強烈な残暑のなかでの開幕から1ヶ月。第3節終了時点で3連勝と無傷でいるのは首位の三洋電機ワイルドナイツと2位のトヨタ自動車ヴェルブリッツのみ、という大混戦となった。1週間のインターバルをおいて1日から始まる第4節は、各チームの修正力が最大の見所。どのチームが序盤3試合の課題を上手く修正したか。それが10月の戦いを占うカギになる。
ラストシーズンを駆け巡れ、大畑(神戸製鋼コベルコスティーラーズ) |
修正能力という点で注目したいのが、1日(金)のNECグリーンロケッツ対東芝ブレイブルーパス戦(19時30分 秩父宮ラグビー場)だ。
ともに開幕戦に敗れながら連勝して東芝は3位、NECは5位につけているが、上位確保のためには何としても負けられない一戦。たとえ敗れるにしても、4トライ以上挙げて7点差以内に食い下がって勝ち点2をゲット──というのが絶対に譲れない最低線だろう。
東芝は、第2節のNTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦に33-28と思わぬ苦戦。和田賢一コーチは「これで月末のインターバルにみっちりと鍛え直すことができる」と宣言。「一体感がなかった」(廣瀬俊朗主将)チームがどう修正されたかに期待が高まる。
一方のNECは、第3節でサントリーサンゴリアスを25-20と破った勢いを東芝に叩きつける。ただ、後半に次々と反則をとられてサントリーに追い上げられるなど、ブレイクダウンでのペナルティが課題。身上の防御力を上げるためにもチームに規律が求められる。
◆グラウンド開放ファン交流会は"是非モノ"のおすすめイベント
第4節のもう一つの注目カードは、3日(日)に加古川市で行われる神戸製鋼コベルコスティーラーズ対近鉄ライナーズ(13時 加古川運動公園陸上競技場)。
こちらは、開幕戦を白星発進しながら連敗したチーム同士が、再浮上のきっかけを求めて激しく戦う展開になりそうだ。特に神戸は、福岡サニックスブルース戦、トヨタ戦と2試合続けて先制しながら逆転された嫌な流れを断ち切りたい。近鉄に対してTLでは過去4戦全勝と相性はいいが、果たして?
今季は、勝利チームに「阪神ダービー杯」や「加古川市長賞」が贈られるなど、試合全体を盛り上げるイベントが多く用意され、お祭りムードも満点。
特に、表彰式終了後に行われる「グラウンド開放ファン交流会」は、海外ではよく見られるが日本ではなかなか体験できないイベントだ。
95年の第3回W杯(南アフリカ)でも、試合終了と同時にボールを持った子どもたちがグラウンドに雪崩れ込み、いつまでも飽きることなく楕円球を追いかけていた。
つい先刻まで選手たちが激闘を繰り広げた芝生に立つのは、格別な経験なのだ。
加古川でも、スタンドからとはまったく違う"ラグビー体験"ができることは請け合い。
ぜひラグビー・ボール持参での観戦をお勧めする。
サントリーを破り上昇気流に乗るNECを王者・東芝はどう迎え撃つのか(写真は開幕からレギュラーポジションを確保しているWTB宇薄) |
序盤戦はSOとして起用されることの多いNECロビンス。攻守に切れ味鋭いプレーぶりでチームに勢いをつけている |
開幕戦勝利の後、内容の良くないゲームが続く近鉄。神戸との関西ダービーを制して勢いに乗れるか? |
ライアン・ニコラス
(サントリーサンゴリアス)
◇NZ生まれのジャパンが挑むオーストラリア流(?)ラグビー
ライアン・ニコラス(Ryan Nicholas)◎タウランガボーイズ高校→オタゴ大学→ハリケーンズ→サントリーサンゴリアス。CTB。192cm、100kg。日本代表キャップ23 |
トヨタ自動車ヴェルブリッツとの開幕戦でプレースキックのフォームを変えた。
左手を身体の前に大きく突き出してから助走に入る特徴的なフォームが、それほど手を突き出さない地味な(?)フォームに変わったのだ。が、結果は失敗。
第3節のNECグリーンロケッツ戦ではフォームを元に戻して1G2PGを決めた。
「開幕前にフォーム改造をしたんだ。もっとコンスタントにボールをミートして、コントロールが効くようにね。でも、練習では調子が良かったけど、試合では失敗だった(笑)」
NEC戦では先制トライも挙げる活躍だったが、エディー・ジョーンズ新監督が提唱する「アタッキング・ラグビー」が不発に終わり、チームは20-25と敗れて8位に沈んだ。
これまで突破役として身体を張ってきたニコラスには、母国のライバル・豪州出身監督のラグビーはやりにくいのだろうか?
「いや、豪州流というより、基本的なことを大切にするラグビーなんだ。新しいルール解釈に適応する意味もある。苦戦の原因は基本的なこと。ミスが多いし、ブレイクダウンで当たり負けている。シーズンが深まれば選手に自信も生まれて、チームの状態は上がると思う。目標は、今でも日本一で変わらないよ」
一方でニコラスは、来年のW杯で「2勝以上」を目標に掲げる日本代表の中核選手。この6月にはアウェーでサモア、トンガに連勝し、チームは上り調子だ。
「もちろん、来年のW杯は楽しみにしている。母国でNZ代表とテストマッチを戦うことにはとても興奮する。でも、僕の今のホームは日本。日本のために身体を張るつもりだ。
ただ、正直に言えば、今はW杯のことをまったく考えていない。まずサントリーで日本一を勝ち取ること。そこに集中すれば、自然に来年のジャパンに選ばれることにつながるからね」
アタッキング・ラグビーで昨季よりもパス回数が増えること必至のCTBは、トップリーグでの挑戦から新たな収穫をつかんで、母国開催のW杯に乗り込む意気込みだ。
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君島良夫
(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス)
◇TLにデビューした「日本人の10番」にこだわるSO
君島良夫(きみしまよしお)◎清真学園高校→同志社大学。SO。176cm、80kg。U19日本代表。1984年1月13日生、26歳。
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清真学園高校時代に花園で鮮烈な印象を残しながら、同志社大学時代は負傷に泣いた。
しかし、26歳になった今年、チームのTL昇格とともにラグビー界の第一線に戻ってきた。
君島良夫。NTTコミュニケーションズシャイニングアークスの司令塔。
今季開幕戦に敗れたNTTは、翌週の東芝ブレイブルーパス戦で4トライを奪う大健闘を見せて秩父宮の観客を魅了。一躍注目の的となる。元豪州代表のFBマーク・ジェラード、サントリーから移籍したCTB山下大悟にWTB栗原徹……バックスには"ビッグ・ネーム"が顔を揃えるが、彼らを自在に走らせ、抜群のゲーム・コントロールを見せるのが、この君島だ。
第3節のクボタスピアーズ戦では、前半4分にスルっと防御の裏に出てジェラードの快走を引き出し、22分にも、内側に走り込んだWTB友井川拓に絶妙のパス。どこか懐かしいジャパン・テイストを感じさせるプレーで、チームをTL初勝利に導いた。
「FWをコントロールし、攻撃の方向性を決めるのが僕の仕事。トップリーグには日本人の10番が少ないので、そういう仕事にこだわりたい。でも、周りがみんなすごいから誰にパスしてもいい(笑)。その点では楽しいですね」
小学校入学以前から熱中していたサッカーで磨いたキック力も君島の武器。
第3節終了時点で7G6PGの32得点を挙げ、ランキングでもトヨタ自動車ヴェルブリッツのオレニ・アイイと並ぶ4位タイ。堂々上位に入っている。
「キックに関してチームから求められる水準は高いし、それを当たり前にこなさないと信頼感を得られない。攻撃もそうです。でも、信頼感が得られれば、身体の小さな僕をチームのみんなが守ってくれる。今は味方に守られて仕事ができているんだと、実感しています」
この週末、現在7位のNTTは首位の三洋電機ワイルドナイツに挑む。それは君島にとっても最高のチャレンジだ。何しろトイメンは、あの人──そう、トニー・ブラウンなのである。