サントリーサンゴリアス対トヨタ自動車ヴェルブリッツ、両チームともプレーオフトーナメントへの出場は確定、結果次第で2位となるか3位となるかの試合。ただし翌試合の対戦が2位対3位なのでどちらが勝っても顔合わせは同じとなるため、モチベーションが上がらない心配もあったが、両チームとも開始から激しい気迫でプレッシャーをかけ、お互いに22m陣内には簡単には入れない。
最初のトライはヴェルブリッツ、サンゴリアスのハンドリングミスからこぼれたボールを中山が拾ってゴールに持ち込み、ゴールも成功し前半6分で7-0とする。次のトライもヴェルブリッツ、久住の突破からクロフォードが中央に回りこみ、トライ・ゴールで14-0とリードを広げる。前半20分にはサンゴリアスのBKがスピードある展開を見せるもトヨタのディフェンスが厳しい。反対にヴェルブリッツはサンゴリアスのペナルティからロングタッチでゲイン、そのラインアウトからのボールを細かく繋ぎ、SO黒宮が落ち着いてDGを決め、17-0となる。そして前半最後の得点もやはりヴェルブリッツ、難波が相手がこぼしたボールを拾ってトライ、ゴールも成功、24-0で予想以上の大差で前半終了。
後半もヴェルブリッツペースかと思ったが、後半最初のトライはサンゴリアス、ハビリの豪快な走りで反撃開始、トライ・ゴールを返す。後半15分にはサンゴリアスがラインアウトからモールを押し、左隅に佐々木がトライ、ゴールははずしたが24-12と点差を縮める。17分にはヴェルブリッツのラインアウトの乱れをつき、サンゴリアスがボールを獲得、グラウンドの右から左までいっぱいに展開、次のキックでまた右サイドへ。そのボールを篠塚が拾いトライ、24-17とする。
このサンゴリアスの勢いをヴェルブリッツが断つ。遠藤がすばらしいスピードで相手を抜き、最後は久住が左隅へトライ、自ら角度のあるゴールも決め、31-17。しかし次のトライはサンゴリアス、モール最後尾から佐々木がボールを持ち出し左隅へトライ、ニコラスが難しいキックも成功させ31-24と射程圏内、プレーごとに攻守が入れ替わる展開に目が離せない。そしてついに残り5分の時点でサンゴリアスが追いつく、右サイドのモールから左へ展開、ロング飛ばしパスが決まり、最後に栗原からパスを受けたトライゲッター小野澤が左隅へ飛び込む。ゴールも成功し31-31、会場が沸いた。
後半40分、ホーンが鳴った時点でボールをキープしていたのはヴェルブリッツ、試合を切れば負けはないが順位は3位のまま、それでは納得できないと果敢に攻めるが敵陣10mでペナルティを取られてしまう。ここでサンゴリアスは自陣にも関わらずスクラムを選択した。前半出場していたベテラン坂田がハーフタイムに「組めれば押せる」と言っていた自信が見える。ここからが長かった。サンゴリアスは相手反則で得たペナルティでかなり距離があったがゴールを狙う。1回目は栗原、そして2回目は野村。2回とも同じような位置から、そして同じようにはずし相手がボールをキャッチして反撃という、まるでビデオを2回再生しているような光景だった。しかし2回目のキックをキャッチしたヴェルブリッツは右サイドを駆け抜けトライが見えた瞬間、タッチジャッジの手が上がる。なんとぎりぎりでラインを踏んでしまいゲームが切れた。ランニングタイムにして約55分、雪がちらつく寒さを吹き飛ばすような熱い展開に観客席も盛り上がった。結果は引き分け、両チームとも同じポイントが加算されるので試合前と順位は変わらず、サンゴリアスが2位、ヴェルブリッツが3位でプレーオフ、マイクロソフトカップに臨むこととなる。前節の試合後のインタビューで清宮監督が「(順位によって対戦相手が変わらないとしても)プライドがありますから2位通過します」と言っていた。両チームの勝ちに対するプライド、最後の15分間でしっかり見せてもらった試合だった。
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石井監督(右)、麻田キャプテン
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サントリーサンゴリアス 31-31 トヨタ自動車ヴェルブリッツ(2月9日)
◎トヨタ自動車ヴェルブリッツ
○石井龍司監督 「今日の試合、1週間延びたので、モチベーションを保ち続けるのが難しいなか、このようなゲームができたのを評価したいと思います。春から続けてきたことを80分間出せたと思います」
──モールからトライを獲られたが。
「その辺は心配していません」
──チームの建て直しは?
「特にありません。春からやってきたことに間違いはないという信念があります。やり続けていけば、おのずと結果はついてくると思います」
──80分、グラウンドレベルで見ていて?
「俗に言う『軽いプレー』が前半の途中から見受けられました。ボールを丁寧に扱っていくということです」
──黒宮選手については。
「後半、劣勢に回ったときに若さが出ましたが、他には満足しています。キックミスは足場が悪いせいで、環境に合わせることが大事だという良い経験になったと思います。文句なく、プレーし続ければトヨタのSOとしてやっていける選手です」
○麻田一平キャプテン 「まず、簡単には勝たせてくれないと感じました。前半、あれだけ点差が開いたのに、サントリーさんの粘り強さがあったと思います。春から取り組んできた基本プレーでトヨタは攻め勝つことを目指していますので、もう一度激しい練習をしてチャレンジしたいと思います。トヨタはリーグの後半になるにつれて成長してきました。僕らはプレーオフが決まっているわけではなかったので、この1戦にかける思いは100%出せたと思います」
──反省点は?
「トヨタはボールを動かして攻め勝つという意識でやっています。ただ、今日はボールキャリアーがドライブしていないしサポートも遅れたのに比べて、向こうのジャッカルは速くて意識が高かったと思います。前半は自分たちのラグビーができていたので、ハーフタイムにしっかりもう一度と声をかけたのですが、サントリーさんの低く激しいラグビーを受けてしまったと思います」
──黒宮選手は?
「練習から、二人でこうしよう、ああしようと考えてきました。初スタメンでこれだけできたらすごいと思います。僕が足を引っ張ってパスの精度を下げてしまったのが悪かったと思っています」
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清宮監督(右)、山下キャプテン |
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◎サントリーサンゴリアス
○清宮克幸監督 「今日は去年の日本選手権を思い出す内容の試合でした。去年と違って、きっちりゲームを組み立て、我々の強みを生かせたと思います。観客の皆様の反応も、最初は何となくフワーッとして、勝っても負けてもという感じだったのが、試合内容で反応が変わってきて、ラグビーの醍醐味を感じていただけたのは収穫でした。来週の花園も盛り上がると思います」
──スタメンは先週と一緒だったが。
「1週間前に良い状態のメンバーを選び、今週になって数名、怪我の状態が良くなった者もいましたが、うちはメンバーに選ばれるという行為に重きを置いていますので、1回メンバーに選ばれて、チームメイトから祝福されて、それで試合せずに代えるのはチームとしてできなかったということです」
──三洋がサントリーの目標だった全勝を達成したが。
「素晴らしいチームを宮本監督以下、つくられたと思います。倒しがいのある、素晴らしいライバルだと思います」
──来週も同じ相手。
「メンバーは3、4名代わります。戦い方も、今日の前半のような戦い方はしません。中7日あるので、しっかり準備して臨みたいと思います」
──ディフェンスは?
「今日は、前半はほとんどゲームプランを遂行していない試合でしたが、収穫で比較するとサントリーのほうがかなりある試合だったと思います。もちろんトヨタさんも勝っている部分がありましたが、サントリーも勝っている部分がかなりある。相手の強みを消す行為が要求される試合になると思います」
○山下大悟キャプテン 「監督と一緒です(笑)。1週間開いて、同じ相手と戦う可能性が高く、今日、試合できたことがプラスになるゲームでした」
──フォーンの後が長かったが。
「ペナルティキックで決まるかなと思っていましたが。決着をつける意味で、トヨタ戦も次が楽しみになりました」
──引き分けでよいとは思わなかった?
「思わなかったです」
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