクラム)でTO」

アウェーチームの東芝が青基調のセカンドジャージをまとっていたせいもあるかもしれないが、この日のコベルコスティーラーズの赤いジャージは強い時の東芝を彷彿とさせる……いやそれでは赤いジャージの伝統に失礼か。そう。まさしく強かった黄金期の神戸製鋼の姿を想起させる凛々しいものに、この日の赤いジャージの軍団はなっていた。

「ラインアウトからでもスクラムからでも取れる」(平島主将)

「後半になって、少し流れが悪くなった部分もあった」
最終的には、マン・オブ・ザ・マッチに輝くことになるSH佐藤貴志はそう語ったが、端から見ている限りは東芝がハーフタイムに「タックラーの責務を果たすこととボールキャリアがステップを切らずにまず相手に当たっていくこと」(和田賢一監督)という修正点を確認して臨んできた後半も、前半からの基本的な流れは変わらなかった。

象徴的だったのは、東芝が1トライを返して10-7で迎えた後半18分神戸製鋼WTB大橋のトライシーン。
自陣からフェイズを重ねながら攻めた神戸製鋼に対して、東芝は徐々に後退しながら自陣10m付近のラックで反則。
十分にPGを狙える場面だったが、PR平島久照主将はタッチキックを指示。このラインアウトをしっかりキープしてモールを押しだした神戸製鋼に対して東芝がコラプシングの反則。再び訪れた敵陣深い位置のPKで今度はスクラムを選択。ここでも東芝が反則をおかし、もう一度組み直したスクラムでもプレッシャーをかけた神戸製鋼は、スペースができたブラインドサイドをSH佐藤とWTB大橋の好判断で突いて、勝負の流れを決定づけるトライを奪ってみせた。

「最初はPGを狙おうと思ったんですけど、キッカー(SO山本大介)に聞いたら『自信がない』と言うので」と、平島主将は試合後、冗談まじりに(?)この時の判断について説明してくれた。
「前半にモールでトライが取れていたし、スクラムコントロールできていたので、正直どちらでも(ラインアウトでもスクラムでも)トライを取れるなとは思っていた。最初ラインアウトからのモールで相手が崩してきたので、それなら相手がスクラムからのアタックを嫌がっていたのはわかっていたし、揺さぶる意味でも警戒しているスクラムから取ってやろうと」

ここ2年間、勝てていなかった、強力FWを誇る東芝を向こうに回して何たる自信!
もちろん、それはすでにこの試合で60分近く戦ってくる中で掴んでいた確信でもあっただろう。
強力FWを誇る東芝のプライドをズタズタにするようなかたちで決定的なトライを奪った神戸製鋼は直後の23分にも、自陣深くからのカウンターでジェーソン・カワウ、フレイザー・アンダーソンのCTBコンビや途中出場していたHO安江祥光などの力強いランによって約90mボールをつなぎ最後は佐藤が東芝インゴールへ。
東芝も最後の5分間で2トライを奪う意地を見せたが、22-19というスコアからはちょっと想像できないほど、基本的には80分間、神戸製鋼が東芝の強い部分で圧倒し続ける内容の試合となった。

「このパフォーマンスができればトップ4に入れる。ここからもっとステップアップ、進化していこう」
試合後のロッカールームで苑田ヘッドコーチが健闘した選手たちをさらに鼓舞するようにそう語ったのも納得の、本当に久しぶりに"強い神戸製鋼"の復活を印象づけた会心のホームゲームだった 。

(text by Kenji Demura)

 

攻守に存在感を見せてマン・オブ・ザ・マッチに等しい活躍を見せた神戸製鋼WTB大橋は「今日は本当に楽しかった」とメンバー全員の気持ちを代弁
photo by Kenji Demura (RJP)

カワウ(手前中央)、F.アンダーソン(後方)のCTBコンビの突破力も大きなインパクトとなっていた
photo by Kenji Demura (RJP)

 

ゴールキックは不調だったが、落ち着いたプレーでグラントの穴を埋めたSO山本(中央)。FL橋本(右端)も前に出るプレーで貢献した
photo by Kenji Demura (RJP)

後半開始早々のFLリーチのトライ(写真)で10-7と追い上げた東芝だったが、強味のはずのFW戦で完敗した
photo by Kenji Demura (RJP)

 

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"復調"トヨタ自動車に5トライを浴びせてサントリーが快勝

トヨタが激しくくるのはわかっていた──。試合後、多くのサンゴリアスの選手が同じフレーズを口にした。24日、名古屋市瑞穂公園ラグビー場で行われた注目のトヨタ自動車ヴェルブリッツ対サントリーサンゴリアスの一戦は、時間の経過とともにブレイクダウンでの優勢が明らかになったサントリーが後半4トライを重ねて45-15で快勝。全勝を守った。
一方、トヨタ自動車-サントリー戦に先立って行われたヤマハ発動機ジュビロ-NTTドコモハリケーンズ戦は、後半30分までリードしたNTTドコモに対して、最後の10分に1トライ、1ゴール、1PGを決めたヤマハ発動機が逆転勝ち。その他、好調NECグリーンロケッツがNTTコミュニケーションズを下して6勝目、近鉄ライナーズが苦手の福岡サニックスブルースに12-5で粘り勝ち。Honda HEATはコカ・コーラウエストレッドスパークスとのアウェー戦で5トライを奪って昇格後初白星をものにした。

■トヨタ自動車ヴェルブリッツ 15-45 サントリーサンゴリアス(前半10-16)──12月24日

 
 

後半、小野澤のハットトリックなど計4トライを重ねたサントリーがトヨタの激しさを退けて貫禄勝ち
photo by Kenji Demura (RJP)

 あえて、最初に触れておいた方がいいだろう。

 この日のトヨタ自動車は本来のアグレッシブさを取り戻していた。

「ダイレクトプレーで前に出る攻撃的なラグビーを見せることができた」というHO上野隆太主将の試合後のコメントも、決して負け惜しみから出たものではなかったはずだ。

 実際、立ち上がりペースをつかんだのも、すでにシーズン中盤にして4敗を喫し、上位進出のためにはひとつも星を落とせない状況に追い込まれていたトヨタ自動車だった。

 4分、敵陣深くのラインアウトから鋭いモールを押し込んだ後、NO8菊谷崇がサイドを抜け出して先制トライ。SO文字隆也のゴールも決まって、トヨタ自動車が幸先よく7点をリードした。

 それでも、昨季、試行錯誤しながら「アグレッシブ、アタッキングラグビー」というスローガン通りのテンポのある攻撃ラグビーを完成させて日本選手権を制覇し、今季は開幕から唯一全勝を続ける強さを見せつけているサントリーは、先制パンチを食らってもまったく動揺はなかった。

「トヨタは激しくくると思っていた」(CTB平浩二)

 昨季の開幕ゲーム。まだ新しいスタイルが完成形からほど遠かったサントリーは、この日と同じアウェー戦でトヨタ自動車に完敗。

 それから1年3ヵ月後の対戦はサントリーにとってはリベンジ戦でもあり、今季不調のトヨタ自動車とはいえ、その底力も熟知しているだけに、抜かりはなかった。

「去年1年間の下積みもあるし、この1週間は練習でもいい雰囲気で、いい準備ができていた」(FB有賀剛)

 精神的にも盛り上がった状態でこの一戦に臨めていたサントリーは、原点に帰って激しく前に出ることに集中してきたトヨタの圧力をしっかり受け止めながら、時間の経過とともに試合の流れを自分たちのペースにもっていく、まさに王者にふさわしい力強さを見せていくことになる。

小野澤が今季初のハットトリック

「最初は我慢、我慢。ブレイクダウンで勝つことで、自分たちのプレーができるようになっていった」

 NO8竹本隼太朗主将の言葉通りに、サントリーは攻めようとするトヨタ自動車のアタックをしっかり守り、先制トライ以降は、すでに試合の趨勢が決まっていた後半39分までトライを許さなかった。

 逆に、攻め疲れてのトヨタ自動車のミスやここぞというブレイクダウンでのターンオーバーから攻め続けるスタイルで得点の山を築いていくことになる。

 前半9分、13分と、CTBニコラス ライアンがPGを決めて追い上げ、22分には自陣深くのターンオーバーから、FLジョージ・スミスが前に出た後、左展開してWTB小野澤宏時がタッチライン際を快走。敵陣22m付近でタックルを受けながらボールを内に返して、フォローしたCTB平、さらにSH日和佐篤とつないで逆転に成功(ニコラスのゴール成功で13-7)。

 さらに両チームがPGを加えて(サントリーが2本、トヨタ自動車1本)19-10とサントリーが9点リードで迎えた後半4分。前半も鋭いタッチライン際の走りで日和佐のトライを生んだ小野澤が試合の流れを決定づける大仕事をしてみせる。

 この日はLOのポジションに入っていたトッド・クレバーがトヨタ自動車のキックオフからボールキープして前進。ラックでのSH日和佐の素早い球出しから再びボールは一気に左タッチライン際にいた小野澤へ。

「疲れかもしれないんですけど、ヒザが痛くて」という理由で前節のコカ・コーラウエスト戦を欠場した昨季のトライ王は、1週間前にコンディションが悪かったことなど微塵も感じさせないエッジの効いた走りで、日本代表の相棒でもあるトイ面のWTB遠藤幸佑など、タックルに来たトヨタ自動車DF陣を次々に置き去りにする快走ぶりで、今季4トライ目を記録(ニコラスのゴール失敗で24-10)。

 さらに、小野澤は24分、40分とトライを重ね、今季初のハットトリックを達成。

 もちろん、小野澤のパフォーマンスは確かに素晴らしかったが、その小野澤自身が「厳しいところで仕事ができるようになってきた」と語ったとおり、サントリーは22人全員が自らの役割をキッチリこなした印象だった。

「最初の20分間が良くない点は克服できていない」(PR畠山健介)

 そんなふうにクリアすべき課題は残されているものの、昨季、試行錯誤を重ねながら、最終的には日本一の座を掴んだことを考えてみても「去年の同じ時点よりもチームの状態は全然いい」(SH日和佐)のは間違いないだろう。

 第8節を終えて、唯一の全勝チームとして新年を迎えるサントリー。

「(8節の中でも)いままでなら負けていた試合もあった。コミュニケーションが良くなって試合中に修正できる力もついてきた」(CTB平)

 昨季、苦しみながら頂点に立った自信を今季の快進撃につなげてきた真価は、年明けに控えるNECグリーンロケッツ、近鉄ライナーズ、東芝ブレイブルーパスという難敵との連戦で試されることになる。

(text by Kenji Demura)

 

トヨタの激しい圧力に負けずに前に出るサントリーFLスミスとフォローするNO8竹本主将、FL佐々木
photo by Kenji Demura (RJP)

サントリーWTB小野澤を激しいあたりで潰すトヨタ自動車LOナイカティニ。激しさを取り戻したトヨタに復活のきざしも
photo by Kenji Demura (RJP)

 

MOMにも選ばれたCTBサウの活躍もあって、ヤマハ発動機がNTTドコモを振り切り5勝目を挙げた
photo by Kenji Demura (RJP)

後半、途中出場したFBムリアイナのトライなどで再逆転したNTTドコモはあと一歩及ばず
photo by Kenji Demura (RJP)

 

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