10年目を迎えたトップリーグの歴史の中でリーグ制覇5回を誇りながら、この2年間は無冠に終わっている東芝ブレイブルーパスと、昨シーズン9位のNTTコミュニケーションズシャイニングアークスの一戦が秋の風を感じさせはじめた秩父宮ラグビー場で行われた。
東芝は直近のプレシーズンマッチで昨シーズンの王者サントリーサンゴリアスとの接戦を制し順調な仕上がりを見せている。一方のNTTコムもこの一戦に向け準備は万端、初戦での金星を狙う。
試合は東芝SOデイビッド・ヒルのキックオフで始まった。
前半5分、まずは東芝SOヒルがPGに成功(3-0)。スクラムが安定しないNTTコムに対して東芝はFLスティーブン・ベイツの突破などで試合を優位に進める。19分に再び東芝SOヒルがPGに成功(6-0)、23分にはNTTゴール前のラックからSH藤井-WTB廣瀬とつなぎ中央にトライ(G成功 13-0)。セットプレーでリズムがつくれなかったNTTコムだが、26分、連続攻撃からFL小林がラックサイドを抜け出し、そのまま中央にトライ(G成功 13-7)。
ここで神宮の空に打ち上げられた花火が合図であったかのように、視界が遮られる程のゲリラ豪雨が発生。雨は間もなくあがったものの、悪化したコンディションがハンドリングミスを誘い、両チーム追加点が取れないまま前半が終了した。
後半開始直後はNTTコムが試合を優位に進める。後半3分、NTTコムのSO君島が東芝陣22m付近からのPGを決める(13-10)。3点差に詰め寄られた東芝は13分、18分にSOヒルがPGに成功するが(19-10)NTTコムも20分、23分にPGを成功させ必死に食い下がる。しかし26分に東芝が怒涛の連続攻撃を繰り出し、入替で入ったSH吉田がNTTコムゴール前のラックからボールを持ち出し、ディフェンスを振り切ってトライを奪う(G成功 26-16)。30分以降はNTTコムが東芝陣内に攻め続け、SO君島のキックパスであわやトライというシーンも見られたが、結局得点に結びつけることはできずノーサイドとなった。
NTTコムは昨シーズン6-45で完敗した東芝に対してFL小峰、小林を中心にディフェンス面が機能し2トライに抑えたことには手ごたえを感じたのではないだろうか。林監督は「セットプレーの安定」と「最後の20分間のプレー精度」を課題として掲げているが、次節以降、チームスローガンでもある「Next one」の実現に期待したい。
初戦を飾った東芝は「スコアを取る」というゲームプランの浸透が今後のポイントになるだろう。過去の東芝のプレースタイルから見れば違和感があるのは否定できないが、王座奪還の為の戦略として、どのような完成形を見せるのか注目したい。また、リーチ、仙波といった主力選手を怪我で欠いての初戦であったが、若手の活躍は好材料。チーム内の競争も高まり、選手層の厚みにつながるだろう。
マン・オブ・ザ・マッチには新しいゲームプランを統率した東芝のキャプテン、豊田真人が選ばれた。(久野彰也)
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