番狂わせありクロスゲームありの前節で、一気に順位争いが激化したトップリーグ。
今週末の見所は、わずかな勝ち点で順位を競り合うチーム同士の直接対決だ。
7試合中、順位逆転可能な勝ち点差3以内のチーム同士の対戦が4試合。
プレーヤーのみならず、サポーターもいつも以上に力が入る週末となる。
前節NTTコムにまさかの敗戦を喫したトヨタはSOアイイ(写真 右)を中心にアグレッシブさでサニックスの攻撃力を封じたいところ |
まずイチ押しは、3位vs4位が激突する福岡サニックスブルース対トヨタ自動車ヴェルブリッツ(16日14時、福岡・グローバルスタジアム)。もちろん、お目当てはサニックスWTBカーン・ヘスケスの破壊力。サニックスは、失点127(リーグ9位)と防御力ではトヨタの後塵を拝するが、総得点が149で(同4位)トヨタを5点上回り、トライ数でも22-19と優位に立つ。つまり、チームとしての破壊力も抜群なのだ。
一方、これまで5試合で失点61と堅守を誇る(同2位)トヨタは、中山義孝主将を筆頭にアグレッシブかつ破壊的なタックルで、ヘスケス以下の攻撃を食い止める。
もう1つ、このカードで見逃せないのが、攻撃のタクトを振る司令塔対決。
サニックスは、3年前に弱冠19歳で日本代表に抜擢され、W杯の舞台を踏んだCTB小野晃征が攻撃を司る。小野は今季、絶妙なスペース感覚を発揮して成長著しい。
対するトヨタは、蹴って良し走って良しパスして良しのSOオレニ・アイイが多彩なメンバーを走らせる。トヨタは、前節でNTTコミュニケーションズシャイニングアークスに敗れて連勝が4で止まったが、朽木泰博監督は「結果に一喜一憂しないでより高いレベルを目指す」と意気軒昂。地元のサポーターの熱い声援を受けるサニックスに、真っ向勝負を挑む。
こちらは怪物第3列の対決に注目
次なる注目カードは、大阪・花園ラグビー場で行われるヤマハ発動機ジュビロ対神戸製鋼コベルコスティーラーズ(16日14時キックオフ)。
神戸は前節で、コカ・コーラウエストレッドスパークスに逆転勝ち。3試合連続逆転負けという嫌な流れを断ち切った。一方のヤマハは東芝ブレイブルーパスに20-54と完敗したが、堀川隆延監督は「初心に返って、神戸戦に向けていい準備をしたい」と捲土重来を期す。
神戸は、現在トライ数4で首位と1差のFLパスカ・マパカイトロが攻撃の核。これを迎え撃つのが、ヤマハNO8モセ・トゥイアリイ。トゥイアリイは、東芝戦で驚異的な身体能力を発揮。防御を切り裂いて東芝を慌てさせた。2人のどちらが本領を発揮するか──そこが勝負の分かれ目となりそうだ。
17日に埼玉・熊谷ラグビー場で行われるサントリーサンゴリアス対コカ・コーラウエストレッドスパークス(14時キックオフ)は、ここ2節惜敗が続いたコカ・コーラが、2試合で126点と下位チームから大量点を奪ったサントリーに挑む。破壊力を発揮すればめっぽう強いサントリーが、コカ・コーラに粘り強く守られるとどうなるか。「アタッキング・ラグビー」の真価が問われる。
13位vs14位対決のクボタスピアーズ対豊田自動織機シャトルズ(16日12時 東京・秩父宮ラグビー場)は、ともに上位浮上へ絶対に負けられない試合。特に、今季まだ勝ち星のないクボタは何としても初勝利をつかみたい。熱い戦いになること間違いなし。
貫禄さえ感じさせるプレーでサニックスのミッドフィールドを支えるCTB小野。WTBヘスケスを生かすゲームメイクでトヨタを脅かしたい |
190cm、110kgの巨漢を生かした突破力で神戸の核弾頭となるFLマパカイトロ。神戸は前節2勝目を挙げた勢いをヤマハ戦にぶつけられるか |
第3節の近鉄戦(写真)以来の2勝目をものにしたいコカ・コーラウエストは、原点であるDF力でサントリーのアタックを封じることができるか? |
西浦達吉
(コカ・コーラウエストレッドスパークス)
◇まだまだ"桜"も狙う、本場仕込みの「雑草系仕事人」
西浦達吉(にしうらたつきち)◎都城泉ヶ丘高校→福岡大学→コカ・コーラウエストレッドスパークス。PR。176cm、108kg。 |
2007年のフランスW杯に出場するなど、日本代表として17キャップを誇る大ベテランプロップ(PR)が"タツキチ"こと西浦達吉。
経験が生きるポジションだけに、34歳になったいまもそのスクラムワークなど、FW最前列で相変わらずの仕事人ぶりを発揮している。
元々、ラグビーエリートではない。
宮崎県都城市出身。かの東国原県知事の出身校でもある都城泉ヶ丘高校時代にラグビーを始めているが、理由は「柔道部がなかったから」。
それでも、高校時代にすでに専門誌を隅から隅まで読み込むほどラグビーにのめり込むようになり、福岡大時代は3、4年時に大学選手権に出場したものの、卒業時にトップチームから声がかかることはなく、いったんは福岡県社会人リーグ所属の安川電機に就職。
「これから強くしていく意志があるチームだったので力になれたらいいな、と」
ただし、「小さい頃から何をやっても続かなかったのに、唯一続けられたラグビーを極めたい」という欲求が日に日に高くなり、安川電機は2年で退社。「日本のトップチームから声がかからないなら、世界一のところに行っちゃえ」と、00年にいきなり単身ニュージーランド行きを敢行。クラブチームでプレーしつつ、3部ながら州代表としてかのNPC(NZ国内選手権)でプレーする貴重な経験も積んだ。
本場で武者修行中の02年にコカ・コーラウエストから声がかかり帰国。「その時からすでにジャパンに選ばれることを目標にしていた」というとおりに、04年に初キャップを獲得した。
ここ2年間は代表とは縁がないが、今季第3節で近鉄に競り勝った後に声をかけると「平島(久照、神戸製鋼PR=日本代表)ケガしたらしいですね」と、不敵な笑みを浮かべて聞いてくるなど、来年第2の故郷で開かれるW杯ニュージーランド大会出場の希望も捨て切ってはいない。
百戦錬磨のスクラムワークと、本場仕込みとも言える密集周辺での相手の嫌がるプレーで、目の肥えた九州のファンをうならせ続けている。
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土佐誠
(NECグリーンロケッツ)
◇入社2年目の“新人"3列は、スケールのでかいオールラウンダー
土佐誠(とさまこと)◎尾道→関東学院大学→オックスフォード大学→NEC。FL/NO8。187cm、104kg
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粘り腰。いや、素直に「強靱な足腰」と言った方が正確かもしれない。
土佐誠が防御ラインを突破するのは、たいていタックルを受けた直後。倒れそうな身体を何とか保ち、トドメを刺そうとするセカンド・タックラーの衝撃にも耐えて、ボールをつなぐ素振りを見せる。が、そこから強引に足を抜いて、とっとっとっ……とたたらを踏むように走り出す。
ボールに群がったディフェンダーは、態勢を立て直して急加速する土佐に意表を突かれて置き去りにされ、ゴール前へと背走を余儀なくされる。「足腰の強さはチームのなかでもNo1」(岡村要ヘッドコーチ)という、土佐の持ち味が最大限に生かされる瞬間だ。
第2節のクボタスピアーズ戦では、まさにその通りのラインブレイクからチャンスを作り、第4節の東芝ブレイブルーパス戦でも孤軍奮闘。しばしば東芝防御を突破した。
といっても、攻撃オンリーの突破型では決してない。
ラインアウトで、密集戦で、ディフェンスで、骨惜しみなく身体を張り、地味な働きをいとわない。それが土佐の真骨頂なのである。
「チームでは3列はプレーのバランスが大切だと言われています。だから、自分でもバランスが偏らないように心がけています。ようやくそういうチームの規律に慣れてきたところですね」
土佐が思い描く「強いチーム」も、規律をしっかり守るチームというイメージだ。
「トップリーグは、個人で何とかしようというのではなく、チーム全体で規律を守って戦う意識を持っている。レベルが高くなればなるほど、個人の力に頼っていては相手にやられてしまうから、本当にどのチームも強いと思います。レベルもすごく高い」
入社1年目の昨シーズン、土佐は英国オックスフォード大学に留学して12月に行われたケンブリッジ大学との定期戦「バーシティマッチ」に出場。念願の「ブルー」を獲得した。
だから、今季が土佐のトップリーグファースト・シーズンである。