トップリーグ5年目がスタート!開幕戦最初の勝者はサントリー
キャッチフレーズ「FOR ALL」を掲げ、10月26日(金)秩父宮ラグビー場でのナイトゲームでジャパンラグビー トップリーグが開幕した。
今シーズンの開幕戦は、昨年度のプレーオフトーナメント マイクロソフトカップ決勝の再現「東芝ブレイブルーパス対サントリーサンゴリアス」。あいにくの雨にも関わらず、秩父宮ラグビー場に9000人を超える観衆を集めて行われた。
開幕セレモニーには、和太鼓音楽集団「鼓代神(こだいじん)」が登場。雨の中を駆けつけたラグビーファンの開幕ゲームへの期待の鼓動となって、秩父宮を揺らす。そして、森会長の開幕宣言に続き、待ちに待った両チームの選手が入場。いよいよ、2007年度ジャパンラグビー トップリーグの開幕だ。
19時30分、東芝SO廣瀬がキックオフ。サントリー陣深く蹴りこんでFWを前に出す東芝、跳ね返すサントリー。このゲームを象徴するかのようなスタートだった。ラックの球出しからBKに展開し、ゲームのスピードを上げたいサントリー。しかし、激しいタックルからブレイクダウンの数が増せば東芝の接点の強さが引き出される。お互いがしつこくボールにからんでターンオーバーを狙う。ペナルティを犯したチームが崩れる、そんな予感がする。
サントリー最初の得点は、東芝のペナルティから。19分、サントリーのラック、モールの繰り返しに、勢い余った東芝FWがオフサイド。これをライアン・ニコラスが正確なショットで決める。(0-3)
それでも東芝のディフェンスは前に出続ける。ラインアウトからニコラスのランプレーに、東芝CTB冨岡がビッグタックル。雨の中、傘もささずに声をからすバックスタンドの東芝応援席を沸かす。しかし、前半33分ここで思わぬアクシデント。東芝の切り札マクラウドが肩の故障で退場。東芝BKの今後のアタックに少なからず影響が出そうだ。(前半0-3)
小雨になった後半、さらに両チームのコンタクトは激しさを増していく。東芝の低く鋭いラック、そして停滞すると3人でスタンディングモールを固め前へドライブ。幾度となくこの練習を繰り返してきたのか。東芝の接点へのこだわりは、今年もかたくなに思える。
しかし後半18分、一瞬のプレーからゲームは動き出す。
サントリーは中盤のラインアウトをクリーンキャッチ。SO野村は思い切って前にしかけ、タテに走りこんだプレーヤーをダミーにロングパスを放つ。雨の中、動きの鈍かったサントリーBKが輝きを見せた。ワールドカップで鋭さを増した小野澤のしなやかで、力強いランニング。タッチライン際で3人をかわし、フォローしてきたFB有賀へパス。今年のトップリーグ最初のトライはサントリー有賀が決めた。東芝BKのディフェンスが唯一乱れた瞬間だった。(ニコラスのゴールも決まり0-10)
その後、24分、東芝は激しいラックの連続からオトが密集の中央を突破。サントリー陣深く攻め込み、得たペナルティをFB吉田が確実に決めて7点差とする。(3-10)
東芝は攻め続ける。この時間帯でのブレイクダウンを征し、激しく前進。そして、ペナルティを得るとロングキックでサントリーゴール前に。しかし、今日の東芝はここでのラインアウトが捕れない。サントリーFWの素早いリフトがプレッシャーをかける。昨年のこの両チームの攻防が思い出される。サントリーの進化が勝ったのか。雨が東芝の精密さを狂わせたのか。
東芝は最後までスクラム、ラインアウトで劣勢となり、サントリーゴールをおとしいれることはできなかった。今年から採用されたタイムキーパー制のもと、秩父宮に大きなフォンが鳴り響きノーサイド。
開幕ゲームとしてはトライがたった一つの動きの少ないゲームに見える。しかし、観衆の拍手は鳴り続けた。サントリー、東芝、両チームの選手たちの肉体が骨軋むまでぶつかる姿が目に焼きついたに違いない。戦いが終わり、最高のライバルとしてお互いを讃える姿は、やっぱりラグビーだからこそ。最初のゲームで最高の心の昂ぶりを感じさせてくれた。
「FOR ALL」日本にはトップリーグがある。
胸を張ってそう思えるゲームだったといえる。
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瀬川監督(右)、廣瀬キャプテン
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東芝ブレイブルーパス 3-10 サントリーサンゴリアス(10月26日)
◎東芝ブレイブルーパス ○瀬川監督
「雨の中、ありがとうございます。日本のラグビーを引っ張っていくTL開幕戦の試合ができるよう準備してきました。サントリーさんあってこその開幕試合でした。接点で勝てると臨んだ試合でしたが、ひたむきなサントリーさんのタックルにやられました」
――ラインアウトはサントリーが研究してきたのか、東芝がうまくいかなかったのか。
「両方です。東芝の精度も良くなかった面もありましたし、雨の中、投げる場所が決まっていたこともあります」
――豊田、吉田の両新人の出来は?
「二人とも層の厚い東芝の開幕戦22人のオーダーに入った選手です。相手の対面に負けているとは思わない活躍をしてくれました。これからが楽しみです」
――敗因は?
「一番の誤算はマクラウドが早いうちに退場したことで、ブレイクする選手がオト一枚になってしまったことです」
○廣瀬俊朗キャプテン
「サントリーさんがすごい準備をしてきたと感じました。思うようなゲームができず、向こうの思いに屈したかな。ただ、開幕戦ですので、これから東芝は一つ一つ上げていって、もう一度サントリーさんと当たるチャンスを得て、最後に東芝が勝ちたいと思います」
――キャプテンとしてトップリーグの試合は初めてだったが。
「今までもスタンドオフで試合に出てゲームの流れが分かっていたので、これまでとの違いは感じませんでした。もう一度チャンスが来たときに、これまではいつも、ものにしていましたが、今日はミスが出て、そこに弱さが出たと思います」
――敗因は?
「セットが思ったよりうまくいかなかったと感じました。良い状態で球が出てこなかったことが原因です」
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清宮監督(右)、大久保ゲームキャプテン |
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◎サントリーサンゴリアス
○清宮克幸監督
「開幕にふさわしい内容で、ペナルティも少なく、お互いにこだわりたいところをこだわった試合でした。これまで、たしか東芝さんには7連敗していました。今日の勝利は点差以上に重みのあるブレイクスルーでした」
――開幕戦について。
「開幕戦は勢いで勝つことが大事です。東芝さんはスロースターターなので前半からたたみかけたい。今日は、前半から獲れていたので、良いことです。ファンの皆様へは、間違いなく熱い試合をするとお約束します。あまり、言い過ぎて、試合場に入れなかったら困りますが。ちょうどワールドカップが終わってラグビーに飢えているときの試合で良いんじゃないでしょうか」
――戦い方に満足?
「今日はスクラムで勝ったという内容です。ラインアウト、バックスのアタックには不満足ですね。ラインアウトは東芝さんはここ数シーズン頑なに変えてこなかったことを、今日は変えてきたので、ちょっと準備ができていなかったですね。(大久保選手が「対応に時間がかかりました」と発言)そういうこだわりを変えてくるのが、監督が代わると違うなと感じた点です。ただ、去年のファイナルの内容は荒々しいもので、たくさんの危ない場面がありましたが、今日はかなり少なくなり、そういう意味では統制が取れてきたと思います。フォーカスしたことを体現できるようになったということです。まあ、これがファイナルだと平常心を保つのは難しいかもしれませんが」
――テレビインタビューでは全勝宣言が出ましたが。
「いつも言ってます(笑)」
――今後のテーマは。
「今日は勝つために、最低限必要なことを試合で出しましたが、もっとサンゴリアスらしさを創っていかねばと思います」
○大久保直弥ゲームキャプテン 「ありがとうございました。見ているほうは地味でつまらない試合だったかもしれませんが‥‥。(清宮監督が「やってるほうは、な」と助け舟)‥‥大変な試合でした。正直、目標として来たチームに勝てたことを自信にしていきたいと思います」
――戦い方は?
「やっぱり、2年、3年、日本のラグビーを引っ張ってきたチームです。今日勝ったといっても、このコンディションですし、運も大きいと思います。チカラ的には一緒だと思います」
――反省点は?
「まあ、このコンディションですので、ボールを動かすのはお互いに難しい、フォワードサイドで勝負だと思っていました。うちが勝った場面もあれば、東芝が勝った場面もありました。そんな中で、バックスがワンチャンスをものにしてくれたのが大きかったです」
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