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NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 10-50 三洋電機ワイルドナイツ
【week4/2010年10月3日(日) at 埼玉・県営熊谷ラグビー場】
10月、3週にわたって計4試合が行なわれるラグビータウン熊谷。数日前までの猛暑はようやくおだやかな秋の空気にかわり、スタンドにも多くのラグビーファンが詰め掛けた。
試合はNTTコムのキックオフで開始。NTTコムはこのマイボールをキープし展開、ゴールまで10mと攻め込むも、三洋ディフェンスは堅く、22mまで押し戻されると接点で反則を犯し最初の得点機を逸する。
続いて注目のファーストスクラム。NTTコムはここでレフリーのコールにタイミングが合わず、その後もスクラムでは苦戦することになる。一方、三洋は相手ゴール22m付近でPKを得て、ベストキッカー、田邊がねらう。しかし、イージーと思われたこのゴールをはずし、場内にも低くどよめきが。
試合が動いたのは8分。NTTコムボールのスクラムは再び、三洋のフリーキックに。三洋は相手FBのマーク・ジェラードを意識してか蹴らずに攻める。タッチライン際のWTB北川智規の快走で大きくゲインすると、連続攻撃は一気にスピードアップ。SOブラウンがゴール寸前まで持ち込むとピックアンドゴーでLOジャスティン・アイブスがポスト近くに先制トライ。しかし、ここでゴールキックを田邊がはずし、この後の試合展開に不安を残す。
NTTコムはキックオフからの展開からキックでエリアを得ると22m内に再び攻め入るも、ブレイクダウンでまたしても反則。ノットロールアウェイへの対応がこの試合の課題となっていく。
20分。三洋はキックを織り交ぜて相手陣にじわじわと攻め入ると、ピックアンドゴーを繰り返して、いつの間にかゴールラインが間近に。密集からわずかに離れた劉永男がボールを持つと、良いタイミングで山田へパス。WTB山田章仁は見事な身のこなしを見せてゴールへ飛び込み、トライ。期待通り、非凡なところを披露。
32分。両チームは接点で激しい攻防を繰り返すが、ここは三洋に反則。PGを得たNTTコムは確実に3点を返す。次の得点をNTTが上げることができれば、試合は緊迫感ある展開となる予感があったのだが。
三洋はその3分後、自陣22mからのハイパントをマイボールとすると素早く左へ展開。山田章仁が大きくゲイン、サポートの劉永男がボールを受けるとそのままゴールまで走りきってしまう。ここまでキック不調の田邊がようやくゴールを成功させ、試合の流れは大きく三洋へ傾く。
NTTコムは激しいあたりと堅いディフェンスで健闘を見せていたが、前半残りわずかとなったところでやや疲れが出たか。
後半。立ち上がりから三洋は速いアタックを仕掛ける。NTTコムはたまらず反則。前半の課題が解消されていない。結局、反則の繰り返しと判断され、4番、馬屋原誠にイエロー。ゴール前ペナルティを得た三洋はFW陣がそのままゴールへ。グラウンディングは7番、ルーキーの西原忠佑。昨シーズンは明治大キャプテンとして、ここ熊谷のピッチでもチームを引っ張っていた西原である。
後半5分。三洋のキックをカウンターアタックのNTTコム、マーク・ジェラードが本領発揮、大きくゲインしてチャンスになりかけるも、三洋は落ち着いてディフェンス。ターンオーバーすると定石通りに素早い展開。最後にボールを受けた山田章仁は持ち前のスピードとトリッキーな身のこなしでタックルをひとつふたつと外し、この日二つ目のトライを決める。
後半13分には、足を痛めたNTTコム、マーク・ジェラードに代わり22番、沼尻大輝がピッチに登場。熊谷ラグビースクールでラグビーを始めたという沼尻が、地元でトップリーグデビューを果たすと、場内からは声援が飛んだ。
試合は後半16分、自陣から苦しい攻撃のNTTコムが攻め切れずにキック。三洋はリターンのボールを展開、スピードに乗った劉永男がボールを受けるとステップも見事にNTTコムディフェンスを置き去りにしてトライ。さらに22分、ラインアウトモールを押し込み、最後にボールを押さえたのは、この日、3つ目のトライとなった6番、劉永男。
70分間、堅い三洋ディフェンスを崩すことができなかったNTTだったが、粘りのアタックの末、ゴール前で得たPKを素早く持ち込み、最後は途中出場のPR秋葉俊和が意地のトライを返す。
試合終盤、この日がトップリーグ初登場となった三洋のサム・ノートンナイトが相手ディフェンスの隙を見逃さず鮮やかにトライ、田邊のゴールもなってついに50点に到達。
初昇格ながらこれまでの3試合で力のあるところを見せていたNTTコムだったが、チャンピオンチーム三洋電機にはさすがに歯が立たなかったというところか。しかし、課題はハッキリとしている。スクラムの安定と接点での反則を減らすこと。疲れが見え始めるまでのディフェンスはしっかりとしていたし、マーク・ジェラードを起点とした攻撃は見応えのあるものだった。
三洋電機はもはや円熟の域か。ディフェンスに穴の開く場面は皆無。ひとたび攻撃に転じれば加速力があっという間に増し、ゴールを陥れる。決め手を持った選手がズラリと並ぶ布陣を見ても、今シーズンも大本命は揺るがない。(栗原 稔)
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大沼監督(左)、中山キャプテン
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◎NTTコミュニケーションズシャイニングアークス
○大沼照幸監督 「チャンピオンチーム、三洋電機にチャレンジと位置づけ臨んだゲームでした。前半、じゅうぶん戦えていたと思うが、得点機を活かせず波に乗れなかったのが残念です」
──前節からフロントローを組み替えたのは?
「斉藤展士は前週のサテライトで好調でしたので使いました」
○中山浩司キャプテン 「監督の言ったとおり、チャンピオンチーム、三洋電機に我々の力がどのくらい通用するのか、チャレンジしようと話をして臨みました。前半から接点の攻防で負けないよう勝負しましたが、反則が多かったのが反省点で修正しなくてはなりません」
──東芝戦は善戦だったが、きょうの三洋との違いは?
「どちらのチームもボールをつなぐスピードのあるラグビーをしてくるんですが、三洋は接点でのプレッシャーが強くて速いです。自分はスクラムハーフの位置にいますが、マイボールのときにもスペースを素早くつぶされてプレッシャーを感じました」
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飯島監督(左)、霜村キャプテン
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◎三洋電機ワイルドナイツ
○飯島均監督 「NTTコミュニケーションズは新昇格のチームとはいえ、ここまでの試合では調子がよく、力のあるチームと認識して臨みましたが、その通りの試合と感じました。後半、点差を離すことができたのは、立ち上がりからのボディーブローが効いてきたのかと思います」
──ボディーブローとは具体的に?
「相手のほうが前半から全力で来るのは想定していました。接点での攻防で相手のほうがスタミナが先に消耗してくるとも。フィットネスではこちらのほうが上回っている自信はありました」
──2トライの山田選手については?
「もともと力のある選手ですから。ただ、前の試合では少し遠慮があったように見えたので、もっと自らゴールラインを目指すのが本来のスタイルだろ?と言っておきましたが、その通りにできていましたね」
──劉永男といい絡みを見せる場面もあったが。
「練習では見たことありませんけどね(笑)」
○霜村誠一キャプテン 「NTTコミュニケーションズの力のあるところは感じましたが、我々がそれを上回るパフォーマンスを出せたことに満足しています。終盤、反則が多くなったところは次節までに修正しなくてはと考えています」
──山田選手のトライを演出しましたね?
「試合前から、今日はいけそうな気がすると言ってましたから。その通り、キレキレでしたね」
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