その1:タックル
ハードタックラーに悪い奴はいない?
ラグビーというスポーツのもっとも大きな特徴は、ボールを持ってどこまでも走る自由性にあると言われている。ボールを持って突っ走り、体ごとインゴールに飛び込むトライは選手として最高の喜びだ。そしてもう一つの特徴が、そのトライを食い止めるために、防御側に「タックル」という手段が与えられていること。ピンチを防ぐタックルは、観客を熱狂させ、仲間を勇気づける。選手の勇気を示す「ものさし」でもあり、ラグビー界には、「タックルする人間に悪い奴はいない」という説もあるほど。
トライしそうな相手を追いかけて両足をしっかり捕まえて倒すもの、自分に向かって走り込んでくる相手を押し戻すように倒すタックルなど、その種類はさまざま。追いかけてぎりぎり手が届くくらいのときは、踵を払って倒す「アンクルタップ」という技もある。ただし、ひとつ間違えれば危険なプレーになるだけに、肩から上へのタックル、相手を持ち上げて頭から地面に突き刺すようなタックルは禁止されている。気持ちは熱くなければいけないけど、相手を怪我させない冷静さと優しさも必要。タックルは人格が磨かれる要素も含まれている。
優れたタックラーはタックル後、すぐに起き上がり、相手ボールを奪い、次の相手に向かってまたタックルを繰り返す。先日終了したワールドカップの決勝戦では、フランス代表のデュソトワール主将が、一人で20回以上のタックルを決めて見せた(チーム全体で87回にもかかわらず)。実はこの人、2007年のワールドカップ準々決勝のオールブラックス戦では、まったくミスなく38回ものタックルを決めた伝説を持つ。一人でこの数字は尋常ではない。普通は10回を越えれば多いほう。倒れてすぐに起き上がるリアクションがいかに素早いかの表れである。
各チームの優れたタックラーを探してみよう。勇気あるタックルで試合の流れを変えるのは誰だろう。発見したら、きっとその選手のことが好きになって、ラグビー観戦の魅力から逃れられなくなるはずだ。
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W杯カナダ戦でタックルに行く日本代表WTB小野澤(サントリー)
photo by Kenji Demura (RJP) |
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