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東芝ブレイブルーパス 7-12 三洋電機ワイルドナイツ
【week1/2010年9月3日(金) at 東京・秩父宮ラグビー場】
三洋DFはさらなる進化を目指す
8シーズン目のトップリーグは、昨年度プレーオフトーナメント決勝を戦った東芝ブレイブルーパスと三洋電機ワイルドナイツが秩父宮ラグビー場に登場し、幕を開けた。
試合開始の東芝SOデイビッド・ヒルのキックオフは、好敵手三洋SOトニー・ブラウンが直接キャッチしロングキックを蹴り返す。このトップリーグを代表するSOのキック対決から激しく熱い戦いがスタートした。
スタンディングラグビーを真骨頂に攻めきりたい東芝は、開始直後からゲームをスピードアップし、三洋DFのギャップを狙って次々とランナーが走りこむ。FWの核であるスティーブン・ベイツ、成長著しいNo8望月に、コンタクトに自信を持つオト、仙波の両CTBがからんで突進を繰り返す。このビッグゲームでSHに起用された三井は、落ち着いた動きでFWを動かし、テンポ良くボールを捌きながら、時にSOヒルのキックを織り交ぜながら前進を図った。
しかし、予想通りに、しかもそれ以上に今年も三洋DFは堅く厳しい。昨年同様にラックに固執せず、一人ひとりがスペースを保ちながらグラウンド全体をゆったりと覆いつくす。そして、アタッカーが攻め疲れ、ボールキャリアへのサポートが遅れた瞬間、15人が目を醒ましターンオーバーから攻撃に転じてゆく。ラックを少しでも前で組むことでその周辺のDFを巻き込み、次ぎのランナーで突破したい東芝に対し、三洋は1対1でのタックルで一歩も引かず、体幹の安定としなやかなボールへのからみで東芝につけ入る隙を与えなかった。
この前半、東芝BKはセットプレーからドリフトしてくる三洋DFのギャップを狙うなど三洋攻略に工夫を見せるが、前進後のコンタクトの際にハンドリングエラーを繰り返しリズムに乗り切れない。この緊迫した時間帯に、三洋は確実なDF網を拡げるだけでなく、前に出るタックルにこだわり、少しずつエリアを奪って東芝ゴールに迫った。結果、トライは奪えなかったが、FB田邊が正確なショットで冷静に東芝を突き放した。(0-9)
後半も、攻める東芝、しっかり守ってフェイズが重なるとターンオーバーから一気に切り返す三洋の攻防は続いた。しかし、東芝の攻撃への執念に、少しずつ三洋DF網がほころびを見せ始める。夜とはいえかなりの暑さも残り、集中力は限界に近い。東芝はさらに展開のスピードを速め、そこで生まれたギャップへの突進を狙うが、オフロードでのハンドリングエラーが繰り返され思うように前に出られない。もうこの観衆が何年来見続けてきたのか、「攻める東芝、タックルの三洋」。 スタンドの観衆が諦めかけた後半39分、ついに東芝が三洋DFを突き破る。FW・BK一体となって突進を繰り返し、松田のパスから豊田がビッグゲイン。そして最後の最後にSOヒルがゴールに飛び込んだ。(7-12)
開幕戦から両チームの意地がぶつかり合い、骨きしむ音が聞こえてくる壮絶な肉弾戦だった。昨年以上にチームカラーが強調され、お互いの持ち味は研ぎ澄まされている。しかし、この日は三洋の火の出るタックルが目に焼きつき、最後の残り1分まで東芝に勝利の可能性を与えなかった。
この日、競技場に集まったファンにとっては、またこの戦いがシーズンのクライマックスに再現されることを期待させるゲームだったかもしれない。しかし、今年のトップリーグ全体を見回せば、この両チームでさえ絶対の強さが保障されているわけではない。
しかし、開幕からこれだけの緊迫した戦いでスタートできるトップリーグは、日本ラグビーの進化を少なからず見せてくれた気がする。
期待して欲しい、今年のトップリーグに。(照沼 康彦)
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瀬川監督(右)、廣瀬キャプテン
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◎東芝ブレイブルーパス
○瀬川智広監督 「13000名を超えるお客様に集まっていただき、歴代8位の入場者数記録というオープニングゲームを務めさせていただき、大変嬉しく思っています。結果は勝つことはできませんでしたが、この一敗は東芝を強くする一敗です」
──もう少し長く攻めることができればよかったのか?
「今年は、4月から開幕戦は暑い中で当たることを想定して、ボールが汗で滑ろうが、体力がなくなろうが、やろうと練習してきましたが、ゲームプレッシャーの下で、三洋さんの正確なキックが選手を硬くさせてしまったのだと思います。しかし、最後に三洋さんのディフェンスからトライが獲れ、もう一度反省できるのはありがたいです。東芝の『オリジネイト』、自分たちのラグビーを完成させることが肝心です」
──ミスが多くてつながらない印象だが?
「やはり、今日の三洋さんのディフェンスは素晴らしかったと思います。立ってつなぐラグビーを目指しましたが、随所でミスもありました。ただ、ラインの裏でつなぐラグビーは十分通用したと思います。最後の最後でボディコントロールできなかったり、サポートが遅れたりしました。三洋さんのカバーディフェンスの厚さが凄かったです。もう一人サポートしていれば獲れたと思います」
──40歳の松田選手については?
「トライの嗅覚やカウンターのタイミングなど、さすがです。これから毎試合、年齢記録を更新し続けると思いますが、松田のプレーに注目してもらいたいです」
──大野選手は?
「前半、ふくらはぎを痛めて肉離れしそうということなので大事をとりました。心配はしていません」
○廣瀬俊朗キャプテン
「開幕戦に多くのラグビーファンが集まってくださって、感謝しています。見ての通り、激しい試合でしたが、東芝としてはミスが多かった結果だと思います。三洋さんのディフェンスが良く、最後の根性のところで獲れなかったかなと感じています。キャプテンとして、もう少し前へ出て選手を鼓舞してやれたらと思いますが、今後につながる試合でした。次からレベルアップして、プレーオフでリベンジというシナリオでいきたいと思います」
──前半はペナルティが多かったが修正したのか?
「ちょっと選手は戸惑っていましたね。ハーフタイムで修正しましたが、大きくは変わっていません」
──最後に意地を見せることができたが?
「それまでが、お粗末だっただけです。前半から行かなくては。開幕戦という独特の雰囲気の中で、モタモタして前半40分過ぎてしまったという感じでした」
──シーズンを見通して、得たものは?
「スタンディングラグビーをどんどん高めたいと思います。サポートコースを変えるとか、1対1のディフェンスとか、いろいろとよい反省材料を得たので、ビデオを見て研究していきたいと思います」
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飯島監督(右)、霜村キャプテン
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◎三洋電機ワイルドナイツ
○飯島均監督 「非常に天候も内容も熱い試合でした。その中で三洋は一歩でも前へ行こうとして、その結果、東芝さんのスタンディングラグビーを狂わせることができたと思います。何回も選手がディフェンスを激しくやって前へ出ることができました。選手は暑い中、よくやったと思います。危険なくらい暑かったので、選手を守る立場としては、日程について今後検討をお願いしたいと思います」
──1対1のタックルが良かったが?
「私たちはそれほどガツガツとタックル練習はしません。ゆっくりと足の運びなど、練習しています」
──東芝のスタンディングラグビーは熟成途中のようだが?
「僕らは毎試合、ベストを尽くそうとしています。特に東芝さんには負けていますし、夏から東芝さんとしては絶好調のようでしたので、挑戦したかったというのが本音です。選手はよくやってくれました」
──ラックを「捨てる」判断が優れていたが?
「何回かゲインラインを切られたのですが、相手を見て、規律をよく守れたと思います」
──FWのモールにBKが入った特別なプレーがあったが?
「何年かに一回(笑)、BKで優勢なモールを作って押すということをやりたかったんですね。合宿を見に来た記者の方が記事にして下さらなかったことに感謝しています(笑)」
○霜村誠一キャプテン 「お疲れ様でした。予想したとおり、ハードな試合でした。その中でFWが優位に立ってくれて、しんどい中で勝ってくれて、この結果になったと思います。東芝さんは凄いディフェンスでしたが、その中でよく勝ってくれました。対東芝戦は、こういう固いゲームになるのですが、キツい試合に勝って自信がつきました。ですが、まだ、始まったばかりですのでこれからも進化していきたいと思います」
──東芝との戦い方は?
「強いランナー中心に来ると分かっていたので、一人ひとりが止めて、開いて何回もディフェンスするということを徹底しました。『ノーペナルティ』が合言葉で、守りきれました」
──ディフェンスでターンオーバーが多かったが?
「夏合宿ではペナルティになっていたのですが、何試合か経験してFWが成長してくれたおかげです」
──今日の一勝の価値は?
「去年、東芝さんに負けて、もちろん今年は違うチーム同士になっていますが、やはり特別な感情があります。自信になりました」
──廣瀬キャプテンはリベンジしたいと言ったが?
「まあ、負けるのはキツいので‥‥。ここ3年、そんな感じなので、あと12試合、勝つべきときに勝つという力を身に付けていけたらと思います」
──1対1のタックルが良かったが?
「実際、三洋でゲームに出るには1対1のタックルができないと。責任感というか、皆に認められたいという気持ちがありますね。技術的にはスローペースで練習します。今日は皆、1対1で体を張っていましたね」
──キャプテンは暑さでかなり消耗している感じだが?
「僕は、普段、この時間は寝ているんです(笑)。今日は本当に疲れました」
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