12節を終えて6位の近鉄ライナーズ、少しでも上位に上がりワイルドカードでは有利な位置につけたい。一方、4強の一角を占めるNECグリーンロケッツ、この試合も勝って自力でプレーオフ進出の権利を手にしたい。今季共に実力を上げ好調な両チーム、レギュラーシーズンの最後を飾るに相応しい好ゲームが期待される。
試合は、いきなり2分、近鉄の突き刺さるようなディフェンスを受けてNEC自陣でオフ・ザ・ゲートの反則、近鉄SO重光泰昌がPGを確実に決め、3‐0のスコアで滑り出す。この後、近鉄は相手陣で優勢の内に試合を進めるが、決め手を欠きトライラインを割るまでには至らない。しかし、この試合前半、NECは、ブレイクダウン周りでの反則が多く、13分、18分と近鉄SO重光にPGを許し、9-0とリードされる。
しかしNECも近鉄の反則をきっかけにチャンスを掴み、22分、ラインアウトモールで攻め立てる。モールドライブは近鉄が粘り強いディフェンスで凌いだものの、NECは大きく左に展開し、最後FB大東功一からWTBネマニ・ナドロにわたり左中間にトライ、この試合初トライを挙げる(9-5)。さらに、30分、近鉄のゴールライン前でノット・ロール・アウェイの反則から、NECのFWがパワープレーでラックを連取し、最後は左LO浅野良太がサポートを得てインゴールに押し込みトライ(ゴール)、9-12とNECリードの内にハーフタイムを迎える。
後半、今度はNECが開始早々の2分、近鉄のオフサイドでSOキャメロン・マッキンタイアーがPGを決め、9-15と突き放しにかかる。この後10分ほど膠着した状態が続いた後、近鉄の猛反撃が始まる。まず、14分、相手オフサイドの反則でスクラムを選択、左タッチ際から大きく右に展開し、CTBジェフリー・イエロメが、ループしたSO重光に見事なオフロードパスを通し、浮かしたパスでWTBリコ・ギアに繋ぐと、ギア、タッチフラッグをかすめ、ダイブして右隅にトライ(ゴール)し、16-15と逆転。次いで、ファンの興奮も冷めやらない17分、ラックから左展開、SO重光から逆サイドに回り込んだWTBギアに繋ぐと、ギアはディフェンスの裏に絶妙のゴロパント、WTB坂本和城がキャッチして左隅にトライ(ゴール)し、23-15。さらに24分、SH金哲元のパスアウトをFBキャプテン高忠伸が10mライン付近からグラバーキック、これをWTBギア、よくキープし、そのまま右隅にトライを挙げ28-15。さらに、ディフェンスでも俄然動きの良くなった近鉄、30分には、相手ブレイクダウンにターンオーバーする勢いで走り込み、オフサイドを誘発、SO重光のPGで加点し、31-15と勝利を大きく引き寄せる。
しかし、ここからは、NECがプレーオフをかけて意地の猛追をかける。35分、ラインアウトから攻撃を継続し、G直前のラックから右PR田中光がインゴールに押し込みトライ、ゴールもなって31-22とし、その後ノーサイドホーンの鳴り響いた後も懸命の追撃を繰り返すが、最後で痛恨のパスミス。近鉄FB高がピックアップし、落ち着いてタッチに蹴り出してホイッスルが鳴り、熱戦に終止符を打った。
マン・オブ・ザ・マッチには、コンバージョンキック、エリアマネージメントに傑出した働きを見せた近鉄SO重光が選ばれた。
試合後の会見でNEC岡村要ヘッドコーチは、「ミスやペナルティで自滅した試合。特に後半のシンビン(9分、HO臼井陽亮、ハイタックルによる)は痛かった」と試合を振り返った。確かに近鉄は、NECが14人で劣勢となる間に2トライを挙げてはいる。しかし、高キャプテンが「我々は好調なのではない、現在の成長した姿が我々のベースラインなのだ」といみじくも述べたように、近鉄は、この試合で、地元ファンの熱烈な応援という相乗効果も得て、現在の成長し続ける力をトップ4に列せられるチームに対して遺憾なく発揮し、リーグ最終戦での勝利を勝ち取ったと言えよう。
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