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ヤマハ発動機ジュビロ 31-19 九州電力キューデンヴォルテクス
(week12/2009年1月11日 at静岡・ヤマハスタジアム)
勝ち点5で勝利したヤマハが5位に浮上。トップ4入りをかけ最終節に神戸と直接対決へ
9月に開幕した「2008-2009ジャパンラグビー トップリーグ」は、上位、下位ともに混沌とした順位争いが続きながら残り2節。第12節は、順位をひとつでも上げたい現在7位ヤマハと12位九州電力、どちらも勝ち点5が欲しく一戦必勝の体勢で臨んだ。
本ゲームは、ヤマハスタジアムのホームゲーム最終戦、天候は遠州特有の強風に加え箱型スタジアム独特の巻き風が吹き、冷たさが一層肌を突き刺すも見事な快晴のもと、熱心なファンの声援が両チームの力に加わり、熱い試合が繰り広げられた。
前半、キックオフから九電がCTBグレイを軸に連続攻撃を仕掛けるも、先制はヤマハ。7分、PGをFB五郎丸が確実に決め3-0。ヤマハは10分、その勢いで敵陣10m付近のスクラムからSO大田尾のパスを受けたCTBサウがゴールポスト右に飛び込みトライ、10-0とする。九州電力は16分過ぎ、ゴール前で得たペナルティを狙わずスクラムで勝負。18分、2度のスクラムから、No8マクベリー、SH村上、最後はSO齊藤が右中間に飛び込みトライ。意思統一された強さを見せ10-7と3点差に迫る。
その後、リズムを掴んだ九州電力がボールを素早く動かし前へ突き進むも、FLソーンを中心としたヤマハディフェンスが自陣ゴール前をしっかりと守り、BK陣の安定したキックで陣地を戻しながらハーフウェイを挟み一進一退の攻防が続く。攻めながらも九州電力のプレッシャーを受けていたヤマハだが、SO大田尾が冷静なゲームコントロールを見せ38分には、ペナルティから左へ展開、WTB冨岡が抜け出し左中間にトライ。17-7で前半を折り返す。
後半、試合の流れがどちらに傾くのか、ボールの行方を観客が固唾を飲んで見守る中、後半16分。九州電力のショートパントを自陣10m付近でキャッチしたヤマハWTB冨岡が判断よく右へ展開。パスを受けた交代出場のWTBマッコイドがディフェンスを跳ね飛ばしながら右中間にトライ。23分には、ヤマハがハーフウェイ付近のマイボールスクラムから展開、「前が空いていたし、いいランニングができた」とFB五郎丸がディフェンスをものともせず、40mを力強く走りきって右中間にトライ。強いランナーを走らせるシンプルな攻撃で、ボーナスポイント獲得の貴重な4トライ目を上げ、31-7とヤマハがリードを広げる。
しかし、ここから九州電力が怒涛の反撃。27分に敵陣でのラインアウトから左に展開しFB今村がトライ。34分には、シンビンでヤマハが1人少ない時間帯にトライを上げ31-19。残り時間、敵陣内で九州電力がチームカラーを象徴するような継続攻撃を見せ、ワンプレーごと悲鳴と歓声が上がる。しかし最後は密集でこぼれたボールを交代出場の佐藤がタッチに蹴りだし守りきったヤマハ。
MOM(マン・オブ・ザ・マッチ)は、攻守に存在感を見せたFLソーンが初受賞。
試合後、暫定ながら5位へ順位を上げたヤマハ堀川監督は、「やることで結果がついてくるはず」、九州電力の中村主将は、「来季、ヤマハや他のチームと同じ場所で戦うためにもやるしかない」とコメントし、それぞれのプライドをかけ最終節に臨む。
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堀川監督(右)、山村キャプテン(中)、ソーン選手
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◎ヤマハ発動機ジュビロ
○堀川隆延監督
「今シーズン最後のホームゲーム、会社の皆様の前でしっかりと結果を残せたことは非常に満足しています。ゲーム内容も、前半はセットピースに苦しみましたが、少ないチャンスで確実に得点が取れたことは、評価できる部分であり、今日の5ポイントは、次に繋がるポイントとなりました。神戸との最終戦に向けては、自分たちがこの1年間やってきたことをすべて出し切れるよう、いい練習をし、いいチームにしていきたいと思います」
○山村亮キャプテン 「試合中は苦しい時間帯もありましたが、多くのファンを前にホーム最終戦を5ポイントで勝つことができ、本当によかったです。来週のトップリーグ最終節、神戸製鋼戦は大一番。この1年間やってきたことの集大成であり、持つ力のすべてを出し切る試合をしたいと思います」
○MOM(マン・オブ・ザマッチ):ルーベン・ソーン選手
「ホームゲーム、ヤマハサポーターの前でいい試合をお見せすることができ嬉しいです。まだトップ6やトップ4に残れるチャンスがあるなかで、監督、キャプテンが言ったように、自分たちのやるべきこと、マネージメントをしっかり遂行し、4トライを上げ、ボーナスポイントを取って勝てたことは、チームにとっても大きく非常に満足しています」
──今日は、先週のサニックス戦で出た反省点の、キックや展開等が修正されたと感じました。
○堀川監督
「反省点を選手がしっかり理解し、グラウンドで練習したことをすべて試合に出してくれ満足しています」
──ハーフタイムの指示は。
○堀川監督
「ゲームキーワードのなかで、セットピースでプレッシャーをかける、マイボールをしっかりキープする、ディフェンスにおいてコンテストをしていく、ボールキャリアが我慢しボールを出すといった、シンプルな部分を伝えました」
──フォワードで苦しい場面もありましたが、試合中に修正できた要因は。
○山村キャプテン
「ラインアウトに関しては、ハーフタイムに木曽さんが指示を出してくれました。スクラムは、もう一度シンプルにヒットし、8人の一体感をしっかりと確認しました。ハーフタイムで修正でき、後半はラインアウト、スクラム共に安定しよかったと思います」
○ソーン選手
「修正は基本的な、いわゆる小さなことをしっかりやる。それを実行した結果、前半崩れていた部分が後半の安定に繋がったと思います」
──後半29分過ぎ、シンビンで1人少なくなった時間帯にピッチ上の指示は。
○山村キャプテン
「基本的には通常と変わらずシンビン中も、インサイドからのプッシュや後半戦よくなってきたブレイクダウンでファイトし相手の球出しを遅らせる、などの意識を強く持ちました」
○ソーン選手
「ひとりひとりが一生懸命やろう、そしてコミュニケーションを上げることで、人数が足りない分をカバーしようと言い続けました。そういったことは、練習のなかでしっかりやってきました」
──最終戦に向け、この1週間の過ごし方は。
○堀川監督
「1週間といっても、練習ができるのは2日か3日。何かを大きく変えるのではなく、これまでやってきたことのなかで1番大事なこと、ヤマハの強みにフォーカスし、試合で出せるようやっていきたいです」
○山村キャプテン
「監督の言うとおり、今までやってきたことや、後半戦によくなってきたディフェンス等をしっかりやっていきたいです」
○ソーン選手
「小さなことをしっかりと積み重ね、さらなるステップアップをしていく。神戸は非常に強いチームで、自分たちの1番いいところを出さなければ勝てない相手。準備や心構えをしっかりと作り試合へ臨みたいと思います」
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神田監督(右)、中村キャプテン
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◎九州電力キューデンヴォルテクス
○神田識二朗監督 「今日は何としても勝ちたかった試合でしたが、残念な結果に終わりました。内容としては、ヤマハさんの固いディフェンスに幾度となくチャンスの芽をつまれてしまったというか、そこで得点することができませんでした。選手たちは、後半最後まで勝ち点を取るため、本当に一生懸命やってくれたと思います。このひたむきな姿がチームの姿勢。それが次のゲームに必ず活きると信じています」
○中村嘉宏キャプテン 「(遠い)磐田という試合会場にも関わらず、たくさんのファンに来ていただき非常に心強かったのですが、このような結果で残念に思っています。残りあと1試合、やるしかないので、そこに向けこの1週間に全力を注ぎたいと思います」
──今日のゲームプランは。
○神田監督
「ヤマハさんの陣地に入り、九電の持ち味である速い球出しからの継続攻撃を考えていました。しかし、三次攻撃あたりでミスが出て、最後まで正確なプレーができず残念でした」
──ハーフタイムの指示と残り1戦へ向けて。
○神田監督
「選手たちには、ノーサイドの笛が鳴るまでしっかりプレーしよう。あと、折り返しで点差がさほどなかったのでひっくり返そうと言って送り出しました。実際、後半は非常に集中しやってくれました。結果は出ていませんが、内容は悪くないと思っています。ただ、負けてしまうのは、ミスも含めところどころ正確なプレーに欠けている部分があります。とにかく、理屈を抜きにして気持ちを前面に出していきたいです」
──前半15分過ぎ、ゴール前のペナルティでペナルティゴールが狙える位置からスクラム選択。その点を含めて今日のFWを振り返ると。
○中村キャプテン
「あの時間帯まで、スクラム単体としてイーブンぐらいと思っていました。チームには、ゴール前スクラムからのオプションもあります。トライを取りたい気持ちもあり、スクラムを選択しました」
○神田監督
「今年から、スクラムの際は5m下がらないといけないルールになったことで、ゴール前5mぐらいの位置ならスクラムを選択すれば、アタック面で非常に有利な点があると考えています。ペナルティの位置がゴール前中央でしたので、そういった意味も含め、アタックのオプションからスクラムを判断したと思います。僕も同じ判断でしたので、選択は間違っていないと思います」
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