トップリーグ2011-2012特集 TOPプレビュー&TOPマッチレポート「今シーズンのトップリーグはここを見よ!
昨シーズンに引き続き、トップリーグホームページでは、スポーツライターとして活躍中の永田洋光氏と村上晃一氏による毎節の見どころと、両氏およびその他第一線で活躍する豪華執筆陣によるマッチレポートをお届けいたします!

リーグ戦 第1節(10/29 - 10/30)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
10/29(土) 12:00 リコーブラックラムズ 36-26 福岡サニックスブルース 秩父宮
10/29(土) 13:00 ヤマハ発動機ジュビロ 55-18 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス ヤマハ
10/29(土) 13:00 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 38-17 NECグリーンロケッツ 金鳥スタ
10/29(土) 14:00 パナソニック ワイルドナイツ 26-31 サントリーサンゴリアス 秩父宮
10/30(日) 12:00 Honda HEAT 19-19 NTTドコモレッドハリケーンズ 近鉄花園
10/30(日) 13:00 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 15-36 東芝ブレイブルーパス 瑞穂
10/30(日) 14:00 近鉄ライナーズ 32-16 コカ・コーラウエストレッドスパークス 近鉄花園

マッチレポート

東芝が前に出る圧力でトヨタを圧倒

30日、トップリーグ第1節3試合が行われた。昨季のプレーオフベスト4同士がいきなり激突した名古屋・瑞穂ラグビー場では、東芝ブレイブルーパスがトヨタ自動車ヴェルブリッツをFW戦で圧倒して、36-15で快勝。
一方、近鉄花園ラグビー場では地元の近鉄ライナーズが後半コカ・コーラウエストレッドスパークスを引き離して32-16で開幕戦を飾った他、昇格組同士の対戦となったホンダヒート-NTTドコモレッドハリケーンズ戦は両者譲らず19-19で引き分けた。

■トヨタ自動車ヴェルブリッツ 15-36 東芝ブレイブルーパス(前半3-15)──10月30日

 
 

FW戦で圧倒した東芝がトヨタに予想外の大勝(写真はMOMに選ばれたFLベイツ)
photo by Kenji Demura (RJP)

 「1対1にこだわってくる相手。トヨタが100%出さないと勝てない」(トヨタ自動車・朽木泰博監督)
「フィジカルが強く、自分たちのモチベーションを上げてくれる」(東芝・和田賢一監督)
 共に昨季のベスト4。しかも、両監督も認めるとおり、FWプレー、そしてブレイクダウンでのボール争奪戦に強いこだわりを持つライバル同士の顔合わせとなった開幕節第2ラウンドきっての注目カード。
 試合開始直前から雨が降り出したことで、このカードの特徴である“接点勝負"の様相はさらに色濃くなった。

 トップリーグきってのフィジカルバトルへの期待は高まる一方となったが、この日に限っては、その勝負どころへのこだわりは、東芝の方が上だった。
 滑る芝に足をとられたり、ボールが手につかない状況の中、とにかく近場、近場をこじ開けていくような東芝らしいアタックのオンパレード。
 元々、迫力十分だったFW陣は、W杯でも抜群のボールへの反応と、前に出る能力が世界規格であることを証明したFLマイケル・リーチが加わったことで、シャープさとアタックの多彩さが倍増した印象。

 前半13分に敵陣深くのラインアウトからモールをしっかり押し込んだ後、ショートサイドのWTB廣瀬俊明がトライ。
 2年目で初の開幕先発の座を勝ち取った成長株の東芝PR浅原拓真が「自分でプレーしながら、『東芝のモールは本当に強いな』と感じた」と驚嘆した"伝家の宝刀"は33分にも炸裂。敵陣22m付近からドライブし始めたモールはアッという間にトライラインに迫り、最後はSOデイビッド・ヒルが易々とDFのギャップをついて、点差を広げた。
「立ち上がりからボールキープできていたし、アタックしながら体をしっかり当てるプレーができていた」
 この日が監督として初の公式戦だった和田監督をして「安心して見ていられた」と言わしめるほどの東芝ペース。

 トヨタは21分にSO黒宮裕介のブレークから敵陣に攻め込んで、東芝DFラインのオフサイドを誘って、黒宮自身がPGを決めるのが精一杯。逆に、ハーフタイム直前に東芝SOヒルがPGを加えて、15-3で前半は終了した。

後半のトヨタの選手交代も実らず

「今年は激しさだけではなく、スマートな戦いぶりを見せたい」(朽木監督)
 そんな"新生ヴェルブリッツ"スタイルも模索する今季のトヨタ自動車だが、あまりスマートとは言えない東芝のガツガツとタテにくるアタックに、前半は防戦一方。
 後半開始と同時にSOを黒宮からオレニ・アイイに、CTBをブレッド・ガレスピーから山内貴之に入れ替えて、活路を見出そうとする。
「前半はアタックできていなかったので、選手たちには『とにかく攻撃的にいこう』と伝えたし、選手交代もそういうメッセージを込めた」(朽木監督)
 元々、黒宮-ガレスピー-スティーブン・イェーツというフロントスリー(10-12-13)が先発したのは、CTB陣のボールキープ力を生かして、攻守ともダイレクトプレーでまずは主導権を握っていく意図があったというが、前半、雨という条件を踏まえたキッキングゲームがうまく機能せず、安易にボールを与えたことで、東芝の前に出る力を引き出すかっこうになった。
 その結果、後半の選手交代も後手に回った印象は拭えなかった。

 実際、後半に入っても東芝の前に出る勢いはいっこうに収まらず、11分に三たび敵陣深くでモールを押し込んだ後、SOヒルが逆サイドにキックパス。最後は、立川剛士のケガもあって、この日はFBに入っていた宇薄岳央がこぼれ球を押さえてリードを広げた(SOヒルのゴール成功で22-3)。
 ようやくトヨタも15分に、WTB松下馨が自ら足にかけたショートパントを拾って1トライ(記録上は松下への東芝CTB仙波智裕のアーリータックルによって、認定トライに)を返したが、直後の18分に四たびモールからFLスティーブン・ベイツが飛び込んで東芝がボーナスポイントを獲得。さらに、26分にもヒル、ベイツの突破から宇薄がダメ押し過ぎる5トライ目を奪って、最終的には36-15という予想外の大差で、東芝がライバルを圧倒しての開幕白星を飾った。

「FWが前に出られたし、15人でアタックし続ける東芝らしいラグビーができた」(東芝NO8豊田真人主将)
 接点で圧倒して前に出始めた時、このチームを止められる相手はいない─スマートな戦いを模索する緑の集団を力技でなぎ倒していく赤黒軍団の強さばかりが印象に残る昨季ベスト4同士のファーストゲームだった。

(text by Kenji Demura)

 

80分間、攻守にとてもTL初登場とは思えない存在感を示し続けた東芝FLリーチ
photo by Kenji Demura (RJP)

激しいフィジカルバトルが期待されたが、接点で上回った東芝が終始圧倒した
photo by Kenji Demura (RJP)

後半15分、トヨタWTB松下がトライを奪い(認定トライ)。追い上げたが、時すでに遅し
photo by Kenji Demura (RJP)

 

 

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パナソニックの猛追を振り切り、サントリーが昨季ファイナルのリベンジ

29日、トップリーグ(TL)が開幕。東京・秩父宮では昨季のファイナリスト同士で、TL覇者のパナソッックと日本選手権王者のサントリーがいきなり対戦。後半9分までに28-9とリードしたサントリーが終盤パナソニックの反撃を振り切って31-26で勝利。4年ぶりのTLタイトル獲得へ向けて幸先のいい1勝を挙げた。

パナソニック-サントリー戦に先立って行われたリコー-福岡サニックス戦はSOタマティ・エリソンの個人技が光ったリコーが後半のサニックスの追い上げを凌いで36-26で勝利。また、静岡・磐田では清宮克幸新監督率いるヤマハ発動機がNTTコムに55-18、一方、大阪では神戸製鋼がNECに38-17と、それぞれ快勝スタートを飾った。

■パナソニック ワイルドナイツ 26-31 サントリーサンゴリアス(前半9-16)──10月29日

 
 

W杯でも活躍したサントリーSH日和佐はテンポのいい球さばきで高速アタックを牽引し続けた
photo by Hiroyuki Nagaoka (RJP)

 昨季はトップリーグ・プレーオフと日本選手権、2大タイトルをかけた両方の決勝で対決し、タイトルを分け合った宿敵同士。かたや三洋電機からパナソニックへのチーム名変更に伴い、赤から青へ。こなた、より「強さ」を強調しようと黄色から黒へ。ともにジャージーを一新して迎える新しいシーズン。しかし、宿命のライバル対決は、やはり互いの持ち味を出し切った、スリリングな攻防の連続だった。

 序盤、先手をとったのはパナソニックだ。ゴムで編んだ網のような、伸縮自在のディフェンスが、どこからでも攻めようとするサントリーのアタックを包み込む。4分、昨季のプレーオフMVP山田章仁がトイメンの長友泰憲に猛タックルを浴びせて反則を奪い、一昨季のTL得点王FB田邉淳が左隅40mの先制PGを蹴り込んだのを手始めに、序盤はPGの応酬。前半28分までに9対6とパナソニックがリード。

 ゲームが動いたのは33分だ。サントリーSH日和佐が自陣ゴール前からハイパントを蹴り、CTBニコラスが長身を活かしてスーパーキャッチ。そこからSOトゥシ・ピシ、WTB小野澤宏時、FL佐々木隆道が左に右に大きくゲインを重ね、最後はFBヒューワット→CTB平浩二→LO篠塚公史と連続オフロードが回り、長身LOがトライラインを超えた。
 このトライをきっかけに、試合はサントリー優勢の時間帯へ。37分、パナソニックはFB田邉がプロフェッショナルファウルでシンビン処分。サントリーは、すぐにヒューワットがPGを蹴り込み、リードを16対9と広げて折り返す。

後半早々の“電光石火"で流れをつかんだサントリー

 ハイライトは、数的優位で迎えた後半最初のプレー。サントリーが蹴ったキックオフを、再びニコラスが腕を伸ばしてタップバック。佐々木が確保したボールをピシ、平が連続ゲインで相手ゴール前に持ち込むと、クイックラックから素早く左展開。CTBニコラスのパスを受けた佐々木がそのまま左中間インゴールに突き刺さった。観客席に向かってボールを放り上げ、大きく腕を突き上げる佐々木。キックオフからわずか22秒。電光石火の早業に、スタンドがどよめく。

「プレシーズンの試合で課題だったのが前半も後半も『入り』が良くなかったこと。だからハーフタイムに、みんなで『集中して(後半に)入ろう』と話していたところだったんです」
 佐々木が喜んだ理由はもうひとつあった。
「あの場面、以前の僕なら、その前のポイントに行っていた。ボールを出さなきゃという意識が強すぎたから。今は周りの状況を見て、最も効果的なプレーに自分の力を使うようにしているんです。その方がチームに貢献できる。ジョージ・スミスに一緒に試合のビデオを見てもらって、プレーの視野が広がった」
 サントリーは9分にも、スクラムからピシ→ニコラスのコンビでトライ。28対9までリードを広げる。
 しかし、名勝負を重ねてきた両雄の決着が、これでつくはずはなかった。

 13分、パナソニック堀江翔太のタックルがサントリーFLジョージ・スミスのファンブルを誘う。すぐに反応した若松からのタップバックを受けたCTB野口裕也は、カウンターに出て右の翼、北川智規へボールを送る。トイメンは昨季まで2年連続トライ王の小野澤。北川はその前に3年連続トライ王。TL過去5年間のトライ王の直接対決、制したのは北川だった。内から押してくる小野澤に対し、一瞬フェイントをかけ、一気の加速で振り切り60mを走りきった。

 さらに21分、帝京大から加入の新人NO8ヘンドリック・ツイの突破を起点にHO堀江が左中間トライ。23分には田邉のカウンターから絶好のトライチャンスを作りながら山田が落球。追撃ムードに水を差したかと思いきや、26分には田邉がPGを決め、26対28まで肉薄する。しかし、防戦一方だったサントリーもヒューワットのPGで5点差に戻す。そして最後の攻防。

 37分。パナソニックSOデラーニがステップ、スピンを駆使して相手タックルを突破し、トライラインに迫る。密集内のノックオンでチャンスを逸したかに見えたが、サントリーボールのスクラムを猛プッシュで取り返す。最後はギリギリでサントリーが逃げ切ったが、ボールの転がりひとつで勝負が入れ替わるような、紙一重の質の高い攻防。
今季のTLもこの両雄を軸に進みそうだ……そんな予感を覚える80分間だった。

(text by Nobuhiko Otomo)

 

新たにサントリーに加わった元豪州代表FLのG.スミスも相変わらずの仕事人ぶりを見せた
photo by Hiroyuki Nagaoka (RJP)

ルーキーながら存在感を示したパナソニックのヘンドリック・ツイ
photo by Hiroyuki Nagaoka (RJP)

2トライを挙げたLOカウヘンガの活躍などでリコーがサニックスの追撃を振り切って開幕白星スタートを飾った
photo by Hiroyuki Nagaoka (RJP)

 

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