トップリーグ2011-2012特集 TOPプレビュー&TOPマッチレポート「今シーズンのトップリーグはここを見よ!
昨シーズンに引き続き、トップリーグホームページでは、スポーツライターとして活躍中の永田洋光氏と村上晃一氏による毎節の見どころと、両氏およびその他第一線で活躍する豪華執筆陣によるマッチレポートをお届けいたします!

リーグ戦 第3節(11/12 - 11/13)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
11/12(土) 12:00 リコーブラックラムズ 53-0 Honda HEAT 秩父宮
11/12(土) 13:00 近鉄ライナーズ 35-16 ヤマハ発動機ジュビロ 近鉄花園
11/12(土) 14:00 NECグリーンロケッツ 29-26 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 秩父宮
11/12(土) 14:00 東芝ブレイブルーパス 73-7 NTTドコモレッドハリケーンズ 盛岡南
11/13(日) 13:00 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 10-17 サントリーサンゴリアス ユアスタ
11/13(日) 13:00 福岡サニックスブルース 27-34 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 本城陸上競技場
11/13(日) 14:00 パナソニックワイルドナイツ 43-17 コカ・コーラウエストレッドスパークス 熊谷

マッチレポート

仙台での熱戦はサントリーに軍配。MOMは地元出身の真壁

13日、トップリーグ第3節残りの3試合が行われた。前日の岩手・盛岡に続いて、東北地方太平洋沖地震の被災地である宮城・仙台で行われたNTTコミュニケーションズシャイニングアークス-サントリーサンゴリアス戦は、NTTコムのDFに苦しみながらもサントリーが17-10で勝利。一方、福岡・本城陸上競技場では神戸製鋼コベルコスティーラーズが福岡サニックスブルースを34-27で振り切り、埼玉.熊谷ラグビー場では昨季のトップリーグ王者パナソニック ワイルドナイツがコカ・コーラウエストレッドスパークスに43-17で順当勝ちした。

■NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス 10-17 サントリーサンゴリアス(前半0-10)──11月13日

 
 

MOMに輝いたLO真壁(写真右)やPR畠山(同左端)などの奮闘もあって、サントリーがNTTコムを退けた
photo by Kenji Demura (RJP)

 前日に盛岡で行われた東芝-NTTドコモ戦に続いて、東日本大震災で甚大な被害を受けた東北で行われた一戦。
地元・宮城県出身のPR畠山健介(気仙沼市出身)、LO真壁伸弥(仙台市出身)の日本代表組も所属するサントリーが登場するということもあって、ユアテックスタジアム仙台には5000人を超えるファンが集まった。
 スタンドには、招待された、畠山の出身ラグビースクールである気仙沼・鹿折RSの子供たちが掲げた『健介先輩 元気をありがとう!』という横断幕や、『元気いっぱいガンバリます 。ご支援ありがとうございました』という手作りのメッセージペーパーも掲げられるなど、会場全体が独特の温かさに包まれた雰囲気の中で試合は行われた。

「いいラグビーを見せて恩返しするつもりだったのが、横断幕までつくってもらって、逆に僕の方が勇気づけられて、胸が温まる思いだった」(畠山)
「いろいろあった後の初めての試合。地元出身ということもあってやるしかないという思いだった。いい感じで挑めました」(真壁)
 宮城県出身の2人の気持ちに代弁されるように、前半サントリーが押し気味に試合を進める。

 12分にCTBニコラスライアンのPGで先制した後、20分には畠山、真壁などの突破でチャンスを作った後、SOトゥシ・ピシ→CTBニコラス→FLトッド・クレバーとオフロードでパスをつないで10-0。
 そのままハーフタイムを迎えることになった。

NTTコムは貴重な勝ち点1を獲得

 この日のサントリーは、開幕から2試合連続で先発出場してきたFLジョージ・スミスとSH日和佐篤を控えに回し、先制トライを挙げたFLトッド・クレバーとSHフーリー・デュプレアが初先発。
 48時間前のメンバー発表時に先発予定だったFB有賀剛が再びヒザを痛めて出場できなくなったこともあって、本職はWTBの小野澤宏時がFBに入る、これまでとは少々異なるメンバー構成で臨んでいた。

「まだ開幕したばかりで、戦力の"深さ"を開拓していきながら、ベストの15人を模索しているところ」
 エディー・ジョーンズGM兼監督は、そんなふうにメンバー選考の意図を説明。
 あるいは、メンバーが代わってコンビネーションなどに微妙な影響が出た面もあったのか、攻め込みながらのミスも目立ったサントリー。
 ボールが滑ったことに加えて、NTTコムが激しく前にでるDFでプレッシャーをかけてきたことも影響して、ハンドリングエラーでチャンスを潰すシーンも目についた。
「前半だけで、あと2、3トライ取っていなければいけなかった。結果的にNTTコムを勢いづかせてしまった」(同GM兼監督)

 実際、後半に入ると、前半セットプレーとDFで健闘を見せていたNTTコムがチャンスをつかむケースが多くなる。
 後半開始早々に、SOクレイグ・ウィングが自陣深くでのタックルでボールを奪って、そのまま約80mを走り切る独走トライ。前半2本のPGを外していたFB栗原徹がゴールを決めて、NTTコムが10-7と3点差に迫る。
「とにかくDFで前に出続けていれば、僕らの時間も来ると思っていた」(NTTコムWTB友井川拓主将)
 まさに、試合はNTTコムのプランどおりと言っていい展開に。

 後半9分に、サントリーが敵陣深くのラインアウトからCTB平浩二がトライを決め、点差はいったんは10点差になったものの、それ以降はむしろNTTコムがサントリー陣に攻め込む時間帯が多くなる。
 後半24分には友井川主将自身がトライラインを越えたが、グラウンディングできずにトライが認められなかったり、決定的なチャンスは何度かあったが、サントリーも最後の一線を割らせることはなく、NTTコムの反撃を1PGのみに抑えて、17-10で開幕3連勝を飾った。

「仙台での試合ということで、見ている人をワクワクさせるような試合をしたいと思っていたんですけど、そういうプレーを見せられなかったのは残念」
 試合後の記者会見でNO8竹本隼太郎主将が申し訳なさそうな表情で語ったとおり、サントリーはやや消化不良の内容に終始。
 昨季、日本選手権を制した超攻撃スタイルの再現、そして進化には「まだまだこれから」(決勝トライを挙げた平)と、もう少し時間がかかりそう。
 一方、貴重なボーナスポイントを獲得したNTTコムにとっては、「ひとりひとりのポテンシャルは高いし、DFはしっかりできるようになってきている」(FB栗原とともに元所属チームと対戦したCTB山下大悟)と、前週の福岡サニックスブルース戦に続いてシーズン中盤から後半に向けて収穫の多い試合となった。
 尚、マン・オブ・ザ・マッチには、攻守にワークレートが高く、「ハートのあるプレーを見せてくれた」(サントリーのジョーンズGM兼監督)、地元出身の真壁が選ばれた。

(text by Kenji Demura)

 

この日は南ア代表SHデュプレアが来日初先発。後半、日本代表SH日和佐と交代するまで56分間プレーした
photo by Kenji Demura (RJP)

サントリーSOピシにプレッシャーをかけるNTTコムFLマーフィー(右)とSOウィング(左)。前に出るDFで善戦した
photo by Kenji Demura (RJP)

 

NTTコムFB栗原にタックルにいくサントリーWTB小野澤。フォローするNTTコムCTB山下、サントリーCTB平。かつてのチームメイト同士が火花を飛ばした
photo by Kenji Demura (RJP)

来年3月にオールスター戦「FOR ALL チャリティマッチ 2011」の開催も予定されているユアテックスタジアム仙台のスタンドにはサントリーPR畠山(写真右下)を勇気づける横断幕も
photo by Kenji Demura (RJP)

 

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岩手で前に進み続ける勇気を見せた東芝

12日、トップリーグ第3節4試合が行われた。東京・秩父宮ラグビー場では、リコーブラックラムズがHonda Heatに53-0で完封勝ちする一方、昨季6位のNECグリーンロケッツが同ベスト4のトヨタ自動車ヴェルブリッツに29-26で競り勝つ小波乱。注目された大阪・花園ラグビー場での全勝対決は地元の近鉄ライナーズがヤマハ発動機ジュビロに35-16で快勝し、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県での開催となった東芝ブレイブルーパス-NTTドコモレッドハリケーンズ戦は、前に出る圧力で圧倒した東芝が73-7で圧勝を収めた。

■東芝ブレイブルーパス 73-7 NTTドコモレッドハリケーンズ(前半38-0)──11月12日

 
 

80分間、前に出続けるラグビーを見せた東芝が11トライを奪う圧勝(写真は後半38分にトライを奪うなど活躍したCTB仙波)
photo by Kenji Demura (RJP)

「震災の直後には、とてもラグビーのことなど考えられる状態じゃなかった」
 これは、この日、東芝-NTTドコモに先立って行われたトップイーストリーグDiv.1に登場した釜石シーウェイブスFL佐伯悠主将の述懐。
 大震災発生から8ヵ月と1日後に盛岡南公園球技場に足を運んでいただいた約4000人のファンの方々の多くが、同じような思いを抱えていたかもしれない。
 間違いなく、2011年11月12日は岩手県の楕円球を愛する人々にとって記念すべき日となった。

 この日、盛岡を訪れた日本協会の森喜朗会長から「ラグビーファミリー」による義援金が岩手県協会に手渡されたこともあるが、何よりも、8ヵ月前に起きた大地震と大津波によって甚大な被害を受けた岩手県でラグビーができる喜びを体現してくれた両チームが見せた必死のプレーぶりも少なからず義援にはなったはずだ。
 ことに、昨季レギュラーシーズン1位の東芝が見せた、前へ前へと進み続けるプレー内容は、2011年3月11日以降、「ラグビー界として何ができるか」と模索してきた問いに対する、ひとつの答えだったような気もする。
「単なる13試合中の1試合ではなく、特別な試合であることを認識して、前に出る東芝らしいラグビーに自分たちのメッセージを込めて戦おうという気持ちだった」(東芝NO8豊田真人主将)
 あるいは、前節のコカ・コーラウエストレッドスパークス戦(34-14で勝利)が、ややふがいない内容だったことも、"東芝らしさ"を引き出すきっかけになったのかもしれない。
「原点に帰って、愚直に前に出ることにシンプルにフォーカスした」(和田賢一監督)という東芝は、80分間、接点で圧倒してボールを前に運ぶ圧倒的なパフォーマンスを見せ続けた。

 開始2分。敵陣深くのラインアウトからモールを押し込んでFLスティーブン・ベイツが先制トライ。5分にも、自陣からタテにゲインを切っていく東芝らしいアタックを続け、FLマイケル・リーチがトライラインを駆け抜けた。

特別な時期に特別な場所で試合をする責任を全う

「1対1のコンタクトの部分で東芝の方が1枚も2枚も上で、ファーストDFのところでことごとく破られてしまった」
 NTTドコモの高野一成ヘッドコーチを脱帽させるほど、前に出る圧力を見せた東芝の波状攻撃はとどまる気配すら感じさせず、13分に自陣10m付近のスクラムから豊田-SH藤井淳-WTB伊藤真とつないで相手ゴールに迫った後、ラックサイドをLO望月雄太が突破して3トライ目。さらに、24分にもスクラムでプレッシャーをかけて、最後はPR久保知大が飛び込み、早くもボーナスポイント獲得した。

 最終的には11トライを挙げての圧勝ぶり。
「みんな、東北で試合できるチームが4つしかない責任も感じていたし、先週のふがいなさを払拭したいという気持ちも強かった。個人的にはドコモには箕内(拓郎=元日本代表主将)さんがいるので、対戦を楽しみにしているというのもあったし、そういう、いろんな要素が東芝らしい、いいラグビーにつながった」
 試合後、東北(福島県郡山市)出身のLO大野均がホッとした表情で振り返ったとおり、この日の東芝が体を張って体現したのが、震災からの復興の歩を進めている岩手県の人々に何かを感じてもらえるようなパフォーマンスだったことは間違いないだろう。
 日本ラグビーのトップチームとして、2011年という特別な年に、東北・盛岡という特別な場所で東芝が見せてくれたパフォーマンスに、素直に敬意を表したいと思う。
 もちろん、今季、無冠返上を目指すブレイブルーパスにとって、次節、全勝対決となる近鉄戦に向けて、チームの求心力を高めるような内容になったことも確かだ。

 一方、初昇格のNTTドコモにとっては、トップリーグの洗礼を受けたかっこうとなった。
 WTB平瀬健志主将が「トップリーグのレベルを体感した試合。大敗にも得るものはあった」と語ったとおり、1対1のコンタクトやDFの整備など、ベーシックな部分を見直して残留への道筋を模索していくことになる。
 W杯で左肩を負傷した、新加入のNZ代表FBミルズ・ムリアイナに関しては、「(復帰の見通しは)まだ見えてこない」(高野ヘッドコーチ)とのことだった。

(text by Kenji Demura)

 

東北・福島県出身の東芝LO大野も岩手のファンに必死のプレーを見せ続けた
photo by Kenji Demura (RJP)

トップリーグの洗礼を受けたかっこうのNTTドコモ。DFを整備して残留へのキッカケを掴みたいところ(写真はWTB平瀬主将)
photo by Kenji Demura (RJP)

 

東芝-NTTドコモ戦に先立ってトップイーストリーグの釜石シーウェイブスーキヤノンの試合も行われ、多くのファンが盛岡南公園球技場に足を運んだ
photo by Kenji Demura (RJP)

女子ラグビーの試合や7人制日本代表の村田亙監督のクリニック(写真)なども行われ、岩手のファンにとってはラグビーを堪能できる1日となった
photo by Kenji Demura (RJP)

 

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