福岡サニックスとNTTドコモがトップリーグ残留を決める
3日、来季のトップリーグ残留を懸けた入替戦2試合が行われ、トップリーグ組の福岡サニックスブルースとNTTドコモレッドハリケーンズが貫禄を示すかたちで勝利。来季のトップリーグ残留を決めた。
これで、すでに自動昇格を決めているトップチャンレンジ1シリーズ1位のキヤノンイーグルス、同2位の九州電力キューデンヴォルテクスを含めて、来季のトップリーグに参加する14チームが確定。
昨季トップリーグから降格したクボタスピアーズ、豊田自動織機シャトルズは1年でのトップリーグ復帰はならず、昇格は来年秋以降に持ち越しとなった。
最後の最後まで勝敗がもつれたNTTドコモ対クボタ戦を中心に、勝てば天国、負ければ地獄の入替戦の模様をレポートする。
|
|
決勝トライを奪うなど、相変わらず攻守に圧倒的な存在感を示してチームを勝利に導いたNO8箕内
photo by Kenji Demura (RJP)
|
|
NTTドコモは箕内の突破からFB沼田が奪った前半28分のトライ(写真)など、常に試合を優位に進めた
photo by Kenji Demura (RJP)
|
■
福岡サニックスブルース 39-17 豊田自動織機シャトルズ(前半15-5)──3月3日
■
NTTドコモレッドハリケーンズ 29ー27 クボタスピアーズ(前半17-10)──3月3日
やはり、最後に勝負を決めたのは、あの男だったか──。
この日、大阪・近鉄花園ラグビー場に駆けつけた4000人近くのファンの多くが、そんな感慨にふけりながら、家路に着いたかもしれない。
後半27分、NTTドコモレッドハリケーンズWTB平瀬健志主将がトライラインに迫った後のラックから、NO8箕内拓郎が体をねじ込むように前に出て、クボタスピーアズゴール内でしっかりグラウンディング。
このNTTドコモの、いや、日本のラグビー選手全体の大ボスと言っても差し支えないだろう元日本代表スキッパーのトライで29-27と再逆転に成功したNTTドコモが、残り10分間ほどをしっかり守り切って、トップリーグ残留を決めた。
「決勝戦の方が楽。負けたら落ちるというプレッシャーは本当にキツかった」
百戦錬磨の箕内でさえそんなふうに表現せざるを得なかった、トップリーグの座を懸けた一発勝負は、最後の最後まで勝敗がもつれる展開となった。
17-10とNTTドコモが7点リードして前半を折り返した直後の後半1分。
「(風上となる)後半は風をうまく使って、エリアをとっていけばチャンスが来る」(佐野順監督)という指示どおりに、キックオフから敵陣に攻め込んだクボタが22m付近での相手ボールのラインアウトをターンオーバー。前半から、ペアを組んでいたCTBカトニ・オツコロと共にたびたびNTTドコモディフェンスを打ち破る好走を見せていたCTBセイララ・マプスアが、パスダミーから一気にインゴールへ駆け抜けて同点へ(SO森脇秀幸のゴール成功で17-17)。
この後、8分にNTTドコモが途中出場していたHO緑川昌樹のトライで引き離しにかかるが、14分にクボタもSO森脇のトライ&ゴールで追いつき、さらに21分に森脇がPGを決めて、とうとう試合を引っくり返すことに成功した。
残り20分で3点のビハインドを背負うかっこうとなったNTTドコモだが、ピッチ上の選手に焦りはなかったようだ。
「押していた感があったし、トライを取れる自信もあった」(箕内)
自らの感触どおりに、逆転トライを取り切る大ボスの千両役者ぶりには脱帽するしかないが、ここ一番で勝利をものにできたのは、「チームとしてトップリーグでの厳しい経験が生きた」(高野一成ヘッドコーチ)からでもあるだろう。
逆転してからは、「この10分でラグビー人生が変わる。ネガティブじゃなく、ポジティブにそんな声が出ていた」(平瀬主将)といい、クボタに焦りからか攻めながらのペナルティが続いたのに対して、NTTドコモは相手のPG圏内では反則をしないしたたかさも見せた。
「最後は泥試合。でも勝てて良かった」
箕内同様、トップリーグや日本代表での十分過ぎる経験を誇る久富雄一は、そんな表現で地獄の一歩手前で踏みとどまったことを喜んだ。
恐らくは、その「泥臭く勝てるようになった」ことが、トップリーグでの成長の証。
最後に残った2点差は、今季トップリーグ13試合を死にものぐるいで戦ってきたか否かの差だったと結論づけても、それほど的外れではないはずだ。
ベストゲームをやって負けた」(クボタ今野主将)
「ドコモの気迫、スピアーズのプライド。ほんの少しの差が勝敗を分けた。これがラグビー」
試合後の記者会見で沈痛な表情を浮かべながらそう語ったクボタ・佐野監督の総括は、この日の死闘を目の当たりにした4000人に共通するものでもあるだろう。
「ベストゲームをやって負けた。1年間やってきたことが足りなかったということ」
25歳という若さながら、今季トップリーグ昇格という使命を持つ集団のリーダーに抜擢されてチームを引っ張ってきたLO今野達朗主将も、冷静に敗戦を受け入れていた。
|
箕内、ムリアイナ、久富など経験豊かなベテラン勢に引っ張られて勝負強さを身につけたNTTドコモ。残留決定の瞬間、安堵感が漂った
photo by Kenji Demura (RJP)
|
トップチャレンジシリーズ最終節の豊田自動織機シャトルズ戦で58-24で勝利を収めた時には、ほぼ自動昇格を手中に収めたと思われたクボタだったが、その直後の九州電力キューデンヴォルテクス対キヤノンイーグルス戦で、39点差以上での勝利を収めなければいけなかった九州電力が68-17という信じられないスコアでの大勝利を収めたことで入替戦に回ることに。
「(トップチャレンジシリーズの後は)チームのショック大きく、メンタル面でのダメージを取り除くのに1週間を要した」(佐野監督)という厳しい状況から、ベストパフォーマンスを出せるところまでチームを立て直したことには、素直に敬意を表したいと思う。
それでも、あと一歩のところで昇格に届かなかった真の原因はどこにあるのか──。
クボタにとっては、この1年間で得られなかった答えを探す1年間がまた始まることになる。
一方、大阪のゲームを上回るトライの応酬となった福岡サニックスブルース対豊田自動織機シャトルズ戦は、6トライを奪った福岡サニックスが3トライの豊田自動織機に39-17で順当勝ちして、トップリーグ残留を決めた。