FWが優位に立ち、HB陣がリードするNECグリーンロケッツは強く、リコーブラックラムズを前半の1トライに抑えて快勝した。
リスタートキックオフのためのボールを抱え、ピッチ中央へと懸命に駆けて行くボールボーイ(この日は世田谷ラグビースクールの小学生)の微笑ましい姿にスタンドから拍手が沸いた。前半36分、リコー初トライの後である。残念ながらリコーのトライはこれだけ。残りの時間はNECが終始ゲームを支配した。
生で観戦する面白さの一つはキックである。地上での激しい争奪戦から抜け出したかの如く優雅に空中を飛んで行くボールの美しい回転や軌道は、テレビ画面を通しては充分には伝わらない。リコーCTB金澤の高いキックオフやSO河野の長いタッチキック、NECではFB松尾のゴールキックも良かったが、ここでもSOヴェストハイゼンは多彩なキックを見せてくれた。確実にタッチを切る時はバックスピンをかけ真っ直ぐ飛ばし、距離を出す時はスクリューをかけ低く蹴り出し、キックオフのドロップキックも高かった。5月の南半球スーパー14決勝ではブルズ(南ア)のインパクトプレーヤーとして出場、試合後にはゴールポストによじ登り優勝の喜びを爆発させていたが、今はすっかりNECの正SOに戻ったヴェストハイゼンはこの日、前に出たり横に動いてタメを作ったりしてラインをリード、隙あらばラインブレイクし、前半には自らトライも記録した。素早い球出しやボックスキックでヴェストハイゼンを助けたSH辻や、FBに回り3トライを上げた松尾、トップリーグでもその強さを発揮したWTB首藤など他のNEC選手達も目立っていた。リザーブスタートだったFLマーシュも後半33分、こぼれ球を拾って自陣から約60mを走り切りトライ、NECサポーターは大満足だった。
リコーは、BKにボールが回れば日本代表CTBロビンスや7人制代表FB小吹などがチャンスを作れるが、FWがボールをキープできず、FL伊藤主将を欠いたディフェンスも弱かった。前半のトライはロビンスがマークを巧くズラしたところから生まれたものだが、これを含めてゴール前へボールを運べたのは僅かに2〜3度。名門復活への道は険しく、開幕節で上げた1勝の後は苦しい戦いが続いている。(米田太郎)
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佐藤監督(右)、河野バイスキャプテン
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リコーブラックラムズ 7-33 NECグリーンロケッツ(12月15日)
◎リコーブラックラムズ
○佐藤寿晃監督 「敗因はラインアウトの獲得率の低さとゲームメイクの問題です。前半、ミスから得点され、相手にリードされたまま戦うしかなかったのが響きました」
――どのような練習を?
「先週の反省からラインアウト、モールをしっかりやろうと取り組んできました。NECさんは分析がしっかりしているので、新しいサインプレーを練習してきたのですが、臨機応変にプレーできないというか、張られている所へサインどおりにしか放れず、キープできませんでした」
○河野好光バイスキャプテン 「前半、立ち上がりの20分から30分は思うようにエリアが取れず、ミスからトライを獲られるというパターンでしたが、前半残りの10分と後半途中までは自分たちの目指すラグビーに近いものができたと思います。些細なミスから得点されてNECさんの勢いをつけさせたのは反省点です」
――目指すラグビーに近いものができたわけは。
「前半、2トライ獲られたんですけど、流れとしてやられてはいないと、皆、集まったときに選手たちが逆に盛り上げてくれたので、そのままリズムよくできたと思います」
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細谷監督(右)、浅野キャプテン
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◎NECグリーンロケッツ
○細谷監督
「ありがとうございました。前半は我々のラグビーをさせてもらえませんでした。ミスが多く、中盤から相手のペースにさせてしまいました。1対1のプレーをしっかり修正したいと思います。ディフェンスではワンラインのセットスピードが遅くて抜けられたので、後半はマーシュを投入してスペースを埋め、ようやく自分たちのペースをつかんだと思います。(4トライ以上で)ボーナスポイントを取れたのは良かったと思います」
――3列について。
「セミシはラインアウト、セットの強さで大東を入れました。ディフェンスが少しぶれましたが、ゲームがこう着状態になったときにグレンがまとめてくれるので、厳しいときにグレンを入れようというプランどおりでした。3人の外国人フランカーは非常に良いので、誰を使っても最高のパフォーマンスをしてくれています」
――箕内選手は?
「前節、ふくらはぎに乗られて、今週はじめに練習に出られなかったのと、日高が成長してきていますので経験を積ませる意味で出しました。箕内がいなくてこのスコアは今までにないことです。選手が伸びていますので、これからが楽しみです」
○浅野キャプテン
「今シーズン初の秩父宮で、やっぱり東京ということでお客様がたくさん来てくださって、まず、ファンの皆様に感謝したいと思います。前半はセットが安定せず、あの点差となりましたが、後半修正して得点につながったかと思います。1対1のディフェンスなど、これから詰めていかないといけないところもありますが、まず、IBM戦に向かってもう一度強いチームを作って戦っていきたいと思います」
――年明けから上位チームと当たるが。
「正直、そこまで見ていません。まずはIBMさんに勝つことしか考えていません。勝たないとトップ4に残れません。上位のゲームを見ると、クロスゲームばかりでミスひとつがきっかけでスコアされています。まず、NECはディフェンスをしっかりする、自分たちの強みを出したいですね。タイトな試合になるほど重要になります。アタックはシンプルに、ミスをなくすことが大切です」
――後半40分過ぎに回したのは、得失点差も考えて?
「10メートルラインの5メートル内側の地点でしたし、得点を取りにいこうと。選手の意識の中でもう一本取りにいこうというのが強かった」
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