最高の下克上を狙う4チームが16日、福岡に集結!
──ワイルドカードトーナメント1回戦プレビュー
1月9、10日に行われた13節でトップリーグのレギュラーシーズンは終了。
22、23日には東京・秩父宮ラグビー場でプレーオフトーナメントセミファイナルが行われるが、西日本ではひと足早く、日本選手権出場権を賭けたワイルドカードトーナメントが開幕する。
1回戦はリコーブラックラムズ(レギュラーシーズン7位)―コカ・コーラウエストレッドスパークス(同10位)、福岡サニックスブルース(同8位)―近鉄ライナーズ(同9位)の組み合わせで、16日、福岡・レベルファイブスタジアムで行われる。
写真右=最終節で際どくヤマハを退け、7位でワイルドカードトーナメントに進んだリコーだが、1回戦は敵地・福岡での試合となる(写真はCTBエリソン) |
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(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP) |
おそらく、各チームにとって、1年で最も準備ができない試合が、このワイルドカードトーナメント1回戦だと言っていいだろう。
プレーオフセミファイナル組には2週間の準備期間が与えられるのに比べ、ワイルドカードトーナメント1回戦はレギュラーシーズン最終節から間を置かず翌週に行われる。
しかも、今季は最終的な7〜11位の勝ち点差がわずかに5(10位コカ・コーラウエストと11位ヤマハ発動機の勝ち点差は何と1)という熾烈な順位争い、いやサバイバルマッチが繰り広げられたこともあり、どのチームがワイルドカードトーナメント1回戦に回るか最後まで全く予想がつかなかった。
どのチームも相手に対する研究は最小限にしかできない、ブッツケ本番的なスタンスで臨まなければいけないのが、16日に福岡・レベルファイブで行われる4試合なのだ。
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レギュラーシーズン終盤戦の勢いある戦いぶりを続けて、コカ・コーラウエストはミラクルチームになれるか?(写真はWTB築城昌)
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP) |
中でも、とてもとてもワイルドカードトーナメントどころではない状態がレギュラーシーズン最後まで続いたのが、最終節でヤマハ発動機に入れ替わってギリギリ10位に滑り込んだコカ・コーラウエストだろう。
「何とか、来季新しく入ってくる選手のためにも、トップリーグにとどまっておかないと」
先月の時点で、NO8豊田将万ゲームキャプテンがそんなふうに語っていたとおり、9節終了時(12月5日)の成績は1勝8敗と、一時は自動降格の可能性さえ決して低くはなかった。
10節(12月12日)にヤマハ発動機に劇的な逆転勝利(27-26)を飾ってから、終盤戦で4連勝して、何とか勝ち点1差で入れ替え戦を逃れ、ワイルドカードスポットをものにした。
しかも、最終節のNTTコム戦も終了5分前に決勝トライを奪って19-14で振り切るという最後まで冷や冷やドキドキの10位穫り……。
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悪天候も予想されるだけに近鉄としてはFB高(写真中央)の安定したフィールディングとキックでコンディションを味方につけたいところ
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昨季のNEC並みのミラクルを引き起こすのは……
それでも、1年前の例をひも解くなら、そんなコカ・コーラはワイルドカードトーナメントでの台風の目になる可能性を秘めていると言っていい。
昨季、やはり終盤に白星を重ね、最終戦で10位に滑り込んだチームがあった。
"ミラクル"グリーンロケッツ。
そんな異名とともに、ワイルドカードトーナメントに入ってからも、快進撃を続けたNECは、日本選手権ではサントリーを破り、優勝した三洋電機も苦しめるなど、ポストレギュラーシーズンを盛り上げた。
昨季のNECに匹敵するミラクルを目指すコカ・コーラウエストのワイルドカードトーナメント1回戦の相手はリコー。
リコーが最終節でヤマハ発動機に勝っていなければ、コカ・コーラウエストのワイルドカード進出はなかっただけに、極端な話"命の恩人"と言ってもいい相手との対戦となる。
レギュラーシーズンではリコーが29-27で際どく勝利しているが(4節=10月2日)、その時の会場が東京・秩父宮だったのに対し、今回は福岡での対戦となるだけに、地の利も生かしつつ、接戦をものにしてきた勝負強さを発揮したいところ。
一方のリコーはここ3試合で130点という失点の多さが不安材料か。何とか、相手をロースコアに抑える、本来のタイトな戦いに持ち込みたい。
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レギュラーシーズンの対戦では近鉄に競り勝ったサニックス。地元ファンの声援に応えて、2回戦進出を果たせるか(写真はWTB永留副将)
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リコー対コカ・コーラに先立って行われる福岡サニックスー近鉄 戦は1ヵ月前の11節で対戦したばかり。
その時は35-31でサニックスが競り勝ったが、両チームともに攻撃力に特徴があるだけに、今回もスリリングなアタックの応酬が繰り広げられそうだ。
週末の福岡は雪の予報も出ており、同じ攻撃型のチームながら「ストラクチャー(近鉄)対アンスタラクチャー(サニックス)の戦い」(近鉄ピーター・スローンヘッドコーチ)という両極端なアプローチを見せる両チームにコンディションがどう影響するかも勝敗を分ける要因のひとつになりそうだ。
注目のプレーヤー
"100%日本人"のハードワーカー
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タウファ統悦選手
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個人的な印象で言うなら、三洋電機NO8ホラニ龍コリニアシと並んで、現在のトップリーガーの中でも、最も外国生まれを感じさせないカタカナ表記の選手が、"トーエ"ことタウファ統悦である。
名前に漢字があてられているとおり、すでに日本に帰化済み。本人も「100%日本人」を公言する。
高校まで生まれ故郷のトンガで過ごした後、01年に日大に留学。ほぼ同時にトンガU20強化選手として南ア行きのチャンスもつかんでいたが、より確実な未来図が描きやすかった日大留学を選択した。
そんな堅実さをまわりが認めた面もあったのか、日大4年時には主将も務めた。日本代表の海外遠征時にはひとみ夫人と2児が駆けつけることも多いが、ジャパンの中でも「いいお父さん」ぶりは際立っている。
同郷のホラニとは日本代表で同時にプレーすることも多いが、どこか「静」を感じさせる"コリー"ことホラニに対して、トーエはあくまでも「動」。話し方もボソボソっと太い声で要点だけを語るコリーとは対照的に、やや甲高い声で、早口に話し続ける。
プレースタイルはとにかく運動量が豊富で密集周辺で骨惜しみなく働き続けるのが特徴。
ジャパンでプレーする時に比べて、近鉄ではボールを持つ機会が多く、ペネトレーター役も担うが、1ヵ月前に4点差で惜敗したサニックスの攻撃リズムを狂わせるためにも、トーエの密集回りでのしつこいプレーが鍵を握る。
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タウファ統悦(タウファ・とうえつ)
◎トゥポ高(トンガ)→日大→近鉄ライナーズ。FL/NO8。1980年10月8日生まれ。183cm、105kg。
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP) |
注目のプレーヤー
"持っている"、コーラの奔放な若きリーダー
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豊田将万選手
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早大主将として大学日本一に輝いてから2年。
すでに、ゲームキャプテンとしてレッドスパークスを引っ張る存在となっている。
ただし、早大主将時代、「僕なんかがキャプテンやっていいのかな」と繰り返していたとおり、その奔放なプレースタイルや言動からいって、わかりやすいキャプテンシーが溢れるタイプでは決してない。
一プレーヤーとしては、「僕が自信を持って勝負できるのはボールを持ってのプレー」というとおり、試合を決めるトライやインターセプトからのロングゲインなど、ビッグプレーを見せることもたびたび。
豊田がゲームキャプテンを務めるようになってからの4試合でレッドスパークスは4連勝。
流行のフレーズを使うなら、"持っている"ということにでもなるのだろうか。
すでにジャパンとしても9キャップを獲得。初キャップだった一昨年のシンガポール戦のファーストボールタッチでいきなりトライを奪うなど、その勝負強さは国際舞台でも実証済み。
ちなみに、目標とする選手はフランス代表の怪人LOセバスチャン・シャバル。
大学選手権優勝時にインタビューで感想を聞かれ、「ヤバいッス」。前節の最終戦に臨むにあたり一番気をつけていたことは、「風邪引かないこと」。
独特の言語感覚をも持つエンターテイナーでもある。
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豊田将万(とよた・まさかず)
◎東福岡高→早大→コカ・コーラウエストレッドスパークス。NO8/FL。1986年5月15日生まれ。189cm、108kg
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP) |