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サントリーサンゴリアス 5-61 東芝ブレイブルーパス
(week12/2009年1月12日 at東京・味の素スタジアム)
東芝、不祥事の反省でチームがまとまりサントリーに記録的大勝
1月5日に報道された東芝ヴィヴィリ・イオンギ選手の窃盗容疑の不祥事により、一時は今後の試合の辞退もありうると心配された東芝ブレイブルーパスは、ヴィヴィリ選手の退部、瀬川監督の謹慎などの処分を経て、どうにか第12節以降も試合ができることになった。前節までにプレーオフトーナメントへの進出が確定し、この試合の結果が2位3位争いになると思われる両チームにとって、この試合へのモチベーションが問題となるが、不祥事で試合辞退とはならず、試合ができることから、チーム一丸となることが求められ、また、前日に三洋が4ポイントでの勝利だったため、東芝にとってはリーグ戦1位の可能性も出てきた。一方、勝敗がリーグ戦の2位か3位となる違いだけとなるサントリー。この両チームのこの試合への取り組みの姿勢の違いが大きく出た試合となった。
サントリーはFW第一列の尾崎・青木・池谷、SHグレーガン・田中、CTBニコラスらのレギュラーメンバーを休ませたスターティングフィフティーンとした。一方、東芝はほぼベストのメンバーで試合に臨んだ。
この日はサントリーの自慢の強いスクラムとはならず、FWのセットプレーでの優位を出せない。前半10分にはラインアウトから東芝FL中居が抜け出し、ボールをもらったLO大野が快走し、トライ(ゴール成功)、さらに16分にもラインアウトから東芝SOヒルが抜け、CTB仙波がトライ(ゴール成功)し、14-0と試合をリードした。サントリーFWのラインアウトのサイドディフェンスの甘さが目につく。その後も25分にモールサイドをSOヒルが抜けて大きくゲインし、最後はWTBロアマヌが強い走りでサントリーのディフェンスを破り、中央にトライ(ゴール成功)、33分にもラインアウトからのボールをLO大野が抜けてトライ、40分にはNo.8豊田の快走からバックスにつなぎFB吉田大がトライ(ゴール成功)と、前半だけで5トライ、33-0と大差をつけて試合を決めてしまった。
後半に入り、観客も、サントリーはこのままでは終わらないだろうと期待したが、東芝がさらにトライを積み重ねることとなり、後半にも4トライ。東芝フィフティーンは後半も集中力は途切れず、サントリーのアタックの場面も、東芝の好ディフェンスでターンオーバーという場面も多く見られた。最終的にはサントリーは1トライのみ、61-5の記録的大差の結果となった。東芝は次節の対三洋戦で5ポイント差の勝利をすれば逆転してリーグ戦1位となることになり、対三洋戦が面白くなった。一方、サントリーはメンバーを落としたとはいえ、このような大敗をしたことは、プレーオフ、日本選手権と大事な試合が続くことを考えると、フィフティーンの集中力・ディフェンスに不安が残る。(正野雄一郎)
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清宮監督(右)、山下主将
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◎サントリーサンゴリアス
○清宮克幸監督 「府中ダービーでたくさんの観客の皆様に来ていただきながら、不甲斐ない結果になってしまったことを申し訳なく思います。もちろん、もっと熱く競った好ゲームにするつもりで臨んだのですが。結果的に今日の東芝さんの出来は素晴らしかったということでしょう」
──先週よいパフォーマンスの田中選手を起用しなかったのは?
「チーム内の競争で、選手の成長の度合いを一つ一つ確認したいと思ったからです」
──先を見ての選手起用か?
「そういうものではないでしょう。もちろん、持っているものすべてを出すゲームでなかったのは事実ですが、それでも、これだけの点差はある程度の現状を示しているのではないでしょうか。もう少し、余裕を持って接戦にできる力関係だと踏んでいたのですが」
──ハーフタイムの指示は?
「もう、かなり点差が開いていたので、最初の5分で獲れなかったらこの試合は終わると。過去には、追いついたゲームもありましたが、後半最初の東芝さんの入りもよかったと思います」
──今のチーム力は?
「キーマンとなるライアンやFWがいなくなったりしているけれど、また、全力を出さないと、持っているものすべてを出さないと競った良い試合ができないということです。サントリーのラグビーを支えるプレーヤーが数名いますが、そういうプレーヤーがしっかりできないとこうなるということですね」
○山下大悟主将 「熱い試合をしようと臨んだのですが、東芝さんの圧力で受けに回ってしまいました。悔しいし、残念です」
──ここまで立て直せなかった理由は?
「僕の責任は大きいと思います。うまくいっていないときほどシンプルにやること、そこを徹底させられなかったのが敗因です。そこが試合で切り替えられなかったところです」
──東芝のダブルタックルは逆に穴も見えたのでは?
「ありました。けれど、うまく攻められませんでした。こちらも良い準備ができたと思うし、ただ、今日の東芝さんが素晴らしかったと思います」
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和田監督代行(右)、廣瀬主将
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◎東芝ブレイブルーパス
○和田賢一監督代行
「本日はどうもありがとうございました。今回の事件では関係者、ファンの皆様にご迷惑をおかけし、本当にお詫びしたいと思います。試合をさせてもらうことができ、多くの皆様に応援していただけて感謝しております。
今日は、今まで瀬川監督がやってきた、ブレイクダウン、もしくはエリアマネジメント、前へ出るということを選手がやりきってくれたと感じています」
──ブレイクダウンもラインアウトもすごかったが。
「サントリーさんのラインアウトは攻防の生命線でした。うちの武器と思って入念に準備した結果が出せました」
──監督の難しさを話しておられたが?
「選手も監督代行もスタッフはスタッフとして、一つになってこのゲームができたと感じています。難しさというより、今日は選手がやらなければいけないことをやってくれたのでそこまでの大変さは感じませんでした。この試合、モチベーションは高かったのですが、うまくいかないと空回りするので、いかに試合に集中させるか、僕自身ナーバスになりました」
──地方遠征等での行動規範は?
「ラグビー部チームとしての規律、あるべき行動について選手も話し合いましたが、会社のほうでも一つの方向性を出すべく準備をしております」
○廣瀬俊朗主将
「まず、プレーできるかどうか分からないようなことになって、ラグビー界やマスコミの皆様、もちろんファンの皆様にご迷惑、ご心配をおかけしたことについてお詫び申し上げます。
試合に関してはこの事件がきっかけとなってチームが一つになったと感じています。まず、試合に入ったとき、東芝ファンの方がいらっしゃってくださったことに感激しました。それに応えたかったので、この結果には‥‥安心しています」
──チームとしてどう取り組んだのか。
「今回の件で、自分たちはどうしていくべきか考えて、最初はプレーできるかどうかという状況だったので、(プレーできる)感謝の気持ちを見せたいと、メンバー以外のスタッフも含めてやってきました。選手だけでどうしていくべきか2時間近く話し合いました」
──この点差になったのは?
「最初のほうはちょっとミスも出ましたが、わりと皆、ただ単にプレーするのでなく、一人ひとりが考えていたからだと思います」
──ゲーム中のコミュニケーションは?
「今週は選手たちのチームへの忠誠心、取り組み方が大きく変わりました。練習中から変わった、そういう部分をお見せできたと思います。今までのシンビンのケースでは一般的に守ろう、時間を稼ごうという戦いになりがちでしたが、今日は皆そんなことは忘れていました。まったく関係なく攻めようと言っていました」
──ハーフタイムは?
「もちろん、サントリーさんはこのままで終わるわけがないと、和田監督代行が指示してくれたように、もう一度イーブンの気持ちで行こうと言いました。また、今日は単なる1試合でなく、大きな試合なんだということも伝えました」
──サントリーともう一度どこかで当たる時にこの大勝はどう影響するか?
「どうですかね。今日は次に当たることなんて、まったく考えていませんでした。僕たちは東芝らしいラグビーをしたいし、次もブレイクダウンでガツガツ行きたいです。三洋さんが昨日4ポイントだけでしたので、ちょっとしたチャンスがあります。4トライ獲って勝てば首位になれますから、次の試合は楽しみになりました」
──クリスチャンのあんなディフェンスは初めて見た。
「凄かったですよね(笑)。相手、大丈夫かと思います。練習のときも、もっとやれるといつも言ってきましたが、一番は彼の気持ちではないでしょうか」
──三洋戦に向けて。
「去年、マイクロソフトカップでギリギリの負けでしたので、最高の舞台でチャレンジしたいと思います」
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