トップリーグ2010-2011特集 TOPプレビュー&TOPマッチレポート「今シーズンのトップリーグはここを見よ!
今シーズンより、トップリーグホームページでは、スポーツライターとして活躍中の永田洋光氏と村上晃一氏による毎節の見どころと、両氏およびその他第一線で活躍する豪華執筆陣によるマッチレポートをお届けいたします!

リーグ戦 第11節(12/18 - 12/19)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
12/18(土) 12:00 クボタスピアーズ 21-28 コカ・コーラウエストレッドスパークス 近鉄花園
12/18(土) 13:00 ヤマハ発動機ジュビロ 34-33 豊田自動織機シャトルズ ヤマハ
12/18(土) 13:00 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 54-17 NECグリーンロケッツ 皇子山
12/18(土) 14:00 近鉄ライナーズ 7-50 東芝ブレイブルーパス 近鉄花園
12/19(日) 13:00 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 24-35 三洋電機ワイルドナイツ ホームズ
12/19(日) 13:00 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 19-29 リコーブラックラムズ Ksスタ
12/19(日) 13:00 福岡サニックスブルース 26-66 サントリーサンゴリアス 沖縄陸

マッチレポート

新旧交代を印象づける山田の活躍で三洋が再び上昇気流に

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引退宣言をした大畑の目の前で2トライを奪ってみせた三洋WTB山田。新スター誕生を印象づけた
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

19日、トップリーグ第11節の残り3試合が行われ、神戸では首位の三洋電機ワイルドナイツがWTB山田章仁の2トライなどで神戸製鋼に競り勝ち、首位を堅守。一方、トップリーグ史上初の沖縄でのゲームとなった福岡サニックスブルース-サントリーサンゴリアス戦はサントリーが10トライを挙げる猛攻をみせて3位をキープした。この結果、前日の東芝に続いて、三洋電機、サントリー、トヨタ自動車のプレーオフ進出が決定。また、水戸ではリコーブラックラムズがNTTコミュニケーションズシャイニングアークスを29-19で退け、前節の9位から7位に浮上した。

三洋電機ワイルドナイツ ○35-24● 神戸製鋼コベルコスティーラーズ(前半14-9)──12月19日

前節でサントリーに逆転負けを喫し、全勝が途切れた首位・三洋電機はSOトニー・ブラウンやCTB霜村誠一主将を負傷で欠き、今季初めて三宅敬がCTBで先発。
一方の神戸製鋼もSO/FB正面健司が欠場するなど、両チームともにキープレーヤーを欠いた通常とはやや異なるメンバー構成で6, 700人という大観衆が駆けつけた神戸・ホームズスタジアムの芝の上に姿を現した。

そんな地元ファンの声援に後押しされるかたちで、神戸が4分にSOピーター・グラントのPGで先制。
一方、立ち上がりからチャンスにノックオンなどのミスが多く、なかなかスコアに結びつけられなかった三洋に初トライが生まれたのは、17分。敵陣深くのラインアウトからFWでゴール前に迫った後、逆サイドに走り込んだWTB北川智規が外に2人を余らせる余裕のトライ。

28分に神戸SOグラントが2本目のPGを決めた後、37分には自陣でCTB三宅が相手のハイパントをクリーンキャッチして、三洋が得意のカウンターアタックに打って出る。SH田中史朗がラックサイドを抜けてチャンスを広げた後、最後はゴール前のラックから大きく外に振って、LOジャスティン・アイブスが右隅に飛び込み、三洋がこの日2トライ目を記録。
前半最後のプレーでグラントが3本目のPGを決めて、神戸が14-9に追い上げてハーフタイムを迎えた。

「今まで凄かった選手よりもこれから凄くなる選手の方がいい」

神戸は三洋の懐の深いDFを破れず、一方の三洋側にもミスやペナルティが多く、共にややフラストレーションを感じる前半だったが、後半は一転、両チームが持ち味を出し合う見どころの多い40分間となった。

神戸がいったんは同点に追い上げ、三洋が引き離し、再び神戸が5点差に迫る──という緊迫した展開の中、試合を決めたのは大畑大介に代わる新スター候補のひとり三洋WTB山田章仁だった。
17-17の同点で迎えた後半17分。三洋は相手のノックオンで奪ったボールを後半途中出場していた入江順和が神戸ゴール前左隅に絶妙のキック。神戸WTB小笠原仁に競り勝った山田が拾い、そのままインゴールに飛び込んだ。
さらに24分にも、三洋は再びターンオーバーからのボールを左サイドの山田に回し、今度は山田自身がキックで神戸ゴール前にボールを運んだ後、神戸WTBフレイザー・アンダーソンに競り勝ちながら再び足にかけたボールをインゴールで自ら押さえて連続トライ。
「今まで凄かった選手よりも、これから凄くなる選手の方がいいというところをグラウンドで見せたかった」と本人が語ったとおり、大スターとそのファンの目の前で新旧交代を印象づける活躍をみせた山田が神戸に引導を渡すかっこうとなった。

前述のとおり、主力BK陣に故障者が相次いでいる三洋だが、その一方で代わりに起用されているSO野口裕也、CTB大澤雅之といった若手が「いい働き」(飯島均監督)を見せているのは大収穫。その一方で、三宅、入江といったケガ上がりの主力が「貫禄を見せた」(同監督)のも悲願のプレーオフ制覇に向けて、明るい材料だろう。
ブレイクダウンでの反則プレーに関する解釈の違いにより、いつもよりもさらに引き気味のDFにならざるを得なかった点にもうまく対応しながら、相手のミスに乗じてカウンターからの山田の2トライに結びつけたあたりにも三洋の底力は確かに感じられた。
「不謹慎な言い方ですけど、お金を払ってでもさせてもらいたいような経験だった」(PR相馬朋和)という、約2年ぶりのレギュラーシーズンでの敗戦となった前節のサントリー戦を経て、再び上昇気流に乗り始めたことを実感させた三洋電機の“オールドエネミー"神戸製鋼に対する勝利だった。

(text by 出村謙知)

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成長著しい若手と貫禄のプレーを見せるベテランの力がかみ合いだした三洋。写真は途中出場し、抜群の存在感を見せた三洋SO入江
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)
サントリー戦敗戦のショックを感じさせない底力を見せて三洋は仇敵・神戸を退けた(写真はLOヒーナンとサポートするFB田邉)
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)
三洋の3人がかりのタックルに止められる神戸・大畑。プレーオフ進出はなくなったが「前を向いてチャレンジしていくしかない」
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

 

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クボタスピアーズ、コカ・コーラウエストに敗れる

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クボタとの激戦を制したコカ・コーラにとってはトップリーグ残留に向けて大きな勝ち点5となった(写真は決勝トライを奪ったCTBベイトマン)
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

順位段階の最終局面を迎えた第11節、ここにきてチーム力の差が出てしまった試合もあれば、緊迫感ある試合もあり。土曜日は、静岡のヤマハスタジアムで10位のヤマハ発動機ジュビロと、14位の豊田自動織機シャトルズが対戦。シャトルズが2つ目の白星にあと一歩と迫りながら1点差で敗れた。滋賀県の皇子山では、トヨタ自動車ヴェルブリッツがNECグリーンロケッツに大勝し、プレーオフに大きく前進。そして、近鉄花園ラグビー場では、12位のコカ・コーラウエストレッドスパークス対13位のクボタスピアーズがリーグ残留をかけての大一番。ホームの近鉄ライナーズ(7位)は2位の東芝ブレイブルーパスを迎え撃った。

クボタスピアーズ ●21-28○ コカ・コーラウエストレッドスパークス(前半21-14)──12月18日

後がないクボタは、ようやく右足の負傷が癒えたオーストラリア代表ヒュー・マクメニマンをFLで先発させ、FLドゥルー・ヒッキー、NO8ジョシュア・フイマオノという強力なFW第三列を編成して、コカ・コーラウエストに挑んだ。立ち上がりはハンドリングもおぼつかない緊張感が両チームを支配。先制したのは、クボタだった。前半4分、FWの細かいパスつなぎからフイマオノが抜け出し、鋭角的なステップでタックラーをかわしてポスト下へ一直線だった。

流れはクボタかと思われたが、コカ・コーラもすぐに反撃。16分、CTBティム・ベイトマンの突破からの素速いボール出しでWTB小柳泰貴を走らせ同点に追いつく。このとき、数的不利に陥ったクボタのディフェンスが大きく乱れた。我慢して守れない姿は不振のチーム状況を露呈し、その後の苦戦を予感させた。ここからは一進一退の攻防となったが、前半36分、クボタがSO森脇秀幸の好判断でゴールラインに迫り、ライン5m手前からマクメニマンが3人のタックルを弾き飛ばしてトライ。21-14と突き放した。

しかし、クボタの得点はここまで。後半に入ると、向井昭吾監督の「もっと攻めろ!」の指示通り、コカ・コーラウエストが左右にボールを動かしながらクボタ防御を翻弄し、16分、ぽっかり空いた穴にCTBベイトマンが走り込んでトライ。試合の流れを決定づけた。最後はこの日3本目となる小柳のトライも飛び出し、4トライのボーナス点も獲得するコカ・コーラウエストの快勝だった。

近鉄ライナーズ ●7-50○ 東芝ブレイブルーパス(前半0-19)──12月18日

試合前、この日はWTBで先発する東芝の仙波智裕は言った。「ここまで王者らしい試合をしていない。王者の風格を取り戻したい」。苦戦続きの東芝にとって、個々にパワフルな選手が揃い、思い切りよく突進してくる近鉄は勢いを出すには恰好の相手だったのかもしれない。前半2分、仙波が早々に先制トライを奪ってからは、近鉄がボールをキープして攻める時間が続いた。しかし、東芝のディフェンスはびくともしなかった。

近鉄の波状攻撃をがっちり受け止め、ときおり、ブレイクダウン(ボール争奪局面)を乗り越えて力強くターンオーバー。攻めては、タックルされながらのオフロードパスや、相手にコンタクトする直前のパスで味方を走らせ、やすやすとゲインラインを突破していく。21分には、FWで縦に繰り返し防御を崩し、BK同士が同じ人数で勝負できるシチュエーションを意図的に作り出してWTB廣瀬俊朗が右中間にトライし、12-0とする。

前半を終えて、19-0と東芝がリード。近鉄を圧倒しているように見える試合展開にもかかわらず、東芝の瀬川智広監督はハーフタイムにさらに選手に質高くプレーすることを求めた。「ラックで倒れている。もっと立つ意識を持たないと」。原田隆司レフリーが肉離れで後半開始からアシスタントレフリーの松岡辰也に交替するアクシデントはあったが、試合の流れは変わらなかった。むしろ、東芝は瀬川監督の言葉通り、さらに力強く前に出始める。後半9分あたり、今季2度目の先発出場となる前キャプテンのCTB冨岡鉄平が叫んだ。「決めきろう!」。

26-0でリードの場面である。あと1トライして、試合を決めてしまおうという合図だった。その直後、東芝の伝家の宝刀「ドライビング・モール」からFLスティーブン・ベイツがトライ。本当に試合を決めてしまった。近鉄も1本トライを返したが、終了を告げるブザーが会場に鳴り響いても東芝は手綱を緩めなかった。一連のプレーでボールをつなぎ続け、最後にパスを受けたPR久保知大が瞬時の加速で一人かわしてインゴール右中間に躍り込んだのだ。スクラム最前列で体を張り続けた選手が、最後の最後にBK並みの瞬発力でトライを奪う。王者の風格を見せつけるトライで、東芝が快勝。「やっと東芝らしい試合ができました」と廣瀬キャプテン。三連覇に向けて手応えをつかむ勝利と同時に、勝点合計で4位以内を確定させ、プレーオフ一番乗りを決めた。

(text by 村上晃一)

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初先発となったFLマクメニマンのトライ(写真)などで前半は7点リードで折り返したクボタだったが、痛恨の逆転負けで崖っぷちに
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)
試合終了間際のPR久保のトライ(写真)で50点を記録し、近鉄に圧勝した東芝。プレーオフ初名乗りを挙げた
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)
後半23分のWTB坂本のトライ(写真)1本に抑えられた近鉄。5000人を越える地元ファンの熱い声援に応えられなかった
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

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