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5節 マッチサマリー(NTTコム 13-10 トヨタ自動車)

NTTコム 13-10 トヨタ自動車   NTTコム 13-10 トヨタ自動車   NTTコム 13-10 トヨタ自動車   NTTコム 13-10 トヨタ自動車

NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 13-10 トヨタ自動車ヴェルブリッツ
【week5/2010年10月9日(土) at 埼玉・県営熊谷ラグビー場】

前週の秋晴れから打って変わり、冷たい雨の熊谷。試合の行方に大きく影響を与えることは必至。両チームはゲームプランをどう立ててくるのか。

NTTコムは前節の負傷の癒えないマーク・ジェラードを欠く布陣。BKの決定力に不安を禁じえない。チャンピオンチーム、三洋電機には力負けを喫しているだけにここが踏ん張りどころか。一方のトヨタ自動車は開幕から4戦して4勝、この試合も有利の予想は揺るがない。

アンソニー・ロシアンレフリーの笛を合図にNTTコムのキックオフで試合が始まる。3分、最初にチャンスをつかんだのはNTTコム。トヨタのラインアウトからボールを奪ったNTTコムはラックを起点に展開し、13番、山下大悟がラインブレイク。大きく相手陣へ切り込むとトヨタは密集で反則を犯す。SO君島良夫が難なくPGを決めて3点をリード。
7分。相手陣22mライン付近でマイボールスクラムを得たトヨタが、そのスクラムをグイと押し込んでおいて左に展開、ラックになったところで今度はNTTコムがペナルティを取られる。オレニ・アイイがPGを決め、3-3。
振り出しに戻り再開のキックオフからは蹴り合いとなるがトヨタ側が落球しスクラムに。このスクラムが芝に落ちるとレフリーの腕はNTTコムの側に高々と上がる。再び君島がPGを成功させて、NTTコムが6-3とする。

NTTコムはキックを多用。ボールを持つときはFWが近場近場と攻める。一方、トヨタはオレニ・アイイが切れのある動きからBKを動かす。フルバックに入ったスティーブン・イェーツの力強いアタックも効いている。しかし、スリッピーなコンディションにハンドリングミスも。NTTコムがハイパント、厳しいプレッシャーにトヨタがノックオンという場面もあり、ゲームプランはNTTコムのほうが理にかなっているように見える。
NTTコムはキックをうまく使い相手陣深くでラインアウトのチャンス。マイボールをキープしモールとなったところでトヨタはオフサイドの反則。NTTコムはタッチへボールを蹴り出して再びラインアウトからトライを狙いにいく。ラックを連取するとFW陣がゴールラインを越えるところまで前進するがトライとはならず。5mスクラムで再開後も攻め続けるNTTコムに対してトヨタも粘りのディフェンスを見せ、ついにはターンオーバーからキックで大きく返す。

この後、互いに互いの堅いディフェンスを崩すだけの攻めを繰り出すことができず、得点の動かない試合展開となっていく。ハンドリングミスと反則でスタンドにもため息がもれる場面も多かった。シンプルに攻めも守りも前へ前へとプレッシャーをかけ続けたNTTコムのほうがチャンスが多かったが、結局、前半戦はトライシーンのないまま終了となった。

後半に入ってもトヨタはボールを動かすゲーム。ハンドリングミスが多くなるのは織り込み済みと、飽くまで自らの強みを前面に押し出し、徐々に主導権を得ていく。
実を結ぶのは3分後。相手のキックを受けた15番、アンガス・マクドナルドがついにディフェンスラインを突破すると、そこからの素早いつなぎで最後は13番、八役大治が右隅にトライ。オレニ・アイイが角度のあるゴールを決め、6-10と逆転。

やはり自力に勝るのはトヨタといった試合展開となるかと思われたが、今日のNTTコムは強い気持ちを持ち続けていた。トヨタのノックオンで得たチャンス。スクラムから準備していたプレーなのだろう、バックスのクロスプレーできれいにディフェンスを抜き11番、友井川拓がトライ。君島のゴールも成り再びリードを奪う。

ここまで骨のきしむ音が見る者を唸らせていた試合はさらに激しさを増していく。トヨタはラックの連取から11番、水野弘貴がディフェンスの裏へ抜け出すと、対面、沼尻大輝が必死に追いすがる。沼尻は辛うじて片手で掴んだジャージを離さない。その手を振りほどけなかった水野のスピードが鈍ると黄色のジャージが取り囲んでゴールへの道を阻んだ。
地元熊谷出身、前週、トップリーグデビューを果たしたばかりの沼尻はこのプレーで負傷しピッチの外へ。グラウンドコートを肩にしたその表情には、最後までその場に立ち続けられない悔しさがにじんでいた。

試合は再び膠着状態に入っていき、時計の進みがじわじわと両チームにプレッシャーをかけ始める。トヨタは幾度か同点PGを狙える機会があったが、そのたびにラインアウトからトライを取りにいくことを選択。20分にはNTTコムはシンビンで君島を欠くも、チームの結束はさらに増し気迫のディフェンスがトヨタの猛攻をしのぎきる。

3点差。まずは同点という選択肢も時計がそれを許さない域へ。必死の攻め、必死の守り。ゴールライン目前のスクラムで痛恨の反則はトヨタ。NTTコムがタッチキックで息をつく。しかし、グラウンド中央のラックサイドをトヨタSH、麻田一平がスルスルと抜け出し再び逆転のチャンスを作る。NTTコムが反則を犯すと、トヨタはラインアウトを選択。何度も何度も見た場面である。そしてこの場面もゴールラインを陥れるには至らない。

NTTコムが自陣22mラインでペナルティキックを得ると会場にはホーンが轟く。ボールを力強く蹴り出した瞬間、黄色いジャージが歓喜に踊った。最終スコアは13-10。トライは互いにひとつずつ。両チームともに自らのラグビースタイルに信念と自信を持って戦った結果である。雨にもかかわらずスタンドに詰め掛けた多くのファンにもラグビーの醍醐味をじゅうぶんに味わっていただけたはずである。(辛島 勝広)

会見ダイジェスト
トヨタ自動車ヴェルブリッツ
朽木監督(左)、中山キャプテン
朽木監督(左)、中山キャプテン


◎トヨタ自動車ヴェルブリッツ
○朽木泰博監督
「雨でしたがグラウンドコンディションは良く、熱いゲームができました。NTTコムさんのひたむきに低いプレーを受けてしまい、我々もそれを想定し準備したが、立ち上がりのミスでリズムがつかめなかったことが敗因です。ただ、1試合の結果で一喜一憂せず、自分たちの強みをさらに磨いてさらに強いチームにしていきたいと考えています」

──スリッピーなコンディションの中、キックをあまり使わなかったが。
「我々の強みはカウンターアタック、FWのモールプレーであり、プレーの選択に誤りはありません。ただ、ミスが起こったのはスキルの問題でその部分の精度はこれからもっと上げていかなくてはと思っています」

○中山義孝キャプテン
「完敗です。NTTコムは強かったです。次に対戦する機会までには我々がもっと強くなっていたい」

──ペナルティを得た場面でのプレーの選択は?
「自分たちの一番の強いプレーを選択しました。その結果は、NTTコムさんが強かったということに尽きます」

NTTコム 13-10 トヨタ自動車   NTTコム 13-10 トヨタ自動車   NTTコム 13-10 トヨタ自動車
NTTコミュニケーションズシャイニングアークス
大沼監督(左)、中山キャプテン
大沼監督(左)、中山キャプテン


◎NTTコミュニケーションズシャイニングアークス
○大沼照幸監督
「強いトヨタさんに対し、前に出るディフェンス、エリアマネージメント、ブレイクダウンで勝ることがこの試合の勝機とイメージし準備してきましたが、その通りにできたと思います」

──選手交代は割と早い時間帯だったが。
「フィジカルが勝負とも考えていましたので、選手交代は早めに積極的にいきました」

──シンビンで数的に不利になった場面は?
「人数が少なくなったことで、よりFWがサイドのディフェンスで気迫を見せてくれました。シンビンを出したことは反省点ですが、その場面を乗り切ったことは、結果としてはひじょうに良かったと思います」

○中山浩司キャプテン
「試合前にチーム全員で前に出るディフェンスをと気持ちを高めて臨みましたが、その通り、前・後半通して強い気持ちで前に出られたと思います」

──交代後もピッチの選手に声をかけられていましたね。
「前半から全て出し切っていましたので、交代後も無意識で大きな声を出していたかもしれません。きょうはずっとチームに一体感を感じていました」



2010年10月10日

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