第2節は、くしくも前節の敗者同士、勝者同士の対戦が目白押しとなった。今季初勝利を巡る敗者同士の激突、連勝して波に乗りたい勝者対決──いずれも目が離せない熱い戦いになりそうだ。今週は、そのなかから2つのカードをピックアップして、見所をプレビューする。
この季節のゲームは、ご存知のように汗で滑りやすくなったボールをいかに上手く扱うかが焦点。必然的に、落球のリスクを避けて各チームともキックを多用することになる。
クボタスピアーズ対NECグリーンロケッツ(11日17時キックオフ=秩父宮ラグビー場)の見所も、キックとその処理の巧拙。いや、極論すればSOシェーン・ドゥラーム対NEC防御の対決と言えるかもしれない。
昨シーズンの開幕戦で両チームが対戦したときは、クボタがドゥラームの大活躍で29-11とNECを退けた。この試合のドゥラームは、キックだけではなくランニングにも非凡なセンスを見せて防御を攪乱。それが、勝負の分岐点となった。
今季から指揮をとるクボタの佐野順監督は、「ウチはキック中心というイメージを持たれているので、ボールを展開できるスペースがグラウンドに生まれるはず。キックと展開のバランスが上手くとれればチャンス」と、防御に迷いを生じさせてその隙をつく考えだ。
一方のNECは前節でヤマハ発動機ジュビロを相手にいい形で先制しながら、ブレイクダウンで反則を多発。半ば自滅した。NECのバックスリー(両WTBとFB)がヤマハのキックに上手く対応できず、自陣で戦う時間が長くなったことも、その要因の一つ。
背後にボールを蹴られたときに、NECのFWがどこまで機動的に戻ってバックスをサポートできるか。両チームの持ち味である、ブレイクダウンでの激しい攻防と併せて注目したい。
◆好調同士が富山県で初対戦
富山県で初めて行われるトップリーグ公式戦、神戸製鋼コベルコスティーラーズ対福岡サニックスブルース(12日15時キックオフ=富山県総合運動公園陸上競技場)は、ともに開幕白星発進の好調同士の対戦だ。
大畑大介の“開幕前引退宣言"が刺激になったのか、神戸製鋼は昨季15-16と苦杯をなめたクボタに34-3と快勝。
開幕前のトップリーグカンファレンスで苑田右二ヘッドコーチは、「(昨季トヨタ自動車ヴェルブリッツから移籍した)正面健司など、昨シーズンくすぶっていた選手たちのエネルギーが爆発するのでは」と話していたが、03年度に初代王者となって以来4位から6位の間が定位置となりつつあったチームの“くすぶり"まで爆発させたかのように、6トライを浴びせかけた。
苑田HCが目指すのは、「人とボールが動く神戸らしい変幻自在なラグビー」。
対する福岡サニックスブルースも、人とボールをよく動かすラグビーが評判だ。
開幕戦では、コカ・コーラウェストレッドスパークスとの“福岡ダービー"を、8-17とリードされながら最後の5分間に2トライ2ゴールを奪う大逆転で制し、波に乗っている。
藤井雄一郎監督のもと「春からいち早く厳しい練習に取り組んだ」成果のフィットネスで、神戸に走り勝つ考えだ。
両チームの昨シーズンの対戦は12-9で神戸が勝利を収めたが、今シーズンは華麗な“トライ合戦"が見られそうだ。
昨季開幕戦ではクボタに敗れたNECだが、ワイルドカード戦では劇的な逆転勝ちでリベンジ(写真)。抜群の統率力を誇るNO8ラトゥ主将(中央)が今季初勝利に導く? |
「キックだけじゃない」クボタはNEC相手にどんなラグビーを見せるのか。大黒柱SOドゥラームのゲームメイクにも注目だ |
変幻自在なランニングラグビーで神戸製鋼にチャレンジするサニックス。"ミスターサニックス"FB古賀龍二は落ち着いたプレーで最後尾を締める |
五郎丸歩
(ヤマハ発動機ジュビロ)
◇TL記録を蹴り出したゴールデン・ブーツはチームの大黒柱
五郎丸歩(ごろうまるあゆむ)◎佐賀工業高校→早稲田大学→ヤマハ発動機ジュビロ。FB。185cm、97kg。日本代表キャップ10
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「キャプテンには、可能性は五分五分ですと伝えたんですけど、返事は“いいよ”と。それで気持ちを楽にして蹴ることができました」
3点刻みの反撃は後半に入るとさらに観客の心をつかみ、五郎丸がボールをプレースするたびに場内にブーンという、高圧電流にも似た音が鳴り響いた。興奮した人間の集団が醸し出す独特の圧力だ。
後半24分に8本目のPGを決めてTLでの1試合最多記録をマーク。続く32分には矢富勇毅のトライをアシスト。文句なしのマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。
「開幕戦に勝てたことが大きかった。チームにいろいろあって部員の数も減ったけれども、サポーターの声援は逆に今年の方が大きかったように感じました」
昨季、会社が選手とのプロ契約を廃止する方針を打ち出したときも、五郎丸は最初から「ヤマハでやりたい気持ち」で変わらなかった。現在は、テレビなどに提供する広報車両(主としてオートバイ)の管理を仕事にしているが、開幕戦には職場の人たちが駆けつけて声援を送ってくれた。それもTL記録を生んだ一因だった。
「来年のW杯に出たい気持ちはあります。憧れですから。でも、まずは自分のチームで結果を出すこと。代表は、結果を出せばついてくると思います」
今年6月の日本A代表のヨーロッパ遠征で薫田真広監督から高い評価を得た大型FBは、まずチームへの貢献を口にする。その目標を達成することが、そのまま「80分間のプレーからムラをなくせ」とアドバイスしてくれた、ジョン・カーワン日本代表ヘッドコーチへのアピールとなるからだ。
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トップリーグで活躍し、日本代表としても活躍している、外国人選手(帰化選手含)をピックアップ! 皆さんにもっと、「外国人選手だけど、気持ちは日本人選手と変わらない。日本を背負う選手たち」をご紹介します。 これを読んで、トップリーグで活躍する選手たちに、熱いご声援を!! まずは、三洋電機ワイルドナイツ・『コリ』こと、ホラニ龍コリニアシ選手です。 コリは、トンガ出身で、現在日本国籍を持ち、日本代表には欠かせないFWの軸となる選手。 コリ選手をピックアップ!!
ホラニ龍コリニアシ
(三洋電機ワイルドナイツ)
◇ラグビーに関しては100%メイド・イン・ジャパン
1981年10月25日生まれ。トンガ・コロモトゥア出身。188㎝、112㎏、埼玉工大深谷高→埼玉工大→三洋電機入り。NO8/FL。日本代表キャップ12
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トンガ生まれだが、母国でのラグビー経験はない。
「トンガではトロンボーンに夢中だったし、お母さんがラグビーをさせてくれなかった」
そんな、南の島の音楽少年だったコリニアシを、日本、そしてラグビーに導いたのは、叔父さんにあたるノフォムリ・タウモエフォラウさん。かつて三洋電機に所属し、日本代表としても15キャップを獲得。第1回のW杯にも出場した名WTBだ。
早くからコリニアシの身体能力の高さに注目していたノフォムリ叔父さんは、アンチラグビー派だったホラニ母を説得。15歳で埼工大深谷高校(現 正智深谷高校)への留学が決まった。
「だから、ラグビーに関しては完全にメイド・イン・ジャパン」
トンガ出身選手というと、ボールを持っての突破力に特徴がある選手が多いが、“コリー"ことホラニはボールを持たない時のプレーぶりにも特徴がある。
「中身は完全に日本人です」と、ホラニを評価するのは、三洋電機の先輩FW(PR)相馬朋和。
確かに、時には相手も壊して自分も壊れるほどのハードヒットには南太平洋のDNAを感じさせる部分もあるが、しつこいタックル、密集回りでの地道なプレーぶりなど、常に勤勉なスタイルは、古き良き日本人のイメージともダブる。座右の銘も「耐えて勝つ」。
今年のパシフィック・ネーションズカップで初めて母国と戦ったが、「トンガの選手は誰も知らないし、思い切ってぶつかっていける」と、何度もハードなタックルを決めて、日本の勝利に貢献した。
普段はもの静かで口数は多くないが、ぼそぼそと流暢に敬語も使いこなす“いい人"である。
(Text by Kenji Demura)